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■視点:ヴィルゲイム


 第四班。

 ヴィルゲイムを班長に、アルフォンス、ラルフ、ギュスターブよりなるグループ。

 この班の欠点をヴィルゲイムは誰よりも把握していた。


 (……結果論ではあるが、余り者で構成された班だ)


 あくまで結果論。

 西坂とてこの小隊に殊更偏らせた訳ではない。

 女性陣は元々チームとして動く事に慣れている。将来的には修正すべき事ではあるが、今この場では第二班はあれしかなかっただろう。

 第一班も仕方がない。西坂自身の攻撃力があるからとはいえ、三人編成のパーティである分、一人一人の負担は大きくなる。比較的連携の取れるメンバーで固めたのは納得がいく。

 第三班はゲンリフを配置した以上、国同士が天敵の自分とは外すのは確定である以上アルバートの配置は当然。如何に礼儀を守れる間柄とはいえ母国が揉めている者同士、同じ班にしないで済むならしない方がいい。ゲンリフの武器の性質からして補助としてアルフレートを入れたのも理解出来る。

 残った面子から一人を抜いて構成されたのがこのグループ。

 悪くはない。悪くはないが……。


 (だが……)


 同時にこれという強みも見当たらない。

 アルフォンスはどうにも責任回避の気がある。実力はあれど、自分のする事に責任を持ちたくない、という者は……正直不安だ。

 ラルフはいい。あいつは普段無口ではあるが必要なら喋り、責任を持てる男だ。

 問題はギュスターブだ。

 無論、こいつも国家を代表して来ている人間であり、今残っている以上一定以上の問題はない。……一定以上は、だ。

 こいつの場合はアルフォンスの逆、責任を感じすぎるのだ。結果として、無茶をしでかす事がある……自分のせいで失敗しそうなのではないか、自分の責任だ、自分の……だから、自分が挽回しなくてはならない、そう考えて気張ってしまうらしい。もう少し気軽に考えてもいいと思うのだが、な……こいつとアルフォンスを足して二で割れればちょうど良くなるのではなかろうか……。

 

 『確認出来た、第三砲塔だ』


 ぼそり、と呟くような口調はラルフか。

 確かに第三砲塔が視認出来る距離に近づいてきたようだ。

 

 「アルフォンス、そちらの準備はいいか?」

 『えー?撃つのは大丈夫だけど、狙いはこっからだと難しいかなあ』

 『ヴィルゲイム、距離を詰めよう。アルフォンスの言う通りではないが、ここからでは射程ギリギリだ』


 ……こいつらは俺がここから、視認出来たギリギリから撃てと命じると思っているのか?

 ……いや、ギュスターブは緊張しているだけか。どうにも顔がこわばっているな……。


 「落ち着け。こんな所から撃てとは言わん」

 『そ、そうか、すまん』

 「いや、いい」


 ……アルフォンスの武器は威力は高い。高いが……。

 正直、アルフォンスがあんな武器を装備しているのは面倒臭がりが高じたからではないか、とヴィルゲイムは内心疑っている。威力が高ければ、一撃で確実に落とせる、そこしか考えていなかったのではないかと、ふとそう思ってしまうのだ。間違いだと、そんな事はない、と聞いた誰もが言い切れないのがアルフォンスという人物の評価と言えよう。

 いずれにせよ、距離を詰めなければならない事に変わりはない。

 全機に隊形を組むように命じる。

 ここら辺はさすがに全員がきっちり組みあげる。……念の為に言っておくが面倒臭がりでありながらここに一期生でいる、というのは、同時に要領が極めて良い、高い才能があるという事も意味しているという事だ。何せ、失敗すれば当然のように罰や補習がやって来る。そんなものをやりたくないなら、やる時はきっちりとやるしかない訳だ。だからこそ、誰もがアルフォンスの責任を負うのを嫌がるという事を熟知しながら、彼の実力は認めている訳だ。

 その高い実力に裏打ちされた動きが的確に必要な行動を、必要な先手先手を打って前進する。早く終わらせたいと思うからこその行動はけれど、頼もしい。


 「どうだ?」

 『ああ、こっからなら大丈夫』

 「よし、他は全員でアルフォンスをカバー……」


 その時より少し前。

 ここより離れた場所である機械型悪魔が撃破された。内部に大量の投射型の爆発物を搭載していたその機体は大爆発を起こし、四散。パーツが全方向へと飛び散った。それでも飛散したのが普通のパーツだけならば問題はなかっただろう。デブリというのは速度を維持し続ける宇宙では微小なものでも最も危険なものの一つであり、【オーガニック】にはその対策がきっちり施されている、表面に接した時点でそれを破壊するある種のエネルギーフィールドを纏っているのだ、宇宙航行可能な【オーガニック】は。

 だが……。

 飛来したのが悪魔的な僅かな確率で誘爆する一瞬前に弾き飛ばされ、焔に巻き込まれる事なく残った弾頭でさえなければ。

 それが恐ろしいまでに低い確率でギュスターブ機に直撃しなければ。

 デブリと判断され、デブリならば【オーガニック】は自動対応可能と迎撃しなければ。

 或いは他の可能性もあったかもしれない。

 だが、結果として偶然に誘爆を免れたとはいえ、焔に炙られ癇癪を起こす寸前だった弾頭は自身がエネルギーフィールドによって砕かれる瞬間にそのエネルギーを解き放った。


 「!?爆発?」

  

 空気の伝播がない為に音が響く訳ではない。

 ないが、爆発は見える。

 盛大な爆発はギュスターブの【オーガニック】を破損させつつ、爆発で機体を弾き飛ばした。

 これだけならば不運な出来事だった、となるだろう。ギュスターブの機体が撃破される程ではなかった事でもあるし。

 ここでギュスターブの悪い癖が仇となった。

 吹き飛ばされた直後から姿勢制御し、元の位置へと戻ろうとした手腕は評価出来る。しかし……余りに戻る事に意識が優先しすぎて、周囲が見えていなかった。


 「!いかん、ギュスターブ、そのまま流されろっ!!」

 『え……っ?…!!』

 『げっ、その位置で停止しないでくれえっ!!!』


 アルフォンスの所持する武器はタキオン粒子加速砲。……早い話、かの有名な「波動砲」の小型版である。

 この砲、トリガーを引いてからタキオン粒子を高圧縮した亜空間へ接続を開始する為に、発射までに僅かなタイムラグが生じる。トリガーを引き、シリンダーが亜空間への接続を開始、それによってシャッターが開放され、逃げ口を与えられたタキオン粒子エネルギーが砲口から放射される、というプロセスを辿るからだ。

 そして、ギュスターブが停止したのは正に引き金を引いた瞬間、砲口の真正面だった。

 ギュスターブが停止しようとせず、そのまま流されていればすぐに砲口の真正面からは逃げられただろう。そういう意味ではヴィルゲイムの叫びは正しい。

 だが、一旦停止してしまった機体はすぐには動けない。

 動けるのは西坂の機体のような慣性制御能力を備えた一部の機体のみであり……ギュスターブ機はそれを持っていなかった。

 結果として、大慌てでアルフォンスは砲口を咄嗟に敵超巨大艦の別箇所へと射線を逸らし……直後に発射されたエネルギー流は見事に敵悪魔の装甲を貫通、内部を破壊した。地上の人類の艦艇ならば大型の戦艦や空母とて轟沈していただろう。……けれども相手はその更に十倍以上の巨体。なおも健在であり、だが同時に……。


 「……!各機散開!!悪魔どもが群がってきたぞっ!!」


 先程の攻撃を脅威と感じたのか急速に悪魔が群がってくる。

 折り悪く立て続けに砲塔の破壊の連絡が入ってくる。結果として、超巨大艦の周囲の悪魔達は最優先目標として今だ生き残っている砲塔を守る為の動きを開始する。

 さすがにこうなっては時間のかかるチャージからの発射を行える余裕はない。

 アルフォンスも慌てて【オーガニック】と比べて同じぐらいのサイズを誇る大型の砲を格納する。のんびり狙いをつけていれば砲自体が破損しかねない。

 ギュスターブの思い詰めるような表情に気づきつつも、ヴィルゲイムは急ぎ連絡を入れる。一刻も早く状況を変える必要がある。


 「こちらヴィルゲイム。第四砲塔は破壊失敗だ…!」


  

世の中運が途轍もなくいい人もいれば、途轍もなく悪い人もいます

まあ、大抵は運が悪い、運が良かったと喜べる程度の運不運で済む事が大概なんですけど……


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