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■視点:ナターシャ


 さて、極めて順調に終わった第一砲塔組であったが、他はそう簡単にはいかない。

 というより、あそこまでサクサク斬れる次元断層が反則だったりする。

 

 「さあ、行くよ。キヨミ、あんたが先陣だ。周囲は気にしないで結構、突っ込んどくれ」

 『……分かった、後ろは任せる』


 一瞬溜めを作る口調は習慣故にそれを除けば即座といっていい反応が返ってくる。

 このメンバーならば姉御肌のナターシャが指揮を執るのが何時もの形だ。それに文句はない。


 「最後がセシリアだ。距離はあけずについてきとくれ」

 『了解ですわ。ジェフリーでないのは残念ですがエスコートお願い致しますわ』 

 「あいよ、それじゃあ行くよ」


 それを合図に黒田清美が四門のガトリング砲を何時もの如く前方へと収束させ突っ込んでいく。

 その周囲、宇宙なので球面となるが分かりやすいように地球の中心から北極か南極へ向けて突っ込んでいるのが清美だとすると、ガトリング砲の攻撃を避けて赤道から中心部へと向けて群がってくる「悪魔」達を迎撃するのがその後に続くナターシャの役割だ。

 と、同時に前方からすり抜けてこないように気を配る。

 正に弾幕というべき猛射を行っている清美の兎……あればかりは【オーガニック】にしか出来ない。


 (派手だよねえ)


 あの光景を見る度に本気で「弾はどこから来てるんだ」と思ってしまう。

 ナターシャは戦争を体験した事はない――祖国が最後に経験した戦争、大祖国戦争と呼ばれる戦争よりもうじき40年。その頃の絶望に満ちた弾を節約しながら戦った話など祖父から聞いただけだ。今、スターリングラードで絶望に満ちた包囲戦を経験した祖父があの光景を見たらどう思うだろうか?

 (この世界では我々の史実で1978年からのソ連によるアフガニスタン侵攻は発生していないので人類同士の戦いは小競り合いレベルでしかソ連も現役兵士は体験していない)

 

 (ま、今はありがたいんだけどね。それだけに【オーガニック】以外の武器を使う時が不安だよ)


 弾数制限ありの武器でも実際には補給なしで問題は時間経過だけ。

 整備は不要で、稼動のエネルギーもどこからか引っ張ってきて稼動時間は中の人間次第。故障も起こらない。

 お陰で、かつてを知る兵士からすれば兵站の衰退は目を覆う程だ。

 軍には普通の車や宇宙軍なら積極的にシャトルを生産しているが、これだって整備兵の技量の維持という意味合いもある。兵站は兵站で、日本は幸いというべきかかつて太平洋戦争で飢えに苦しみに苦しんだ経験がある為に徹底して兵站を重視する姿勢を取っているものの、現在の兵站は弾薬や主力兵器の交換部品というものが不要である為に地上最大の兵站能力を誇るアメリカ軍のそれでさえ最盛期のそれと比べれば相当に落ちていると言われる。

 今はまだ、いい。

 かつてを知る者がお偉いさんとして残っている。

 だが、果たして更に未来になった時、果たして余裕がなくなった国が兵站を支える部隊を維持……。


 (やめやめ。それは今のあたしらが考える事じゃないわ)


 考えつつも勝手に手は動き、群がる悪魔を片端から叩き落している。

 ちら、と後ろを確認すればピタリとセシリアの【オーガニック】が追随している。

 言う程簡単な事ではない。

 前を往く自分とキヨミの動きを理解し、その動きに追随する。簡単そうでいて、実際にはこれが難しい。前を行く人間についていくだけなら出来るかもしれないが、空戦の関係上、その前の人間は唐突に軌道を変える事がある。それも宇宙である以上360度自在に。それに追随しながら自機が撃墜されないよう周囲に注意し、場合によっては前を往く者をサポートする……。

 最初の頃はナターシャも失敗しまくったものだ。

 そんな事を考えている内に。 


 「(さて、と……)それじゃそろそろ出番だよ!セシリア!!」

 『ええ、了解です!』


 ここでセシリアが前へ出る。

 と同時にキヨミが速度を落とし後退。セシリアの周囲を私とキヨミで固める。

 ……ここからがキヨミの真骨頂だ。ここまでならば彼女は単なる突撃馬鹿にしか見えないだろう。だが、ここからは違う。四門のガトリング砲が生き物のように全く異なる方向へと牙を剥く。或いは上方へ、或いは下方へ、或いは右方へ、或いは正面へ。ガトリング砲は絶え間なくその牙を剥く方向を変え、迫り来る悪魔を寄せ付けない。

 同時に複数の悪魔を瞬時に把握し、そちらの方向へと的確に弾をばら撒く。

 さすがにこれが一体一体狙いをつけねばならなければ同時捕捉した所で撃破は不可能であろうが、大威力で大量の弾をばら撒けるガトリング砲という武器の系統と、キヨミの先読みがそれを可能とする。

 ……そういう意味ではあたしの方が面倒なのよね。

 ま、どっちにせよ……。


 「こっちなりのやり方で補うんだけど、ね!!」


 そう、キヨミはキヨミ、あたしはあたし。

 確かにこっちの方が射程は短い、連射性能も低いだろう。けれど火力で劣る訳ではない。

 そう、一点集中。都合腕と腰計四門のライフル、四門の胸部固定レーザー、二門の肩部に設けられたレールガン。それらを前方へ一斉指向。こちらまでの距離がキヨミより短いならば……より短時間で一体一体を屠れば、いい!

 放たれた攻撃は一体に集中し、破壊。

 しかし、実際に破壊の光景を目にする頃には次弾が既に別の悪魔に向かって放たれ、破壊。

 破壊し、破壊し、破壊する…!


 「さあ、セシリア。後は任せたよ!!」




■視点:セシリア


 『さあ、セシリア。後は任せたよ!!』

 「……ええ、了解です」


 左右を回転するように動きながら、ナターシャとキヨミ。二人の【オーガニック】が私の機体の周囲を周る。

 こちらの射線を遮る事なく巧みに連携して動き、こちらへと近づけない。

 それでも急がねばならない。一点に留まるという事は悪魔をこの場所へと群がって来させる事。如何に猛烈な勢いで撃破していても、何時かは対応の限界を超える。悪魔は疲れず、撃破されても替えが利くのかもしれないが、人間は疲れるし、一旦撃破されて死ねば新たに育成するには手間も時間もお金もかかるのだ。

 重力子ライフルのロングバレルを展開。

 機関部を【オーガニック】本体へと接続し、集束を開始する。

 重力子を集束させていく。重力が質量を生む。

 果たして、いずれが先なのか、質量が生まれた故に重力が生まれたのか、重力が生まれた故に質量が生まれたのか……。宇宙の根源の一つに関して、けれども私は興味はございません。

 必要なのは一つだけ。この武器が使えるか使えないか、どう使えばいいのか、その二つが分かれば私には十分すぎる。

 はっきりしているのはロングバレルを展開する事で射程と威力を伸ばす代わりに連射性が落ちる事。本体へと接続する事で出力上限を向上させられる事。

 けれども、それでも闇雲に超大型艦の主砲塔を撃った所で意味はない。宇宙戦闘艦艇の戦闘力の最大の部分を担うそこは最も守りの堅い場所の一つ。もっとサイズ比が小さいなら、地球の海洋を動く戦闘艦のように【オーガニック】の十倍二十倍程度ならば装甲を厚くするにも、【オーガニック】から守るにも限界があるだろうが百倍二百倍となってくればそれを撃ち抜くにはそれ相応の火力が必須となってくる。けれども、全てが堅いという訳でもない。

 一つは砲口に直接叩き込む。

 けれども、それはエネルギーと正面から向き合う事でもある。こちらが叩き込むと同時に無駄使いを承知の上で放出されれば威力を大幅に削がれてしまう可能性がある。

 ならば、狙う場所は可動部。

 砲身と砲塔を結ぶ根元の部分。さすがにそこにまで分厚い装甲を張れば攻撃に支障を来たす。

 もちろん、普通の武器では無理だろうが……。


 「チャージ完了」


 十分集束され、質量を増した重力子の砲弾は必要数に分けられ、発射の瞬間を待つ。

 一発、二発。

 一発目で穴が開き、二発目で薄めの装甲を破壊。更に続けて放たれた一発がそこから入り込む。【オーガニック】自身の補正機能をもってしても最後に物を言うのは当人の技量……。寸分違わぬ、とまでは言わずとも良い。今回求められているのは砲塔内部へと攻撃を送り込む突破口。三発目が通り抜けられるだけの穴を開けられれば、前の二発は役割を果たした事になる。……そして、それは見事に役割を果たした。

 これで終わりだ。

 ゆっくりと柔らかく引かれた引き金は……次の瞬間、第二砲塔が吹き飛ぶという形で役割を果たした事を告げた。


 第二主砲、破壊成功。

 

  

二番目の組、女性陣破壊です

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