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■視点:セシリア・オルコット


 「間に合いまして?」

 『ないすたいみんぐ』


 ぐっと合図をしてくるのは黒田清美。私の同僚です。

 本人も何と言うのでしょうか?日本人形みたいに可愛らしい子ですけれど、彼女の【オーガニック】も兎を模した可愛らしい外見ですわ。初めて見た時にショックを受けたものです!

 私の母国はアメリカ、うちはかなり裕福……いえ大富豪と申しても良いでしょう。まあ、私が築いたものではありませんけれど!

 ……ええ、私はそれが不満だったのです。

 全ては与えられたもの。

 それが悪い事だとは申しません。けれどもそれまでの生活は家も、着ている物も、食べる物も全ては与えられたものでした。婚約者も……ええ、ジェフリーに不満はありません。彼の家は我が家とは長いお付き合いのある家で、彼とは幼馴染。至極紳士的な人間だし、厳しい所はあるけれど使用人だからといって見下すような人でもありません。私の事も本気で好いてくれている事ぐらい女として分かりますし、彼以上の人間を求めるのは贅沢というものでしょう。

 でも……。

 私が一から自分の力で得たものは何もないのです。

 だからでしょう、私は私の力で得たいと思い、家を抜け出し……そこで【オーガニック】を発現させたのです。

 この時代、そして世界の現状。

 例え若い女性だからといって、【オーガニック】を用いて戦うという事は決して悪い事ではありません。無論、両親に祖父母、兄弟にジェフリー。皆反対しました。けれど、あの【オーガニック】を起動させて得たポイントというのは私の、生まれて初めての自分の力で手に入れたものだったのです。けれども、このまま言われる通り引く、というのはその得たものを無駄に死蔵するという事に他なりません。だから、でしょうか?私は生まれて初めて皆と喧嘩して、家を飛び出してその足で軍学校に入隊を希望したのです。

 もちろん、最初は拒絶されました。

 別に親の権力がどうとか言う問題ではなく、ただ単純にまだ十かそこらの子供が保護者の許可もなしに勝手に入学する事は出来ないという規定の為だったのですが。孤児ならば別の規則も適用されますが、私の服装を見ればそうではない事ぐらい一発で判明したみたいでしたし。

 送り返された私でしたけれど、最後は一番反対していた両親も折れました。

 一つにはこの時代で、我が家は誰も軍に志願者を送り込んではいない、という事もありました。正直に申し上げれば、それはこの時代においては非常に外聞が悪いのです。これまでは良かったのです。そもそもお祖父様達が反対されたのも、両親が反対したのも父の弟二人が軍に入り……二人とも戦死したからなのですから。だからこそ我が家は敬意を払われている面もあるのですから。

 まあ、それでも女の子が入るのは……というのがあったとは思いますけれど、最終的に折れたのは矢張り軍といえども大半は後方を支援する部隊に所属するという概念があったのだと思います。

 補給、事務などが大事なのは軍にとって大事な事であり、それらに就く事は決して恥ずかしい事ではありません。むしろ、軍学校を卒業して二人共最前線に配置になった亡くなった叔父達の方が例外……いえ、叔父達が優秀すぎたのです。だからこそ、皆は私が後方に配置になる事を望んだのでしょうけれど……生憎、私の入った頃からでしょう、悪魔の攻撃態勢が変わり、入学祝いポイントなどと言っていられるような状況ではなくなりました。――そして私には戦う才能があったのです。

 狙撃。

 最後は感覚的なものとも言われる遠距離攻撃に私は才能を示しました。

 今、清美の崩した敵陣を攻撃したのもそれ。

 

 『長砲身重力子ライフル』


 近場相手の取り回しには向かないものの、そんじょそこらの戦艦(という名の装甲シャトル)の砲よりも射程の長い大型のかつてのアンチマテリアルライフルを思い起こさせるそれ。

 事実欠点もそれを受け継いでおり、連射は不可で一発ずつ引き金を引いて撃たないといけない。

 これは引き金を引きっぱなしでも弾切れにならない、という【オーガニック】搭載火器に適しているかは一見疑問に思えるかもしれない。でも、私にとっては凄くぴったりと合う兵器だった。さすがに戦艦型の悪魔をも一撃でという訳にはいかないが、大型の悪魔にすら打撃を与えられるこの武器は本当に使い方次第だ。

 清美と私、それにナターシャの女性三人でコンビを組んでいるのも互いの相性の問題だからだ。

 清美の武器は弾をばらまくのに適している。その分細かい狙いがつけられるような、つけるような武器ではない。けれど、それでいいのだ。彼女が突っ込む事で相手を散らし、と同時に高性能の索敵機能を持つ彼女の機体からデータリンクで私の機体に必要な情報が送られてくる。それを元に私の機体が大型の機体を優先して破壊してゆく。

 そうして、前をすり抜けてくる小型の悪魔は中間地点に位置するナターシャの機体が撃破する。

 彼女の機体は極めてスタンダードな機体。

 近接武器と射程は短めだけれど破壊力の高い火器で構成される機体であり、同時に防御力が高い機体でもある。

 当人曰く「シュトルモビクがイメージ」なんだとか。

 まあ、それはいい。今は存分に戦いましょう!!




■視点:月面司令部

 

 「状況はどうなっている?」

 

 送られてくる情報を見る限り、現状問題ないように見える。

 だが、月面駐留戦力ははっきり言ってしまえば不足している。

 正式に宇宙軍学校が成立すれば増強も予定されているが、増強は同時に悪魔の襲撃を増やす可能性が指摘されている。 

 しかし、ある程度の襲撃はむしろ望む所な訳で……何せそうでないとポイントが稼げず、【オーガニック】が強化出来ない。ここら辺にジレンマがある。


 「幸い現状では問題ありません」

 「……奴らが本当に一期生の状況を確認しに来ただけなら良いのだが」


 それならある程度の撃破で奴らは矛を収めるだろう。

 けれども、そうでなければ……。

 いや、純粋に腕試しでも昨今の奴らの動きはかつてをイージーモードとするならば次第にハードモードへと移行しつつあるようにしか見えない。地球上でのゴタゴタにも神罰が執行されたのはその一端ではないだろうか?そんな疑いが拭えない。

 そして、月面司令官の懸念は残念ながら当たっていた。


 「!?これは……新たな悪魔の反応を確認!!超大型です!!!」

 

 これまで太陽系外にしか現れていなかった悪魔。

 その初参戦は太陽系総司令部のある木星圏ではなく、地球の近傍月の管制で発生したのだった。  

次回は男性陣の動きをば

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