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■視点:月面防衛施設
「ふん、奴らやはり動き出したか」
月面基地では司令官が苦々しげな表情ではき捨てた。
「やはり、一期生の実力拝見にでも来た、という所でしょうか?」
「そうだろうよ。これまでもこれ見よがしにわざわざポイントをばら撒きに来ていた訳だしな!」
参謀の言葉にも不機嫌そうな様子を変えない。
まあ、その結果として何度も出撃しては損害を受けている訳だし、こうなるのは仕方ないだろう。
「一期生には当然出てもらうという事でよろしいですか?」
「当然だろう。出てこない限り悪魔共は執拗に襲撃を繰り返してくるだろうよ」
これまでと同じようにな。
最後の言葉に全員の顔が厳しくなった。
■視点:黒田清美
月面駐留艦隊が出撃した。
私達一期生も総出撃している。推測ではあるけれど、高確率で私達一期生を見に来たという所だろうから仕方のない話だろう。
……月面駐留艦隊は艦隊と銘打ってはいるけれど、打撃艦隊が存在しない。
空母だけと言えば良く聞こえるかもしれないけれど、その実態は【オーガニック】が発着艦可能な輸送船五隻よりなる【オーガニック】運搬部隊に過ぎない。主戦力はあくまで艦載機相当品の【オーガニック】、主力艦隊以外はそれが宇宙軍の現状でもある。
そして、私達も出撃した。
私の機体は外見は基本変わらない。
移動方法は反発フィールド推進方式、複数の反発フィールドを展開し両者を合わせる形で私の機体を押し出し推進する……というと複雑そうに聞こえるかもしれないけれど、それは錯覚。簡潔に言えば、磁石の同じ極を近づけてるのと変わらない。テーブルの上に磁石を置いて、手に持った磁石のN極とN極を近づければ、固定されていないテーブルの磁石は動く。それと同じ事。
それが強力なものになったのが私の機体の移動方法。
……私の成績は一期生の中では低め。
探査能力だけでなく火力も強化したけれど、移動方法と同じく少々でなく大雑把なのが問題なのかもしれない。
「……捕捉」
ヒロ君は前回も一位を取ったのに……。
自分が置いていかれてしまうような寂しさが、ある。
そんなもやもやを含めて、目の前の「悪魔」に叩き付けさせてもらう。
「全砲門起動」
両腕、背部、全四基の大型ガトリング砲が起き上がり、一斉に頂点を進行方向に向けられる。敵への投影面積は小さい方が有利なのは変わらないから基本頭から真っ直ぐに突っ込んでいく事になる。
こんな形で大型のガトリング砲を持てば、大気圏内ならバランスを崩してまともな飛行は困難、どころか墜落してもおかしくない。
ガトリング砲は弾の消費速度が速い。
(現実の例で言えばF18ホーネットの携行弾数は400発程度、搭載しているバルカン砲の発射速度は毎分6000発=引き金引きっぱなしなら4秒程度で全部撃ち尽くす)
けれど、弾数無制限の【オーガニック】ならば関係はない。
むしろ、圧倒的な数の弾をばら撒けるので……。
「……発射」
目標は合計三機の「戦闘機形状の悪魔」。人類が人型兵器である【オーガニック】を使い、悪魔が人類が使っていた戦闘機に似た形のものを使う。
何とも皮肉だといわざるをえない。
私の放った弾はヒロ君達のような相手の動きを読んでの精密射撃ではない。
相手の動きを読めないならその避けそうな先全てに弾を置いていけばいい。
人類の作った兵器では無理だ。
けれども、【オーガニック】ならばそれが出来る。
爆発する「悪魔」の破片に当たらないように身を捻って距離を取る。宇宙では小さな破片でも高速で飛来する為に強い破壊力を有する。【オーガニック】は頑丈だけど、「余計な危険を冒す必要はない」という教官の話には同意。
そのまま敵母艦を目指す。
まるで、いえ、きっとそのまま月駐留艦隊を模したように大型艦に相当する悪魔全てが機械型の空母型。
逆に言えば数は凄い数を持っている悪魔の事。母艦を落とさなければ終わらないようにしていても全くおかしくはない。
「……邪魔」
その進路上に新たな「悪魔」。
弾をばら撒き、更に前へ。三体中し止めたのは二体だけれど、残る一機も回避行動を取った為に私と空母型との障害が消えた。
対空砲火ならぬ対宙砲火を放ってくる相手の対宙火器を選んで弾を叩き込む。
こんな大型の「悪魔」では私の武器では貫通力が足りない。ならば待つ。
撃ちやすくしておけば、きっと……。
「……!」
マイクから友達の発する合図の音。
撤退。
離れた瞬間を見計らって撃ち込まれた大口径砲弾に貫かれ、轟沈する「悪魔」。
「待たせたかしら?」
「……ないすたいみんぐ」
ぐっと親指を突き出す仕草に彼女は綺麗な笑顔を見せてくれた。
戦闘開始です
卒業祝いに襲撃をどうぞ、いらねーよ!な悪魔と月艦隊司令部さんでした




