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■視点:西坂


 「………何も言わないんだな」

 「こればかりはね」


 西坂が深い溜息をつく横で、笹木が苦笑していた。

 原因は単純だ。今日の襲撃である。

 教官らの様子からすると薄々何かが起きるのは想定されていたようだ。実際、あの襲撃の翌日には外出禁止が解除されたのだから、おそらくは襲撃に関して何らかの情報があったのであろう事は少し考えれば予想がつくというものだ。

 はっきり言ってしまえば、殆どの軍学校の生徒にとっては大騒動になった割には何もなかった、という印象だ。

 事前予測されていただけの事はあって実際に多少なりとも関わったのは黒田、笹木、そして西坂の三名だけ。

 更に黒田は実際は探知していただけであったから、手を下したのは笹木と西坂の両名のみ、という事になる。更に更に付け加えるならば、笹木は既に経験済み、乗り越え済みであった為に今、深刻な悩みに苛まれているのは西坂だけだった。

 何が?というなら当然だが……『人相手の戦闘で、相手を殺した事』だ。

 確かに神々の判定でそれは正当な行為であると認められた。大量の彼らが有していたポイントが西坂に流入してきたのは間違いのない事実だ。


 「清一は……今回の件はどう思うんだ?」


 ふと気になった。

 平然とした態度を崩さない彼はどう思っているのか、どんな風に殺すことを乗り越えたのか知りたくなったからだ。


 「ん?特にはないね。悪魔を殺した時と同じだよ」

 「……悪魔じゃなくてオーガニックだろ」

 「同じさ、同じ神々の作ったもの、だよ。そして同じ自分を殺そうとする敵だ」


 その言葉には反論出来ない。

 その通り、「悪魔」も【オーガニック】も同じ「神々」の作成したもの。それが敵として自分に刃を向けるというのならば……何が違う?

 分かっている、理性では理解している。

 違う点はたった一つだけ。中に人がいるかいないか。同じ地球人を殺したか否か。

 だが、それとて言えまい。この地球という星で、人類がどれ程同じ人類を殺してきたか。権力、財宝、政治、経済、宗教、思想、土地、復讐、肌の色に民族、個人の嗜好に至るまでありとあらゆる理由で人類は同じ人類を殺し続けてきた。それを思えば、相手が殺そうとしてきたから殺した、という正当防衛に属する今回の事例は相当にマシだ。全てを知る神々が非は向こうにありと判断したのだから尚更。

 けれど、感情は別だ。

 押し黙る西坂に、笹木は苦笑を浮かべた。


 「まあ、時間はかかるよ。納得するまでにはね」


 本当はそれでいい。

 人を殺す事を良くない事とするのは法の治める世界で生きていくのに本来必須だ。

 人を殺すのを、抑圧するのを当然と考える人間はその枠組みの中では生きていけない。何時かは異物として弾かれる。

 だが、その異常を当然として求められるのが軍人。

 平和な国の軍人ならばまだ人を殺さないままにその軍人としての人生を終わらせる事も出来るだろう。本来はそれが正しい。殺さなくて済むならばそれに越した事はない……が、必要な時は躊躇わずに振るわれなければならない。抜かない伝家の宝刀は良い、だが、抜けない伝家の宝刀ではあってはならない。「悪魔」という存在に対しても尚、平和平和と唱えているだけでは殺戮されるのみ、それはかつて起きた現実だ。

 幸い、まだ時間はある。

 焦らず、じっくり考えてみよう……そう思った。

 そして、教官達も笹木も口にはしないがそれを望んでいた。これだけは本人が考えるべき事であり、本人が納得せざるをえない事であり、そしてその為には時間が必要だと理解していたから……その結果がどんな答えであっても、最も大事なのは本人が納得出来るかどうか。例え、その結果選んだものが「命令」だからという言葉で誤魔化すものであったとしても……。




■視点:某国 


 場は沈鬱な空気に包まれていた。

 作戦失敗。

 同調した彼ら言う所の愛国分子は帝国に不穏分子として多数拘束され、実行部隊もまた壊滅したという。これらの連絡はあくまで客観的な観測のみを命じられていた外交官によってもたらされたものだ。……もちろん、日本側は相手がそういう役割を与えられた存在だときっちり認識した上で事実を掴めるよう手配しており、一方の外交官もまた薄々それを察知しながら自分の仕事にとっては有難い話なので、さっさとそのまま情報を流している。

 無論、その情報が日本側によって意図的に流された事などそこには付け加えず、結果として彼は迅速に正確な情報をもたらした、という評価のみが残る事になる。


 「失敗するとは……!」

 「全く!何が精鋭部隊だ!役立たず共が……!」

 「しかも、神々は正当と看做しただと!?何処を見ているのだ奴らは!!」 

  

 ……訂正、八つ当たりによる熱い空気に包まれていた。

 彼らとて八つ当たりな事は理解している、多分。

 それでも怒鳴らずにはいられなかった。完璧なはずだったのだ。相手はたかが学生。そこにプロの実行部隊を三名。間違いなく自分達の暗黙の意思を示せるはずだった。

 彼らの最大の勘違いは西坂の機体ではない。自分達が日本相手ならば完璧に情報を隠しとおせると思い込んだ事だ。

 現実には別所から情報が流されただけでなく、日本自身も情報を掴み、裏づけを取り、最後は追い詰められての行動に追い込まれた。要は彼らの見通しの甘さが現場に負担をかけた結果なのだが、そんな事は彼らにとってどうでもいい話だ。

 

 「くそ、しかし、こうなった以上はこれ以上は手を出す訳にはいかん」

 「そうだな、これ以上は……本来の目的を果たす事に専念しよう」

 「ああ、本来の目的まで台無しになりかねん」


 そんな彼らは知らなかった。

 彼らのそんな秘密を語る光景が彼ら自身の【オーガニック】を通じて全世界公開生中継されていたという事実に。

最後は神々に「ちょっとやりすぎ」とお仕置きです

死亡確定じゃないのは素直に謝罪出来ればまだ命は助かるって事なんですけど……さて?

神々が動いたのは余計な方向にだけ熱心な人達への警告の意味合いもあったり

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