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 一気に前動作なしに蒼い機体が急上昇する。

 先だっての戦闘以来ステルス悪魔への対応は一部の人間に極度の負担をかける事態に発展した。

 また同じ事が起こるかもしれないし、同時に宇宙に上がるのならば探知機能を向上させておいて損はない。……とはいうものの、いきなり機能が一気に成長させられれば誰も苦労はしない。しかし、黒田の機体の探知機能は更なる向上を見せていた。

 結果として、ステルスで隠れているつもりの機体が丸見えになってしまう程に。


 『……侵入者は現在三機が一つとなって校舎に接近中』

 「了解」

 『こちらも再度確認した。そちら方面に味方の【オーガニック】は存在しない。オールウェポンズフリー。攻撃せよ』

 「……了解」


 後者の教官からの言葉にはさすがに一瞬躊躇があった。

 当然といえば当然だ。それはすなわち「人を殺せ」という命令に他ならない……。

 だが、今回の侵入者達は明らかに異常だった。

 最初に正門方面から爆発物を搭載したトラックの突撃があり、それに続いて侵入者が四機……それに隠れるようにして更に三機の侵入者……まず間違いなく後者と前者は何らかの繋がりがあると考えるべきであろうし、前者が殺人に関わっている以上、後者もまた同類と看做さなければならない。

 ここで西坂が躊躇するという事はすなわち更に被害者が出る可能性が高まる、という事だ。

 教官は動かないのか?と思うかもしれないが、教官は正確には「現時点では動けない」。

 当り前だが、教官が勝手に動いてそちらを制する為に動けば、自動的に残る生徒達が無防備な状態となる。今、三機の【オーガニック】の不法侵入が確認されているものの、別方向からの奇襲がないとは断言出来ず、もし空からの奇襲となれば一気に敵は接近してくる。

 また、それだけではなく、通信を受ける人間はどうしても限定しなければならない。

 誰もが勝手に通信を行っていては混信してしまい、結果として対応が遅れる危険がある。

 ……まあ、世の中には好き勝手に喋っていたケースも案外ある訳だが、ただでさえ混乱している状況下。ある程度通信を行う者を限らねばならない部分があった。

 

 さて、西坂の機体の動きは異質だ。

 その上昇の動きは侵入者の側からも察知される。別に彼の機体にはステルス機能を搭載していないのだから当り前の話であり、その為に即座に武器を構える。

 どうやら彼らの機体のステルスは戦闘行動に移ると切れるタイプ、言い換えると激しい動きには対応していないLvのものだったようで、その動きと共に機体の姿が現れる。だが……。


 かくん、と。

 急上昇していた機体の動きが変わる。

 前兆予兆全くなしに機体が上昇の勢いそのままに、姿勢を変える事すらせずに真横へと移動を開始する。

 なまじ訓練を積んだ精鋭である事が災いし、通常の機体と同感覚で捕捉していた侵入者は慌てて照準を変更しようとするが、目まぐるしく正にUFOのようなカクカクとした動きで移動する西坂を捉えきれない。

 慣性制御。

 完全なオーバーテクノロジー。

 慣性はそのまま動こうとする力、全力で走っていた車が急に止まろうとしても前へ進もうという動きがそうだが、対象が重量がある程、速度を出している程慣性もまた大きくなり、結果として機動にも影響が及ぼされる。

 だが、それを完全に制御出来ればどうなるか?

 その答えがここにある。

 人の目はゆっくりでも予想外の動きをする相手に対して目が追いつかない。

 そこには人の経験故の「こう体が動いているから、次はこう動く」という前提があり、その想定を外れた動きへは対応が遅れる。

 更に今回の暗殺に動いた面々は悪魔よりも人を相手に動く事が多かった。特にここ数年は……。そんな「人の動き」に慣れた人間にいきなり「UFOの動き」をする人型を相手どった場合どうなるか?

 彼らの乗る機体自体は西坂の【オーガニック】をピタリと追尾する。

 だが、中の人間が追いつかない。

 この世界の【オーガニック】の武装は自動追尾式のミサイルなどを用いるものは少ない。そりゃ他が撃ちっ放し、引き金引きっぱなしに出来るのに場合によっては数で押し寄せる悪魔を相手にするのに、わざわざ弾数制限のあるミサイルを選択する者は限られる。笹木は自らの機体にロケット系統の兵装を持ってはいるが、これは面制圧を目的とした機体だからであり、彼の機体のそれは一体一体を選択して攻撃するような兵装ではない。

 まあ、それでもミサイルにはミサイルの良い点がある訳だが、今回大事な事は暗殺者の機体にそれはなかった、という事だ。

 結果として機体の捕捉の表示に従って、あっちに向けこっちに向けと事前に慣性制御機能を搭載した機体と遭遇するとは予想だにしていなかった為に混乱が発生していた。まだ軍に入っていない生徒を殺すつもりで潜り込んで、慣性制御まで備えた戦場に出れるレベルの機体と遭遇するとはさすがに予想していない。

 そして、近づけば近づく程に機体の異常な動きへの追尾は遅れる。

 指を立てて、腕を伸ばした状態で素早く横に動かしてみる場合と、指を鼻先に持ってきて同じ速度で指を動かしてみると距離が近い方が見失いやすい。それと同じ事が発生する。

 

 「な、うわ、くそ」

 

 そんな混乱も時間が過ぎれば収まる。

 それは西坂も分かっている。だからこそ、行う攻撃は一撃必殺。

 瞬間、西坂の機体が彼らの機体の眼前で一時停止。

 固まった彼らの間を再びゼロから最高速度へと加速して一気に突き抜ける。

 それを追おうというように慌てて後ろを振り向こうとして……機体がズレた。

 西坂の機体に装備された独自装備、次元断層……それは触れる全てを切り裂く絶対の刃だ。

 その断層に触れた瞬間、その断層を挟んで物体は二つに分けられる。ゆえに正確には切断ではない、新たな不連続の空間がそこに発生するのだ。その断層自体はすぐに消えるか通過するかしてしまうが、一度はっきりと分断された物質まで元通りになる訳ではない。せめてじっとして動かなければ、【オーガニック】の自己再生機能によって搭乗者が死んでいないのならばその内くっつく。

 けれども戦場でじっとしていられる余裕がある訳もなく……敵機は三機が三機共切断と同様の事態が発生、上半身と下半身が泣き別れとなって、大地に落ちる。

 

 ズン!

 

 と僅かな振動と共に上半身が落ちた時には既にゼロ→急加速→再びゼロから反転した西坂の機体が胴体武装を展開している。

 放たれるのは無数の銃弾。

 四門の砲門から放たれる銃弾は立て続けに二機を着弾の衝撃で不器用な踊りのように跳ねさせ、爆発に追い込む。

 それでも残る機体は何とか腕の武装を西坂の機体に向けようとして。


 「おっと、静かに眠っててくださいね」


 背後に現れた笹木の機体から撃たれた砲弾によって粉々に吹き飛んだ。 

 

 

事前想定なしにいきなりUFOの動きみたいなカクカクっとすばやく動く様を見せ付けられたら、なまじ「所詮学生」と思っていたので余計に対応が遅れました

殺しちゃっていいの?と思うかもしれませんが、教官らは正門襲撃した連中が自爆したので、その時点で捕らえようとしたら却って危ないと判断しての行動です

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