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『……愚かな行動だ』
『だが、良かろう、それこそが客観的に見れる者達には既存の存在に対して幻滅を深める』
『【停止】は止まらぬ。ならば同じく時を操作して止めるなり巻き戻す訳にもいかぬ。そのような事をしても我らの観測時間が変わらぬ以上【停止】は止められぬ』
『左様、第一の段階は過ぎつつある。第二へと彼らが進めるよう祈り、導こう』
『それが我らが神々を名乗る理由なのだから……』
『同意する。我らの一縷の希望、それを成し遂げられん事を願うのみ』
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「宇宙軍の横暴に対する非難決議、だと?」
顔をしかめたアメリカ大統領だった。
会議の場に並ぶ顔も微妙というか何とも言えない表情をしている者が多い。
「一体何を考えているのだ、あの国は?」
「推測ですが……あの国はまともに宇宙軍に人材を、というより自国の勢力を送り込めておりません」
それには誰もが頷く。
この国とて結構苦心しているのだ。
確かにこの国は基本的に人種差別などを撤廃した国だ。だが、実際には各所であれこれと細かい問題は抱え込んでいる。白人至上主義のKKKなどは有名な存在だし、宗教的にもプロテスタントとカトリック、更にはモルモン教徒など細かな所ではあれこれと問題を抱えている。
それでも、この国は地球最強の大国として面子というものがある。
特に、一時は対立するソビエト連邦がスターリンの死後、【オーガニック】の存在の為に分裂・崩壊し、更に中国においても三勢力による三竦みが成立してしまった。
まあ、さすがに今はアメリカも国民党の支援は行っていない、というか行えない。
現在の彼らの位置は四川省。
史実三国志の呉と蜀が魏に対抗する為に同盟を結んだりしていたように、南中国と国民党は一応の中立不戦条約を結んではいるものの、三国志で結局は呉と蜀が相争い関羽が死んだように決して仲は親密という訳ではなく、隙あらば互いに争い兼ねない間柄だ。当たり前だが、そんな状況下でアメリカが国民党を支援出来る訳もなく、おまけにこの当時には台湾での圧政も知られていた上に、東アジアでの混乱収拾に酷い苦労した結果として、あちら方面は殆ど日本に押し付けたという面がある。
大抵のアメリカの外交筋の本音は……。
『あっちのややこしい事態に絡むのはもうこりごり』
といった所だろう。
「……つまり、なんだ?宇宙軍で自分達が勢力を伸ばせないのは宇宙軍が意識的に自分達を排除しているからだ、と言いたいのかね?彼らは」
「……おそらくはその通りかと」
頭痛をこらえるようにこめかみを押さえる大統領だった。
自分達とて宇宙軍の人材の派遣の前には思想の入念な事前審査を行っているし、密かに生活の盗撮・盗聴まで行っている。
こんな事を行うようになったのもかつて模範的とされていたパイロットが実は人種差別主義者でおまけに狂信者だったという現実がある。しかも徹底的に隠してくれていれば良かったものを宇宙という密閉空間内でなまじ初期がまともというか巧妙に隠していた為に普段の作戦艦艇では周囲に内心での差別対象ばかりの状況、そんな相手から友人として表向き親しくされる相手が多数という環境に置かれ、遂に暴発して……という最終的に相当大きな事件になった事例があったからだ。
逆に言えば、自分達でさえここまで苦労した挙句に送り込んでいるのに、そうした重要な思想面で自分達の国家の視点から優れた人材を送り込むなど馬鹿げているとしか言いようがない。
「……で、実現の可能性はあるのかね?」
「……ゼロではありません」
呆れたような口調に返って来たのは微妙な笑顔での言葉。
聞けば、宇宙軍への発言力が低い国を巻き込んでの仕掛けを目論んでいるらしい。具体的には宇宙軍に一定の割合で自分達の国の軍人の配備を行うように強制する決議を予定しているらしい。
分からないでもない。
宇宙という自国の頭上を他国構成の軍に抑えられる、という恐れもあるだろうし、単純に宇宙軍がもたらしている物資の豊富さもあるだろう。宇宙軍に一定の勢力を確保してそれらに対して影響力を行使したいというのは分かる。分かるのだが……。
ちなみに現在、宇宙軍はアメリカ、日本、イギリス、アフリカ、東南アジアの人材が多かったりする。
シベリアは出向可能な人口がまだまだ少なく、中国は対立の真っ最中。
中東もまたイスラエル建国以後、対立が激しくなっただけでなく、イランでは改革の名の下での近代改革に反発が起きた結果、内戦が勃発。史実ではイスラム原理主義が勝利を得たものの、こちらでは一定の理解が得られたのが余計事態をややこしい事にし、秘密警察による弾圧も民衆が【オーガニック】を得た為に下手に行う事が出来ずに結果として史実での弾圧が発生しなかったのも大きい。この結果、イランが派手な内戦に突入し、周辺各国にも波及。
そこへイスラエルの事も加わり、中東は未だ絶賛混乱中といっていい。
シベリアと睨み合い中のソ連は言うに及ばず、更に東欧との連携を強めると共に失った勢力を補う手段として西欧に対して大々的に社会主義に対する宣伝活動を行った結果として西欧が警戒感を強め、欧州は西欧と東欧の対立が激化。まあ、イギリスはそんな苦しい中で意地と周囲に見られるぐらいの割合で戦力を出していたのだが、それが後に花開いたという形だ。
対立が激しい国は当然ながら余剰戦力を出す余裕は減る。
宇宙に派遣出来る人材が初期においては特にどうしてもある程度以上にポイントを稼げる優れた人材に限られていた為に余計に、だ。
アフリカは民族同士の対立はどうだったのか、と思われるかもしれないが、それ以上に貧困からの脱出という面が多々あった。更に軍としての形が未だ未整備であった事から一般の人間が【オーガニック】で力を得て、飢えや貧困からの脱出を目指して、という部分が存在している。
こうした出遅れた国には国際政治で影響力が低い訳ではない国も見ての通りかなり存在している為に、国連などで非難決議が出る可能性は決して低くはないのが面倒な所だ。
「……安保理では拒否権を用いても構わん。最低でも我が国は宇宙軍と対立する意思はない、という事を示すのが優先だ」
「了解です。関係各国との連携も高める必要があるかと思われますが?」
「その辺りは任せる。ただし、どこと行うのか、反応はどうなのか、そこの辺りの報告と許可はきちんと行って欲しい」
「承知しております」
かくして、世界は新たな局面へと突入する。
各国の対立模様でした
この時代の安保理の常任理事国は非常にややこしい事になってます
そして、宇宙軍の各勢力が入り混じっているのも……
無論、宇宙軍も黙ってはいません
何せ、下手な干渉されたら自分たちの危険度増しますからね……




