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世界各国では新たな技術の開発に金が注ぎ込まれていた。
これまで比較的金が注ぎ込まれていたのは未来の技術と呼べるものだった。
例えば、エネルギー。
核分裂炉、核融合炉、常温核融合炉が次々と開発されたのは矢張り現物があった事が大きいが、同時に安定したエネルギー源が求められた事も大きい。
何と言っても石油では宇宙に進出した後が困る。
化石燃料である為に当然、宇宙では石油は手に入らない。宇宙では月ぐらいならばともかく、更に遠方に恒常的に進出するにはそれ以外のエネルギー源が求められたのだ。……まあ、我々の世界の現代では土星の衛星タイタンに石油や天然ガスの主成分である炭化水素が大量にあるらしいとされているが、この当時はそんなもの知られている訳がない(尚2008年探査衛星カッシーニによるデータ分析の結果らしい)。
加えて現物が存在した事から比較的好調に開発が進んでいった。
或いは攻撃に関しても、もし人類が悪魔を低級のものであれ撃破可能な砲が作れるようになれば話は大分変わる。
そうした面にこそ、資金はつぎ込まれていたのだ。
反面、通信系統、それも地球圏を対象としたもの、或いは探知システムに関しては割合後回しにされていた。
最もこちらも仕方ない面もある、全てに金をつぎ込むなど出来る訳がない。どこかに注力し、どこかを削らねばならない。結果としてこの時点で優先順位が低い分野だったのだ、これまでは……。
「とはいえ、嬉しいと素直に喜ぶ訳にはいかんがね」
「同感ですな」
研究所の、これまで乏しい予算の中で細々と研究を行ってきた人間からすれば歓喜するだろうと思われるかもしれないが、現場の人間からすれば複雑な気分だった。
何せ、彼らに予算が回ってきたという事は必然的に人類がまた限られた予算をこちらに回さねばならない程厳しい状況が発生したという事。更に付け加えるならば、これまで予算をケチってきた癖に、早急な結果を求められる圧力がかかってくる、という事でもある。
はっきり言おう、無茶にも程がある。
如何に予算が回された所で、実験なりに用いる機械が即手に入る訳ではない。
研究者だって幾ら他の分野などで優れた人材だとしても即効で傍違いの分野で戦力になどなる訳がない。
一人の天才がいきなりそれまでの全てを出し抜くような発見や発明をする例がない訳ではないが、そんなものに最初から期待してたら単なる馬鹿だ。
「……要求は電波以外の新たな探知システムの構築?」
「……こっちには妨害電波を突き破れる小型軽量、且つ一定範囲以上の通信可能な能力なんて書いてありますよ」
軍は要求すればすぐ要求通りのものが上がってくると思ってるんじゃあるまいか?
そう思いたくなる。
まあ、それでもかつてと違い、まだ制限がないだけマシだ。
「とりあえず探知システムは重力センサーから、かな?むしろ地球という狭い規模で使えるようにするのが大変かもしれん」
「妥当な所でしょうね。通信はどうします?」
「……人が持てるぐらいの小型軽量で長距離、且つ妨害を防ぐなんて無理だ無理」
「……んじゃ子機にするしかないですね」
「本体を別に設置して、そこから分散か……軍はそれでも不満持つかもしれんが、妥当だろうな」
重力場を感知するセンサーは比較的一般的になっている。
原因は単純、宇宙空間では割と必要だからだ。特に重力場の異常というのは宇宙では下手すれば致命的だ。太陽系こそ駐留艦隊と呼べる規模のものはないが、他の星系に僅かながら部隊が駐留している。……大抵は恒星間航行船で必要な資材を運び、資源採掘などを行う基地化したものだが。
逆に言えば宇宙で使う事を前提としているので感知の基本となる幅が馬鹿みたいに大きい。
惑星規模、恒星規模の対応が前提で、もっと小さな規模なら重力センサーもそれ相応に調整しなければならない。幾ら基本があるとはいえ、大雑把すぎるのをもっと詳細に探知可能な域にするのは多大な苦労があるのは確定だ。……まあ、数百キロ程度のものの異常を感知するのと、数メートルサイズのものの感知に使うのでは難易度が桁違いになって当然な訳だが。でかいビルを遠目に見つけるのは割りと簡単でも、そのビルの中の一人を見つけるのは極めて難しい、そういう事だ。
それが理解出来るだけに研究者達の顔も渋い。
しかし、やらねばならない。
これまでの人類のやり方が神々の感に触ったのか、先だっての戦闘ではこれまでの概念が大幅に狂った。
その改善の為に各国は焦り動いている訳なのだから……。
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……さて、研究者達が四苦八苦しているからといって、現場とて何もしていない訳ではない。
軍学校もまたその手伝いの真っ最中だ。
特に新米達は今後、通信機能を可能ならば【オーガニック】の機能としてではなく、人類のそれで代用していきたいというのが軍の本音である分、次の新米。すなわち二年弱の後に配属になる学生達の慣れはどうしても必須の案件となる。
そうやってなんだかんだで忙しい学校で西坂に面会があった。
「……えッ?」
とはいえ、内容はさすがに想定外だったが。
目の前にいる軍人は人事課の所属らしいが……。
「無論、今すぐとは言わないが、卒業後は宇宙軍に来ないかね?無論、それ相応の機能を取ってもらう事になる訳だが」
……どうやら先だっての損害を補充する為に可能性ありそうな人間に早々に唾をつけに来たらしい。
開発は何時の時代も大変です
開発しろ=出来ましたとはなりませんからね
そして、宇宙軍、なりふりかまわぬ補充に出てます
特に宇宙で機動戦闘が可能になりそうな人材補充が大変なので……




