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軍のマニュアルに曰く生体型とやりあう時の最大の注意点、それは……。
一部の例外である人外達を除き格闘戦をなるべくやりあわない事。
したがって一撃離脱が順当。その為には相手より上の位置を占める事……。
自らのオーガニックを操り、一気に上昇をかける。
他のオラクルも各機急上昇をかけてくる。
……その分、地上攻撃は出来なくなる。隊長が民間防衛隊にその旨連絡を入れてたが、あちらもこちらの通り魔的な攻撃で一息つけたようだ。後方から地上軍が駆けつけてきているというのも安心感を高めているのだろう。
戦力を集めて防衛に徹しようとしている。
……とはいえ。
幾らロマンだからって刀しか持ってない機体とかはどうなんだ?あれじゃ接近戦しか出来ないだろうに……。実際、弾幕を張って悪魔の接近を阻止しようって動きに対応出来てない。
まあ、気にしたら負けか。
「敵機は……合計十二か」
一人頭担当は三機ずつだな、なんて事は考えない。
それはⅣが新人という事もあるし、そのお守りをしないといけない隊長の負担がどうしても大きくなるというのもある。
けれども同時に仲間より一足先に上昇をかけている自分が相手の頭を抑えなければ現状、仲間が相手より上に位置する前に混戦状態となる可能性は、高い。と、同時にそれは格好のポイントの稼ぎ時という事でもある。
「敵機の頭を抑える為に先に突っ込みますよ」
「分かった」
隊長に連絡するとすぐに返事が来た。
実戦経験豊富なだけあってすぐに状況を把握……いや、こっちより先に気づいてたかもなー。
そう思いつつ思考で武器を選択。
……あいつら場合によってはえらい小さな旋回半径で回避かけるからなあ。通常の追尾型ミサイルとかじゃ厳しい、となると。
「面制圧型だな」
武装をセレクト。
ガトリング砲を対空戦闘モードに切り替える。更に幾つかの武装を起動。一部の兵装には心が揺れるが対宙戦闘用の兵装は地上での使用は危険度が大きすぎる、主に人類側に。すっぱり諦めて重力兵器や空間兵器の類は意識の中で閉じる。
既に高度は十分。
「ダイブ開始」
オーガニックの身を翻して降下を開始。
それと共に慣性制御を働かせ、上へと向かう力も丸ごと下方へと変更する。お陰で即座にオーガニックの巨体は下方へと向けて落下を開始する。
既に空戦型悪魔はこちらを認識しており、散開して的を散らそうとしてくる。その速度はさすがに生体型というべきか、高速性能では劣る分異様な機動だ。
けれどもまだ遅い。
散開しようとする相手に腕部レーザーガンで狙撃。一機の翼を引き裂き、相手は速度を失い急降下、を開始する瞬間、そこを上昇中のオラクルⅡがすれ違いざまに粉砕する。他の生体型悪魔は回避したものの、元よりこちらの狙いは当てる事ではない。
回避行動を取った事、その回避方向に連射したレーザーガンで相手の行動を誘導した事で相手は結果的に離れかけたのが再び集まった!そこへ一気に突入する……!
どう考えても通常の火薬式の銃弾とは違う速度で発射されたガトリング砲の弾丸は通常の20ミリ機銃弾ぐらい防ぐ装甲を誇る生体型航空悪魔でも防ぎきれない。引き裂き、蹂躙し、血肉へと変えてゆく。
更にすれ違いざまに一機ばかり切り裂いてゆく。
……悪魔のひらき、って余り美味しそうには見えんよなあ。誰も食わんだろうが。
そんな事を考えつつそのまま相手集団をすり抜ける。
今ので粉砕、撃破した相手は合計六体……先程オラクルⅢがトドメを刺した奴と合わせて合計七、残り五。
こちらの通過で反射的に奴らは俺を追撃しようと反転するが……甘いね、それは悪手だ。
「アタック」
「「了解!!」」
あいつらが俺を追って降下しようとするなら、必然的に上方には背を向ける事になるだろう?
隊長達がそれを見逃すはずがない。
こいつらは単なる機械じゃない。ちゃんと考える人並みの頭がある。だが、だからこそさっきまでは頭にあったであろう上昇中の隊長達の事が一足先に突っ込んできた俺のせいで頭から飛んだようだな……!こいつらもまだまだ新人って事か。生体型は機械型と違って学習するから、年経た奴程厄介になるんだが……この程度なら、な。悪いがお前らの戦いはここで永遠にリタイアだ。
次の瞬間、襲い掛かった隊長達が四機を片付ける。
何とか残った二機が逃走を図るが、そこへ慣性制御で落下速度分をそのまま追撃速度へ変えた俺が追い抜き様に浴びせたガトリング砲が奴らを引き裂く。パーフェクト!
こちらの損害は誰もなかったみたいだし、後は基地へ帰還するだけか。
ポイントが楽しみだ。さって、次は何取るかなあ。
「よし、終わったな……このまま地上支援任務を続行する」
……やべ、忘れてた。
通常は地上攻撃を行う機体と、空戦を行う機体に求められるものは別です
でも、こいつらはそれをこなします
……とはいえ誰でも出来る事じゃないんですけどね
ルーキーが配属になってますけれど、どちらかというとベテランに預けて現場教育中の面が強いです
ちなみに、慣性制御を搭載してるような所まで到達してるのは極一部のみです