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「よく無事で帰ってきた」
「はあ……」
「どうした、元気ないな」
「いえその、何が何だか分からない内に全部終わってたもので実感が」
教官と西坂の会話だ。
こうして会話をする時間があるのは別に状況が落ち着いているから、ではない。ただ単に、幾ら無事だったとはいえ、捕らわれていたのは確か。さすがにかつての年齢で言えばやっと中学一年にといった程度の年齢の子供をそんな体験の後、即効で戦場に送り込む程、今の日本軍は外道ではない。というより、旧来の軍が一度完璧に壊された後に出来た現在の軍は、幾ら旧軍の将兵を多数取り込んで成立したとはいえ、かつてのような暴走まで繰り返す気はさすがになかった。
ただ、極端から極端へ走った感はなきにしもあらず、とにかく兵を大事にする事では世界でも有名だ。
まあ、だからこそ憲兵隊のような任務であれば人を殺すという事さえ何とも思わないような連中でさえ、こうして人助けに動いてくれる訳だが。
「そういえば前線はどうなってるんですか?」
「うん、そっちに関しては多少は落ち着いた」
まあ、実際問題としてそうでなければ、救出されたばかりの西坂はともかく教官はここにはいる余裕はなかっただろうが。
幸いというか、予定調和というか、結局学生の側にはろくにステルス悪魔は出現しなかった。
神々の調整の結果という推定があるが、まあ、たぶん事実なんだろうと上は誰もが思っている、らしい。無論、そうは言ってもステルス悪魔への警戒自体はまともにやっていた……。
実の所、別の国では同じように駆り出された訓練生らの所にまったく襲撃がない事から警戒を緩めた所へ見事に直撃して、大打撃をこうむった、らしい。同じように油断した所は全てやられたそうだから、神々は気を抜いた所を狙って襲撃かけさせたのだろう……とは教官の推測。ここら辺は起きていなくても最後まで警戒を緩めずきっちり仕事をした面々のお手柄だろう。
とはいえ、ここら辺は後に判明した話だ。
「前線にようやく増援の師団が到着してね……海軍も到着して陸海空の連携で反撃が始まった」
おかげで、やっと抜けてくる小部隊が減ったらしい。
順次交代で休息を取らせているそうだ。
「だから、君もこのまま休んで、申し訳ないが君達の隊の休息が終わった時点で参加してもらいたい」
「了解です」
幸い、というか笹木達が戻ってくるのは間もなくのようだ……。
時間、場所を教えてもらい、歩いて向かう。
さすがに急造の野営地な為にテント村の態を為しているが、それでもそれなりに形になっている。
確か、設営自体は先輩達がやったはず……。
「俺達もこれから勉強してくんだろうな……」
そう思いつつ、西坂は帰還地点まで向かった。
まあ、要は車止めとか、玄関のようなものだ。【オーガニック】は片付けは楽だから、降りる場所さえはっきりさせておけば問題ない。
着くとそこを担当していた教官からも心配された……。
ま、心配されないより遥かにマシだよな!誘拐されて下手したら殺されるんじゃないか、って状態から帰ってきての反応が「分かった。じゃ次の仕事だが」なんてドライ且つ即効で仕事に回されるようじゃ悲しすぎるってもんだし。
「やあ、無事帰ってこれたみたいだね」
そんな事を考えてたら、笹木が声をかけてきた。
……何時戻ってきたんだ?
「あ、僕が見えなかったのは当然だよ。地中侵攻がないか確認の為に振動センサー設置頼まれてたからね。地中から戻ったんだ」
……そりゃ見えねー。
これで地面が振動するとかならまだ「おや?」って思うのかもしれないし、現役バリバリ、精鋭部隊の軍人さんなら微弱な振動でも違和感を感じるのかもしれないが……実際には笹木の地中進行型ってのはドリルで地中を掘りぬいて進みはするが、ドリル全体から超振動を出していて、砂みたいにしてサクサク進んでくらしい。おかげで振動もろくにないんだとか。
で、攻撃の時にはその超振動をまとったドリルで突貫すると……。
「けど、無事で帰れて良かったね。海外の危ない所の奴らならチェーンソーで首ちょんぱなんて可能性もあったしね」
あはは、って笑ってるけど……浚われた当人としては笑えん。
でも、あれって日本はまだ穏やかな方らしいんだよなあ……教官が今回の件が起きた事から教えてくれたけど(後で授業でもちゃんとやるらしい、同じような事が起きないように)、海外のテロ組織はそりゃあ危険らしい……あいつらは最終的にどうするか分からなかったけど、俺が子供だって事で殺さず、監視してた。
……海外だとさくっと殺っちまうんだと。
笹木の場合、それを実際に見た事があるらしい……まあ、そりゃあ……【オーガニック】あるからそっちの方が楽なんだろうけどさ……。でも、それって。
「警察とか見つけたら即効で殺しにかかんね?」
「そりゃそうだよ。彼らが殺す理由は警察や軍にだって適応されるんだから」
……こいつの目、こうして話をしてる時の目、マジで怖い。
今までこんな話まともにした事も、こういう事を一対一で話した事なかったからまともに目を見るのも初めてだけど、感情が消えてて、凄い冷めてる。
……これが実際に死とか見てきた奴の目、って奴なんだろうか。
或いは……こいつも自分の手で人を殺した事あるのかも。
笹木はさらっと話してたけど、もし、テロ組織から狙われたら……。
「あ、女性陣二人も帰ってきたみたいだね。迎えに行こう。二人も心配してたよ」
「あ、ああ」
気を使ってくれたんだと思うけど、その心配りが有難かったっていうか、その笑顔が妙に怖く感じるよ……。
幕間までアップ出来るかな……
出来ない場合は休みの日に




