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 「ステルス砲弾、だと?」


 報告を受けた総司令部の面々は何とも言えない表情となった。

 対地攻撃部隊の壊滅。

 咄嗟に高度を下げたベテラン程食われた反面、慌てて高度を一気に上昇させたり、速度を上げて振り切ろうとした新米が生き残った。

 その生き残った機体からの報告に司令部は泡を食った。

 当然だろう、原因が判明しない事にはまた同じ事が起きる危険がある。当然、原因を解明しなくては前線に地上攻撃部隊を送れず、そうなれば前線に著しい負担がかかる。早急な解明を必要であり、全力で離脱に成功した三機の記録を解析した結果判明した事、その報告の場で飛び出したのが「見えない砲弾」、そんな言葉だった。


 「……そんなものが可能なのかね?」

 

 ようやく参謀の一人が発した言葉は疑念に溢れていた。

 最も、彼だけではなく司令官他皆が似たり寄ったりの気持ちを抱いている事は顔を見れば一目瞭然だった。

 無理もない、と思う。分析した自分でさえ、最初に出てきたその結果を信じられず、思わず何度もデータを読み直したのだから。


 「少々時間がかかりますが、説明させて頂きます」


 長々と説明している時間はない。

 というより、本当は全部すっ飛ばしてただちに基地で待機させている地上攻撃部隊を発進させたい。

 だが、軍隊もお役所なのだ。きちんとこの場で説明し、問い合わせたあった際に司令官なり参謀なりが説明出来ないようでは迂闊に発進させられない。……例えその結果として幾人もの兵士が、市民が命を落としたとしても、だ。


 「まず理解して頂きたいのは、ステルス砲弾と言っても完全に見えない砲弾、という訳ではありません」


 ふむ、と頷くのを確認してから言葉を続ける。

 

 「元々現場にはジャミングが殆ど気づかないレベルながらかけられていました。そこへ【オーガニック】のセンサーに反応しにくい砲弾が高速で放たれた結果、砲撃が飛来したという反応がないままに直撃を受けたと推測されます。センサーからさえ隠してしまえば、人の目では砲弾は捕らえられませんから」

 「しかし、どうやって【オーガニック】のセンサーに気づかれにくい物質を……愚問だったな」


 元より【オーガニック】は神々によって与えられたものだ。

 当然、そのセンサー機能の性能など与えた当人は先刻承知だろうし、それに反応しにくい形状や物質も把握済みだろう。

 所詮は、与えられた【オーガニック】を使う限り、自分達は釈迦の掌の上に過ぎない。

 それを改めて認識させられて苦い顔になる面々だったが、その内の一人がふと気づいたように声を上げた。

 

 「待て、そうなると照準はどうしたのだ?」

 

 参謀長が今度は疑念の声を上げた。

 これまた当然の話で、通常は照準レーダーで相手を捕らえ、その上で攻撃を行う。

 逆に、その照準の為のレーダーを逆に感知する事でこちらは狙われていると分かるのだ。

 だが、今の話を聞く限り、それを逆に感知する事なく攻撃を受けたように思える。これが新米連中によって構成される部隊ならばそれもありえるだろうが、部隊を率いていたのは歴戦の部隊長である少佐本人だ。前線に間もなく到達しようかという状況下で緊張を解くような馬鹿な真似を仕出かす学校出たての新人とは訳が違う。


 「……推測ですが、全て光学のみで行ったものと判断されます」


 その場は驚愕の空気に包まれた。

 光学照準と一口に言うが、要は目で見て狙って撃つ、という事だ。戦場に向かって真っ直ぐ飛行していた時ならともかく、回避行動に入った後は当然だが地上攻撃部隊は細かい機動を繰り返していたはずだ。そんな相手を狙って一発で仕留める?

 思わず、といった様子で分析官に視線が集中するが当人も苦い顔だ。

 

 「ま、待て!分かった、それはそれとして理解した。だが、それならばどうやって相手の攻撃をかわせばいいのだ!?」

 

 だが、今は混乱している時ではない、と我に返った司令官が懸命に絞り出した声に全員がはっと我に返った。

 確かにその通りだ。

 今は理屈を捏ね回している時ではない。前線では今も頻繁に増援要請が飛び込んでいるのだ。そんな中で地上を行くよりも遥かに高速で現場に到着出来る地上攻撃部隊が出撃出来ないのは痛い、物凄く痛い。お陰で前線は一部突破され、市民への被害とて出ているのだ。


 「……現状では高速での飛行とセンサー機の帯同による事前警戒、しか方法がありません。後は高度を高めに取るか……どうやらアメンボは砲撃時にはセンサー類に一瞬ですがはっきり映るようですので……おそらくは砲撃の為に形態を変える為にその瞬間だけセンサーを誤魔化せなくなるのではないか、と……」


 光学照準の為か、一定以上の高速に対しては捕らえきれないらしい。

 それならば通常の戦闘爆撃機相当の部隊は大丈夫だろう。 

 また、一定以下の高度の敵のみに反応している可能性があり、高度を上げた機体に対しては全く攻撃が行われなかった。

 が……全員が全員渋い表情になる。

 たった一種の新たな「悪魔」にここまで苦労させられるとは……。

 無論、今後も同じ結果を招くつもりはない。条件を調べ、完璧は無理でも、相当なレベルまで必ず暴き出してみせるつもりだし、してみせるだろう。

 だが、時間がない。

 発見されてまだ一日と経っていない今はひたすらに時間が足りない。アメンボのデータに関してはこの大規模侵攻の最中に集められた、血を代償として得られる戦訓で得ていくしかないのだ。

 そして、それを理解しながら、それを命じなければならないのが彼らの立場であった。


 ……そして、軍学校でもまた……新たな戦いが始まろうとしていた。

 

次回は再び学校に移ります

オーガニックは超高性能ですが、結局神々が与えた道具に過ぎないんです

当然、どんな性能に設定したかとか全部神々は知ってますし、悪魔もまた神々が作ったものという……

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