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 山風からの急報を受けた本隊から急ぎ波級駆逐艦の三隻、荒波・白波・細波は韓国軍艦艇がいるはずの海域へと急行していた。

 山風は異常発見後、即座に反転。本隊へ向けて全力で急行中。攻撃を受けはしたものの、発見と反応が良かった事もあり軽い損害で切り抜けていた。

 この際の攻防で幾つかの事が判明していた。

 まず、敵の正体だが、後に識別名称:アメンボの名が与えられた通り、アメンボのような形状の「悪魔」であり、脚部に水面張力を増大させるシステムを保有する事で、本物のアメンボの如く海面ですら静かに機動する事が出来るという新種だった。

 これに光学迷彩やジャミングを駆使する事で、相手に気づかれる事なく艦船に接近。

 ジャミングで救援や詳細な事情を伝えられないようにした上で群がって殺す、というものだった。

 もし、艦内で誰かがパニックから【オーガニック】を呼び出そうものなら……彼は助かるかもしれないが、その瞬間に船は破壊され、沈む。

 しかも、余程探知能力に優れた機体か、事前に知っていて対策を施していない限り、まず脱出出来ても「悪魔」を感知出来ない。そして、『見えない』ままに彼らは「悪魔」に襲われ、死んでいく事になる、という訳だ。

 山風がその死の罠からギリギリで逃れたお陰で、日本海軍にはその事情が伝わり、この三隻にも既に対策が施されていた。

 【オーガニック】に比べれば確かに性能が劣るが、こうしてポイント不要で対策が取れるのは船の強みだと言えるだろう。

 

 既にアメリカ軍などには本隊から防衛省を通じて連絡が行っているはずだ。

 実際、アメリカ軍の通信を傍受していると緊急警報を敢えてオープン回線で流していた。これでアメリカ軍の通信を懸命に傍受しているであろう余り仲のよろしくない相手にも迅速に伝えようというのだろう。そこ等辺の対応が早いのはさすがだ。

 しかし、こちらが対策を行ったのに、未だに韓国艦艇からの応答は、ない。

 これは相手がジャミングの領域に入っているという事なのか、或いは……。


 「どう思う」

 「……残念ながら撃沈されている可能性は高い、かと」


 そうか、と副長に尋ねた艦長は苦い顔になる。傍らの副長も似たり寄ったりだ。

 彼らが渋い表情になっているのは、あちらさんが撃沈されたとなるとそこに穴が開いた、という事とイコールだからだ。警戒網にでっかい穴があく……よろしくない、真に持ってよろしくない。如何に彼らのいる海域から真っ直ぐ伸びている先にあるのが朝鮮半島だと言っても監視から逃れた「悪魔」がどこへ行くのかは分からない。場合によっては群が日本へと押し寄せるという事だって起きうる。

 だからこそ、こうして三隻が急派された訳だ。

 そして、到着した彼らが見たものは……。


 「……酷いな」

 

 思わず艦長が顔をしかめたように周囲には死体が幾つも浮いていた。

 ここに浮いていたはずの艦は、今では上下逆に艦腹を晒して浮いている。おそらくは山風の幸運が彼らには訪れなかったのだろう。いや、山風とてベテラン中のベテランだった見張り員がいなければ、同じ事になっていた可能性は高いと聞いた。彼が僅かな違和感に気づき、それを気のせいと流さなかったからこそ山風は助かった。もし、これで見張りがサボっていたら、いや、そのほんの僅かな違和感に気づけるだけの腕がなかったら……おそらく山風もまた戦没リスト入りしていたのだろう。そうしてみると、紙一重の差が片方はこうして全滅の状態を晒し、片方は貴重な情報を収集し、離脱に成功したという結果に繋がったのだろう。

 

 「……せめて遺体を回収してやりたい所だが……」

 「難しいですね、ここは陸でもなければ、安全な海域でもないですから……」


 既に海は暗くなりだしている。

 こんな状況下で日本海の荒波の中、遺体回収作業なんて危険すぎる。全員の【オーガニック】が海上航行能力や水中航行能力を兼ね備えている訳ではない、というかそんな奴はむしろ全体から見れば少なめなのが実情だ。逆に言えば、そんな事が出来、海上戦闘可能な【オーガニック】を危険に晒す事は出来ない。作業を行うのはそれ以外の艦を動かす人材、という事になるが……。


 「無理だな」

 

 艦長としても殉職者が出かねないと判断せざるをえなかった。

 これでまだ生存者がいるなら危険を冒す価値もあるのだが……。

  

 そう思っていたが、実際にはそんな事をやっている余裕はすぐになくなった。

 対応可能なようにアップデートを施したセンサーが接近するアメンボの存在を感知したのだ。

 即座に水上戦闘可能な【オーガニック】が展開、艦長もまた【オーガニック】の水上戦闘は可能だが、最高責任者がここを離れる訳にはいかないので指揮を執る。

 さしもの【オーガニック】も艦からデータを受け取りながらの戦闘は骨が折れるらしく、てこずっている。とはいえ、見えない以外は今の所はそこまで危険な相手ではない。最初の接近さえ気づければ、やられる危険は大幅に下がるだろう……とはいえ、艦長の顔は優れない。もし、これらが通常型の悪魔の攻撃に紛れて襲ってくれば……おそらくかなりの損害が出るだろうと予測出来るからだ。

 そう思い悩む艦長に副長から報告が入った。


 「接近中の【オーガニック】?」

 「はい、韓国空軍か海軍のものと思われます、飛行型のようです」


 何故だ、と一瞬思って、すぐに答えが出た。

 この海域の本来の担当は元々彼らだったのだ。おそらく通信が途絶した事で確認の機体が飛んだのだろう。

 

 「連絡は取れたのか?」

 「いえ、それが……」


 どうやらまだ対応が済んでいないらしく、アメンボのジャミングの為に通信回線が開けないと聞いて、艦長は顔をしかめた。

 とはいえ、それではどうにもならないか、と視認後の発光信号で連絡を取るようにと指示を下し、本人は指揮に意識を戻した。

 ……もし、彼がほんの少し、今の状況を考えていたら。

 今の状況が相手にどう見えるかを考えていたら、この後の結末は変わっていたのかもしれない。

 そう……飛来した彼らは「悪魔」アメンボがステルスタイプの存在だと知らされていなかった。というより、彼らを出撃させた司令部自体がまだそれを知らなかった。

 では、彼らから今の海上の状況はどう見えただろうか?

 韓国海軍が担当する海域に浮かぶ三隻の日本海軍の駆逐艦と戦闘していると思える【オーガニック】、その少し離れた海域で船腹を見せてひっくり返った自国の駆逐艦とその周囲に浮かぶ将兵の遺体……。

 そう、彼らはこう考えてしまったのだ。

 

 『卑劣なる日本が同胞の駆逐艦を攻撃し、沈めた!攻撃はさてはまだ生きてる連中を口封じに殺そうとしているのか!!』


 長年の刷り込みとは恐ろしい。

 これが他の軍であれば通信で詰問しようとしただろうが、彼らは長い事、もう教育を受けるようになってずっと洗脳のような反日教育を受けていた。無論、それは大統領として強権を握っていた李承晩(さすがにこの時代にはもう亡くなっているが)が、国内の視線を誤魔化す為に徹底した「悪魔」と「日本」への敵愾心を煽っていたのだ。「悪魔」だけでなかったのは彼が「悪魔」出現前に散々挑発とも言える行動を取っており、それを釈明すれば面倒な事になる、それならば「日本」が悪いから行った事で自分の取った行動は正しい、そう印象づけるしかなかったとも言える。

 だが、いずれにせよ結果から言おう。

 飛来した四機の韓国空軍所属の【オーガニック】はいずれも対艦大型ミサイルを備えていた。

 「何に使うつもりなんだか」、と破壊力だけで追尾性能も速度も遅く、大型の「悪魔」にあっさり迎撃されてしまうそれに他の海軍は呆れていたが、とにかく彼らはそんなものをその時も持っており……彼らはそれを発射した。

 ……そして、日本側は対艦ミサイルの発射においても最初は「悪魔」との戦闘の為だとの思い込みがあった。

 センサー担当官から自分達の艦が目標だと知らされ、迎撃を命じようとして……余りに近距離から発射されたそれが次々と日本海軍駆逐艦の三隻へと突き刺さっていったのだった。

  

本日は完全に海戦とかそっち方向へ……

はい、さすがに乗組員全員の【オーガニック】が海上で戦闘可能な訳ではありません

でも、長期間監視とか行う為にも船は必要で、そこにはコックさんや医者なんかも必要な訳で……また艦を維持するにも一杯人手が必要なので……

もちろん、脱出、救助待ちを可能とする為の設備は色々整ってます、真っ当な所は


さて、今日中に文化に関するお話の幕間を投稿しておかないと…

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