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 現在の近隣諸国の内、日本が比較的友好的な関係を築けているのはシベリア共和国だけだ。

 逆に特に悪いと言えるのが、朝鮮との関係だった。 

 原因は完璧に李承晩の存在が、と言えるだろう。本来ならば1960年に選挙が行われるはずだったが、その年頭に「悪魔」が出現した為にそれを理由に大統領選挙の中止を宣言、そのまま大統領の座に居座った。

 国民の不満は高まっていたものの、選挙なんてものはどうしたって時間も金も人もかかる。告示、選挙活動、そして投票と開票。到底一日二日で終わるような話でもなく、また当り前だが選挙でトップが変われば新たに閣僚を選出する必要がある。……そして、現在の国の状況からしてこ、のままいけば間違いなく大統領が変わると見られていた。

 さて、そんな時に「悪魔」が襲撃してきた事で、これ幸いとばかりに国家非常宣言を発して、選挙を棚上げした訳だ。不満に思う者は大勢いたが、なまじ頭が回る者程今、ここで混乱が起きるのがどれだけ拙いかを理解出来た、出来てしまった為に渋々ながら一時その矛を収めざるをえなかった。

 結果として、日本とは関係が悪いままになった。

 何しろ、未だ李承晩は日本への口撃、攻撃を繰り返していた。ただでさえ、悪魔襲撃という緊急事態において騒動の末に第六次吉田内閣が成立した事、自衛隊の前身である保安隊が既に存在していたものの、急ぎ軍という組織を立て直す必要があった事から採用されたのが公職追放などで下野していた旧軍の将官、佐官らであった事などから、急速に日本も朝鮮に対して対立姿勢を強めていった。

 さすがに拙いと思ったアメリカはここで介入。

 こじれにこじれ、険悪な表情で睨み合う両国首脳陣を脅し、なだめすかし、おだてあげ、とにかく外交技術の粋を凝らしたと言われる程の苦労の末、何とか両国間に一部ならず棚上げさせてやっとの思いで双方に同盟を締結させた。この時のアメリカ側の全権大使はこの調印の後、即効で入院したと言われるし、倒れた者も多数。後に台湾が日本への再統合を願った折にさっさと日本に押し付ける事に決定したのもこの時の大騒動があったからだと伝えられている。

 とはいえ、呉越同舟もいい所ではあるが、同盟は何とか成立した。

 同盟といっても、あくまで「悪魔」に対するものだ。……冗談ではないよ?

 お陰で、南朝鮮側は常に南北に兵を張り付けている状態で軍の負担も大きい。

 おまけにこの状況では共同作戦など到底無理だ。

 先だっての海戦時にも我を張り、突出した韓国海軍が勝手に戦端を開いた事で、日本も北部中国も余計な損害を被る羽目に陥り、本来なら厳重な監視体制が敷かれているはずのこの海域は、結果として大きな穴があいていた。

 単純に想定外の損害を喰らったというだけでなく、互いに巻き込まれないように間隔を広く取っていた事が災いする事になったのである。

 

 「………暇だな」


 その時、日本海軍の艦艇の一隻、駆逐艦山風の見張り員は思わずそう呟いた。

 レーダーが発達した事で、見張り員の役目はかつてよりは落ちた。

 しかし、決して意味がなくなった訳ではない。レーダーでは「何かがいる」と分かっても相手が何かを最後に確認するのは人の目だ。【オーガニック】が幾ら便利だと言っても常にそれを動かしている訳ではないし、この船だって別に【オーガニック】の変形したものでもない。

 さすがに宇宙空間では「連携機能」によって構成された【オーガニック】による宇宙船が主体だが、そちらとて普段駐留する基地や短距離を移動するシャトルは極力人が造ったものを使用している。単純に【オーガニック】に頼り過ぎないように、という事もあるし、そこまで何でも使える程ポイントは楽に溜まるものではない、という世知がらい意味合いもある。

 しん、と静まり返った夜の闇の中、彼はふと周囲を見回した。

 

 (……変わったもんだよな)


 前の大戦が終わったばかりの頃、彼はまだ十台の新兵でかつては精強を誇った連合艦隊も僅かな艦が残るだけだった。

 戦後も海軍こそ残ったものの、残った理由は先の戦争で米軍がばら撒いた機雷の処理の為。大型艦艇は軒並み、かつては連合艦隊旗艦を務めた長門も核実験で沈んだ。

 それが今では自分も四十路間近。

 このまま消え去るのかと思った海軍は神々と「悪魔」の出現により蘇った。

 出世もしたが、自分がポンコツに日一日と近づいていくのと正反対船はどんどん最新の船が建造され、機能も増えていく。

 乗っている艦とて最初は米軍のお古のポンコツ艦から始まり、性能はどんどん向上。

 

 「……何時かは俺も不要になるのかね」


 いや、現在だってカメラで周囲を確認してるはずだ。

 暗視や望遠機能を搭載した超高性能カメラが周囲を撮影し、マイクが音を把握する。こうして人が見張っているのだって「もし万が一機械が故障していたら」の予備にすぎない。結果として、若い者は自然とこうした見張り員という役目をやくに立たない仕事として嫌がる風潮がある。


 「レーダーも感なし、カメラもマイクも正常作動中、世の中特に事もなし、と……」


 そう呟きつつも鋭い視線を周囲に向けていた熟練の見張り員はくるりと周囲を見回して……。

 ふと違和感を感じた。


 「……んん?」


 なんだ?

 改めてぐるりと見回す。……矢張り妙だ、何かしら違和感を感じる。……なんだ?


 「……あーCIA。何か変なもんとかは感知してないか?」

 『?……いえ、特に何も』


 すぐに返事が返ってくる。

 一瞬のタイムラグはざっと計器を確認したんだろう。レーダーにも、カメラにも、マイクにも特に異常を感知している様子はない……俺の考えすぎか?

 一瞬そう思ったが、熟練の彼の勘が何かを強く警告していた。そして、彼は機械ではなく長年の自分の勘を信じた。

 

 「……すまん、何か違和感があるんだ。こっちでもちょっと見てみるんで、そっちでも調べてくれねえか?」

 『違和感、ですか?はあ……分かりました』


 ……今日の担当が素直なあいつで助かった。

 担当によっては頭ごなしに機械の方が優れてる、ロートルの勘なんて内心で馬鹿にしやがるから余計な手間がかかるもんだからな……。

 そう思いつつも、自分でも改めて周囲を確認する。

 あいつならきっと今頃精査してくれてるはずだが……。

 そう思った時、彼は違和感に気がついた。


 「……!おい!聞こえるか!!」

 『えっ?はい、今の所空には特に何も反応は……』

 「空じゃねえ!海だ!!海面ギリギリ、何かいるぞ!!」

 『!どこです!?』

 「二時の方角!海面ギリギリだ!分かりにくいが……僅かに海がへこんでやがる!!」


 そう、違和感はそれだった。

 日本海の海は荒れている。

 その荒波は普通に流れているようでいて、僅かに、微妙に異常があった。


 『!!感知しました!!重力偏差発生します!』

 「警報鳴らせ!!上に連絡するんだ!!」

 『もうやってます!!』


 くそ!あっちの方角には確か韓国海軍の艦艇がいたはずだが……警告すら送ってこないなんてどうなってやがる!!

 ……いや、沈んだ、か?

 くそ、どちらにせよこんな事仕出かすのは奴らだけだ!!


 ……この時、距離をなまじ開いていた事が災いし、襲撃されて撃沈した艦が出てもそれに気づかない艦が多数存在していた。

 音を殺し、レーダーを殺し、光を殺し、潜み襲撃する暗殺者。

 そんな悪魔の襲撃に次々と襲われ、監視の船は警報を発する間もなく沈んでいったのである。

 そんな中、山風はギリギリで攻撃を避け、一報を発した。 

 ……そして、これが長い五日の戦いの始まりとなったのだ。

 

  

日韓基本条約が結ばれたのは1965年

1960年に襲撃があった為に、当然この世界では結ばれていません

お陰で、アメリカが睨んでるので何とか同盟らしきものは出来ましたけど、内心互いににらみ合ってる関係です

……当然ですけど、互いの国内に残ってた人間は今では殆ど逃げ出してますし、経済的な交流も殆どありません

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