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 ぜえぜえ、と荒い息が聞こえる。

 周囲には普段の授業とはうって変わって大勢の人間が転がっている。

 現在は体育の授業中。

 ……どんな分野でもそうだが、体を動かす仕事であるならば、まず体力作りは最優先であり、そこに王道はない。

 現在、学生達は彼らの体格に合わせた簡略軍服に荷物を背負っている。

 この荷物という奴が曲者で、今後予定されている【オーガニック】搭乗時の荷物、それと同じ重さのものが設定されている。中身は無線機のレプリカ、食料、水、塩などの錠剤。それに簡単な怪我の治療を行う為の包帯や薬の類。後は銃が一丁といった所か。

 この銃(無論今はモデルガンだが)を渡された時彼らは戦場へ出る覚悟、その最初の一つを教えられたといっていい。

 ……「悪魔」相手には銃など何の役にも立たない。

 これはそうした意味で使うのではなく……助からないような怪我を負いながら一撃で死に損ねた時、自分の頭を撃ち抜く為のものだからだ。


 実はこの銃を使う機会は案外多い。

 なまじ【オーガニック】の安全性の高さ、同調性が皮肉にもそうした機会を増やす原因になっている。

 戦闘の結果、損傷を負い、破壊される【オーガニック】が出る事は必然だ。

 この時、腕や足を失った程度ならば何とかなる。

 とはいえ、激痛に苛まれながら、治療をするのはかなり、いや言葉を飾っても仕方ないが極めて辛い。麻酔でも効かせてくれればいいものを、生命維持は行ってくれる癖にそうした処置は行ってくれない。結果、安楽に逃げる事になる者がいたりする。

 

 『なくすべきなのではないか?』


 そんな意見もない訳ではないが、まだ助かるような怪我の人間ならともかく、誰が見ても「楽にしてやった方がいい」ような怪我の人間は確かに存在している。結果として、今も尚残っている訳だ……。

 というのは建前。

 実際の本音は学生に「その覚悟を持て」というのが持たせる正しい意味だったりする。

 言葉で理解していてもやはり目の前で……。


 『もし、本当に助からないと思ったら、これ以上は無理だと思ったら……頭に当てて引き金を引け』


 と銃を渡されながら言われたら相当なショックだろう。知らなければ。

 どうやら笹木辺りは理解しているようだが、他は女性陣も含めて知らないようなので黙っておく事にする。

 俺が知ったのも両親とか親の同僚だとかに小さい頃聞いた話を覚えてたから、なんだが。現実には【オーガニック】で死ぬ時は即死、死んでさえいなければ【オーガニック】が生命維持してくれるから、下手に安楽に死のうと考えたりしないよう銃やナイフなんて持ち込ませたりしない、らしい。もっとも、それでも尚、戦死者が毎回多数出ている事に今更ながらに意味を理解して、震えたりしたもんだったが……。

 ……などとどうでもいい事を考えている内に休憩が終わって、また走りこみの開始だ。

 軍学校の一年生は大体こんなものだと理解してても、ちゃんと体を鍛えていても、やはり辛い。

 けれども、どんな任務だろうとまず体力あっての話。

 入学した最初の年は徹底的に体作りをして、合間合間に基礎の勉強。

 二年次の頭に外部記憶機能なんかを取らせて、暗記科目を機能使って丸暗記させつつ、実際に武器を使っての訓練も込めて尚も体作り。

 三年になってやっと体作りは……やっぱりある。

 まあ、そうだろう。精鋭部隊レベルになってくると、とんでもないハードな代物になってくるからなあ。

 ちょっとやそっと鍛えたぐらいじゃ足りないし、サボったらこういうのはすぐ落ちてくからな。終わりなきトレーニングの道が延々続く訳だ。それでもまだ、一年の頃は普通の体育がハードになったレベルだからまだいい。二年とかになってきたら体作りって言っても現実の野山を使ったものになってくるからな……。

 ああ、何だね、山に登ったらヤッホーと叫びたくなるね……。


 「いや、いいからいい加減戻ってきた方がいいよ?」

 「……いや、だってまだ楽なんだ」


 ふざけてごめん。

 とはいえ、まだ自分とか笹木は平気だったんだけど、他は皆ぐったりと半分死んでるように動かない。

 ……まあ、笹木は分かる。こいつは戦場にいたんだから鍛えてただろう。

 自分も軍人になる!と決めてから軍人の両親に鍛えてもらったし、キャンプという名のサバイバルもやったりした。

 けど、南宮は実家の関係で武術やってたらしいけど、武術とこういうトレーニングはまた違うからな……普段使うのとは別の筋肉使ったりするせいで、他よりマシとはいえ結構彼女も疲れた様子だ。……黒田なんかはさっきからピクリとも動かないな。本当に大丈夫か?いや、肩が動いてるから息はしてるか……。 

 

 「けど、まだ初日だし楽なもんなんだぞ?これで潰れてたら今後大丈夫か?」

 

 思わず呟いた言葉に幾人かが驚愕の表情で顔を勢いよく上げる。

 大抵の奴は嘘だろ、って顔で何とか顔を起こしてるような状態だ。


 「……大丈夫じゃないかい?その為の軍学校なんだし、生かさず殺さずできっちり仕上げてくれるさ。そっちはプロな訳だしね」


 ……笹木の奴にトドメを刺されて、皆ばったり突っ伏した。

 結構酷いな、こいつも。

本日は戦闘ではない学校の風景、でした

いかがだったでしょう?

地味ですが、地味な訓練あってこそというか、兵隊は体力がないとやってられないというか……

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