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第五一八戦闘航空団。
それが俺の属する部隊だ。第五軍所属の第一航空部隊に属する第八部隊という意味で五百十八番目の部隊って意味じゃない、念の為。
味もそっけもない部隊名だが、これは仕方ない。
何せ、オーガニックは世界中の全人類が得たものだ。おまけに維持に必要なのはそれを操る人と、その人が消費する食物や衣類などの極普通の物資だけ。
損傷しても自己修復を行い、実弾兵器も光学兵器も補給は不要。
それこそゲームのように残弾を考える事なく撃ちまくれる。この辺りもデスがつくとはいえ「ゲーム」呼ばわりされる原因だろう。
無論、一部の大型兵器、例えば現実でいうところの自動追尾ミサイルや多連装ロケットシステムみたいなものは一定数撃ち尽くすと再補充されるまでに多少時間がかかるなんて制限がある訳だが……。
さて、地表に部隊が見えてきた。
……実にカラフルだ。
とすると、あいつらは軍所属ではなく民間防衛隊って所だろうか?
……軍隊って命令系統がどうしても煩いし、自分勝手な行動は許されないしなあ。場合によっては身内がいる方面を無視してでも、防衛線を守らないって事だってある訳だし。
これでも、かつてに比べれば大分フリーダムになったらしいんだけど、それでも軍隊ってのはその性質上どうしてもある程度窮屈な組織にならざるをえない。
それを嫌って、けど守りたいからって民間の有志で結成された自警団としての民間防衛隊がある、んだが……。
そんな連中だから正規の戦闘訓練を受けてる訳じゃなし、連携だって常日頃から日常生活として行ってる訳でもなし。指揮官というか指揮命令系統だっていい加減なものだ。例えば銃撃で阻止線を張ってる最中なのに、近くで知り合いが接近戦に持ち込まれて危機に陥って悲鳴をあげて助けを求めた時、「待ってろ!」とか言って勝手に阻止線での銃撃を止めて助けに行ったりする。
結果として、そっちは助けられたけど代わりにギリギリで敵を防いでた阻止線の火力が不足して突破を許してしまったり……軍では民間防衛隊は「にぎやかし」以外に考えるな、と言われる所以だ。
色合いだけじゃなく形状も好き勝手な形をしている。
けど、色や形状だってポイントを消費する。
そして複雑な形状、多数の色を用いるのはそれだけで余計にポイントを消費する。こんな感じに。
・塗装
一色に機体の色を塗り替える。
これは最初の一回、単色で行う限りポイントを消費せず、必ず白色以外の色へ変更を行わねばならない。
また以後全身を白色で統一する事は出来ない。
・塗装Ⅱ
機体を塗装する。
一箇所の塗装ごとに1ポイントを消費する。
……このⅡの一箇所というのが曲者だ。なお、これ以外で塗装しようとしても絶対オーガニックは色がつかない。
例えば腕を例に挙げよう。
掌とかは白、手の甲のみ赤。下腕部を青にして、上腕部は白、肩は再び青にしたとする。
合計五箇所、すなわちこれだけで5ポイントを消費する。両腕だと更に倍。
細かい塗りを行えば、更にそれだけポイントを消費する。
例えば、グレー地にアメリカ国旗を描いたりしたら……最小限で計算したとして、まず赤字を用意して、それに右上隅の青地、白線が合計六本。更に青地に五十個の白い星。合計で58ポイントを消費する必要がある。
拘りを貫いた機体ともなれば俺が聞いた、見たケースだと色塗りだけで100ポイント以上を使ったなんて奴までいた。
……飛行能力が50Pもあれば取れるんだぞ?そんだけあれば精神感応無線機能や暗視機能、遠距離探知機能なんかの基本的な部分は抑えてお釣りがくる。
しかも、これに加えて徹底的な拘りの外見……まるでどこぞのアニメに出てくるようなロボットみたいな外見を細かく再現しようとすると更に多大なポイントを消費する。……まあ、同時にこれが拘りを持つ奴が軍隊ではなく民間防衛隊にいる理由だったりする面がないとも言えないんだが。
彼らとは真逆の集団がこっち側。
俺達の部隊は全機が濃青色で統一。
これは航空部隊を示している。
同じように海上艦艇系ならグレー、地上系ならオリーブドラド、水中系統と地中系統は黒単色といった具合だ。
色変更が認められるのは例えば地上部隊から航空部隊のような管轄の異なる部隊へと非常に稀だが移動する際のみ。例外は宇宙部隊で、これだけは元々の所属色が入り混じっている。
後は……軍に憧れてても、混乱を防ぐ為に民間人、民間防衛隊は軍と同じ色、或いは似通った色による単色塗装は認められていない。やったら厳罰食らう、って事ぐらいか。こればっかりはこの国でも法律できっちり決められている。別の国と合同で作戦やった時とかに相手が混乱するからね……。
にしても、何時もの事とはいえ……ぐちゃぐちゃな戦線だな、全く。
これじゃ地上部隊も下手に支援出来ないよなあ……。
あと一つは今日中に