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「「…………」」
誰も口を開かない。
きっと全員の脳裏に浮かぶ光景はあの時のあの光景だ。
味方だけではない、「悪魔」に関してもそうだ。
あれだけ「悪魔」というものが恐ろしいものだとは初めて知った。成る程、実際の戦闘場面がテレビで流されない訳だ、そう理解せざるをえなかった。……無論、実際にはアニメの戦闘ならばともかく、リアルな戦闘となると悲惨な光景が普通に流れるので自重というか、昔作られた放送の規制が未だ残っているというか、そこ等辺が理由な部分も大きい訳だが。
かつてならばそうやって規制しても現実のリアルな光景が平然と流れていたのだろうが……そこ等辺に公然と公的な規制がかかるようになって久しい。
初期こそ言論統制だと抗議運動やらが発生したのだが、何時しかそれも消えた。軍事機密とかスパイの摘発、良識ある大人であれば思わず眉を潜めてしまうような余りに無惨な光景などに関するものが大半であった事も大きい。もちろん、裏では都市伝説レベルで「実際は国家の汚職とか裏で行ってる犯罪とかを隠蔽している!」といった類は常にあるのだが、現在の世界の情勢がそれを容認している。
だからこそ、初めて見た本物の光景は彼らにとってはショックだった。
実際にはああした光景は本来、二年次の頭、ちょうど最初のポイント稼ぎである入学式の後の調子に乗りかけた辺り、「何だ意外と簡単じゃん」「俺らだって戦場に今から出ても結構やれるんじゃないか?」などと思った所で本来の戦場の映像を流し、鼻っ柱をへし折られる、というのが例年の光景だったのだが今回はえらい早く、それも生で見る羽目になったのだった。
それだけに、無線がなかったのでシェルターに避難していた同級生達は困惑気味だ。
彼らは知らない。本物の精鋭の腕も、本当の「悪魔」達の姿も何も。世の中には「知らぬが仏」という言葉があるが、それを実感する言葉だ。
そして、笹木達は喋らない。もっとも、こちらは配慮の結果、ではなく教官達から口止めされたからだ。前述の通り、本来は2年になってから見る動画であり、話を聞いた所で所詮は口で聞いただけ。まあ、こちらに関しても「百聞は一見にしかず」の言葉通り、その目で見なければ実感も湧くまいという事もある。
「……あんなの見ると自信なくしますね」
「……同感」
そんな女性陣二人の言葉に笹木は苦笑する。
「上を見てもきりがないよ。一歩ずつ着実に歩いていくしか僕らには道はないんだから」
そう言った後、チラ、と西坂に視線を向ける。
こちらは女性陣と違って落ち着いたものだ。腕組みをして目を閉じてじっと座っている。
「……君は落ち着いてるね」
「やー、焦ってもしょうがないし。今回はポイント稼いだ訳じゃないからどうせ今更成長変更出来る訳じゃないってのもあるしさ」
そんな西坂の様子を見ながら、笹木は心の内で考える。果たしてこれは本心なのか単なる強がりなのか?
(……もし、それが素直な本心だとしても)
さて、彼はあてに出来るのかどうか?そう考える。
こんな時の、本物を見てしまった後の人の態度は幾つか見てきた。
怯え素直に戦う事への恐怖を現す者、表面だけ取り繕って内心は逃げたくて仕方のない者、かと思えば覚悟を決め動じない者もいる。だが、実の所それはいい。問題はその後、ちゃんと戦えるかどうか、だ。例え覚悟を決め動じなかった者でも焦りを内包し、結果として無謀な突撃を行ってしまう者だっているし、怯え震える者でも誰かを護る為に恐怖に顔を引きつらせながら、命をかけて戦える者もいる。
それが見極められるのは……おそらく次の戦場。
そう思って、西坂に視線を向けていた事に気がついたのだろう、目を開いた西坂が訝しげな視線を向けてきた。
「……なんだよ?」
「いや、強いな、って思ってね。さて、南宮さん、黒田さん決まったかい?」
「……そうね、私は素直に装甲と出力の強化、後は武装をある程度強化する方向で進めようと思っていますわ」
下手に「何でもない」と誤魔化すよりは、とそう答えて女性陣に声を掛ける。
南宮は素直に接近戦と遠距離戦の強化を図る事にするらしい。
武装は強化しない。そこ等辺は出力と装甲の強化を行えば地力が上がる。西坂の【オーガニック】が持つ空間断層のような特殊な例でない限り、通常の接近戦で重みを持つのは装甲の厚さと相手を押し切るパワーが意味を持ってくる。
無論、それだけではなく……。
「後はこちらですわね。召喚に防具:Lv0というのを見つけました」
どうやら盾を呼べるらしい。
両手持ちのハンマーを片手持ちのメイスとすれば攻撃力は落ちても防御は上がる。幸い、というか0を1に上げるには5ポイントで済むらしい。
小型盾と大型盾では大型盾を選択。
小型盾ならハンマーを持ちながら腕に固定される点が魅力的ではあるが、それでは身を隠す必要がある時や仲間を護る際には余り意味がない。なので、今回は見送りだ。
「……武器召喚の射撃武器を2、防御を1に上げれば15ポイント……肩の武器も上げるなら25……」
「ふうん、武器召喚は余計な時間がかかったり、召喚した武器の内射撃武器は撃てる数に制限があったり、武器に耐久性があったりするけどその分強力になってるんだね……」
「ええ、だから射撃武器の召喚はこの『大型ビーム砲』にしようと思います」
ふむ、と皆が頷いた。
もう一つはビームマシンガン。確かに数をばらまけるのは大きい反面、射程ではビームライフルに劣る。それだけでなく弾数制限があるというのも痛い。マシンガンのような代物だときちんと弾数の管理が出来なければあっという間に撃ち尽くしてしまう。なまじ通常使用するものが弾数無制限だから尚更だ。
これに対して大型ビーム砲は両手持ちで機動性が下がるし、連射性能もないが、射程と威力の双方で上回る。遠距離から攻撃する時専用と割り切るならそう悪い選択ではないだろう。
もちろん、接近戦となった場合に備えて肩口の、腕から移動させたマシンガンも強化する。
こちらは接近戦時のサポートが目的だから、射程が短くても弾をばら撒け、威力があるものが好ましい。なので大口径マシンキャノンを選択する。
その後は装甲と出力の強化だ。両方を10に上げた所で必要ポイントが以後10へと上がる。
ここまで45を用いているので残りは55。装甲と出力を2ずつ強化を行い、機動力確保の為にローラーダッシュを選択。かくして彼女の新たな機体は完成したのだった。
南宮の機体だけになってしまいました
黒田の新機体は明日にて……
戦場の洗礼を受けた笹木はともかく、他の人間はそれぞれに複雑な気持ちを抱えてます
主人公も割り切ってるようで気持ち的には色々とあったりしてます
【南宮千代新機体】
武装
召喚武具
メイス/ハンマー/大型盾/大型ビーム砲
大口径マシンキャノンx2
全高:16m
装甲強度:12
最大出力:1200GP
機動:ローラーダッシュ
特記
武器召喚能力
『解説』
基本となる部分を強化した機体
装甲を強化し、新たに盾召喚を可能とした事で防御性能を向上させると共に出力を強化し、接近戦能力の向上を図っている
結果として、かなり見た目的にはマッシヴな機体となっている
機動性能向上の為に今回取得したローラーダッシュは脚部に反発フィールドをまとう車輪を持つもので、地上と僅かに反発して疾走可能というもの
僅かに浮いている為、通常の意味での地球産の車や戦車などと異なり荒地などの装甲にも問題はない
ただし、極度に地表面の反発の低い場所、沼地や砂砂漠などでは足場を取られるのが欠点である




