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今回は主人公達は傍観者です

 空から灼熱の塊が降下してくる。

 数は四。

 いずれも第一軌道降下軍所属の【オーガニック】だ。

 軌道降下軍は日本防衛軍の中でもトップクラスのエリート達だ。何せ、彼らは宇宙空間への離脱能力と再突入能力の双方を兼ね備え、と同時に宇宙空間での戦闘を可能とせねばならず、且つ投入される場所は基本的に危険地帯だ。

 そんな中で戦況を支え、或いは逆転の一歩を担う存在なだけに精鋭中の精鋭である事を求められている。

 

 「さあて、今回のお仕事は救援だ。全員抜かるなよ」

 「「「了解」」」

 

 口調自体は軽いものだ。

 むやみやたらな緊張は意味を成さない。だからこそ、彼らは戦場でこそ気軽に応える。

 最初に見えてくるのは空を舞う悪魔達。

 悪魔達の前方には二体の蒼い機体。

 自分達の後輩或いは先輩か。いずれかは分からないが何時か共に戦う可能性もある【オーガニック】達。

 先達であるというなら見せよう、自分達はこの力をもって今も尚世界を守っていると。

 後輩ならばその目に示そう、まだ先があるのだと。何時かここまで辿り着いてみせろと、戦う技術の先を、自分達が示す事の出来る限界をもって目標となりうる道標を現してみせよう。

 

 「アターーック!!」


 一斉に彼らは「悪魔」の群へと突入した。

 


~【西坂視点】~

 大気圏突入の際の灼熱をまといながら、彼らはまっしぐらに「悪魔」の群を目指す。

 と、僅かに二機が行動を遅らせる。その意味はすぐに理解出来た。二機が先行する二機の後背につく。直後に前衛が攻撃を開始、一瞬で通り過ぎる間に戦場に華が咲きすれ違った一瞬で更に切り刻まれた「悪魔」達が落ちてゆく。その後を追おうと背を向けた所へ更に追撃の弾丸が突き刺さり、爆発してゆく。

 もちろん、元々の数が多い故にそれで全滅した訳ではないが、相当な数が僅かな交差で落ちてゆく……その次の瞬間。今度は「悪魔」の動きが変わった。

 ようやく敵が変わった事を理解したのか、或いは何らかの指示が下ったのか。

 

 「え?」


 思わず西坂の口から呆気に取られた声が洩れた。

 これまでの「悪魔」達の動きはかつてのジェット戦闘機やプロペラ戦闘機などのように通常の飛翔体のそれだった。

 が、その瞬間からまるで西坂の機体のような……慣性を無視した動きへと変わったのだ。その動きはUFOとされた動きのように鋭角な機動を空中に描きながら、背後を見せた第一軌道降下軍へと襲い掛かる。

 だが、降り注ぐ攻撃を僅かな機動でかわしながら、そのまま減速なしに地表へと突っ込んでいった四機は撃ち上げてきた地表の攻撃との同士討ちを誘う形で無駄なく「悪魔」を撃破してゆく。それでも「悪魔」達は躊躇う事なく、飽和攻撃とばかりに統制の取れた射撃を繰り返す。

 空から地上から、土砂降りのように降り注ぐビームの雨。

 前の戦いの時は空の敵は殆どビームを使ってこなかったが、実は砲門を有していた、そんな事は知らないとばかりに猛烈な射撃を行う。間違いなく、前回の追撃時にあれだけの攻撃が行われていれば、とっくに自分は撃墜されていたはずだ、と西坂の背に冷たいものが走る。

 けれども、それすらかわし、地表からの攻撃が届くか否か、という辺り。射角の問題から砲撃が減るその絶妙な距離を保って低空飛行を行い、地上を薙ぎ払ってゆく。

 時折跳び上がる「悪魔」が先を行く機体の進路を遮ろうとするが、それすら予測していたかのようにスルリとすり抜けてゆく。

 ここまで来ると、上空の「悪魔」達も砲撃を停止している。さすがに圧倒的に多数の「悪魔」が地上にひしめいているこの状態では、僅か四機の【オーガニック】を狙うのは余りに効率が悪すぎる。故にきちんと戦術を理解しているように「悪魔」達は上空で待ち構え……突然数体の「悪魔」が急上昇を開始する。


 その動きに気づいた西坂が慌てて上空を見れば、新たな光点が四つ。

 かつての航空自衛隊では五分待機と呼ばれる部隊が現在「悪魔」を蹂躙している部隊であるならば、今降りてきているのは三十分待機と呼ばれる集団だ。

 最も以前と異なり、遥かに短時間、具体的には五分と間をおかずに降下してきた訳だが……。「悪魔」達には未だ西坂達には知る由もないが、一定レベルの知能に近い自己判断能力があると看做されている。まあ、そうでなければ自律兵器として役にはたつまい。そして、知能に似たものがあるからこそ、「悪魔」達は経験を積むごとに手強くなり、生体型の「悪魔」達の中には人の一部をライバルと認定しているように、特定の相手がいればそれに勝負を挑んでくる、そうとしか判断出来ないようなものまでいる。

 だからこそ……「悪魔」は人と同じようなミスも犯す。

 今回のケースで言えば、生体型の悪魔が多かった。それ故に彼らは地上を掃討している相手が上がってきた所をてぐすね引いて待ち構えていた、が故にそちらに意識を裂きすぎて、結果として上空からに気づくのが遅れた。無論、彼らの生体レーダーはとっくに彼らを感知していたのだろうが、意識が他に向いていれば、目の前にあっても気づかない、という事が起きる。それと同じ事が起きた。

 その結果は甚大だった。

 ただでさえ、先の一撃で大きな損害を喰らった所に、今度はかなり完璧な奇襲を喰らったのだ。

 幾ら慣性制御を作動させて、速度ゼロからトップスピードに切り換えたとしても、なまじ知性に近いものがあるせいで意識の切り替えが上手く働かないというか混乱が起きている状態では本来の迎撃能力に劣る。結果として、見事なまでに多大な損害を被る羽目に陥った。


 ……そんな光景を西坂も、或いは南宮も黒田も、そして他の学生達も息を呑んで見つめていた。

 彼らは目の当たりにしたのだ。

 本物のプロ達の力を、悪魔達があの程度でおさまっていたのはあくまでチュートリアルだったからなのだと……今のあの「悪魔」の群へと突入する気にはなれない。軌道降下軍が最初に突撃をかけてきたように即座の切り換えを「悪魔」達は行えないようだ。それはすなわち彼ら学生に対して、最初はあの機動と判断、攻撃力で襲い掛かってくるという事でもある。そうなればあっという間に死体の仲間入りだろう。そして、「悪魔」達もまた恐ろしい程正確に学生達や教官へは攻撃をかけてこない。例え、至近距離を通過しても、今の彼らに戦いを挑むだけの腕がないと、それゆえに相手にするべき相手ではないと理解しているようにすり抜ける。

 そんな呆然と眺めるだけの同級生達を笹木は一人苦笑しながら見つめていた。

 彼が支援砲撃に特化した機体を所持しているのも、今、目の前で示されている光景ゆえだ。

 いや、さすがにピンキリの傭兵相手、ここまで高い訓練などを可能としていない国の兵士が相手だったから、ここまでの動きは見せていなかったが、それでも学生達を相手としていた動きとは雲泥の差があった。当時の彼ではそんな相手と接近戦など仕掛けるだけ無謀だったのだ。

 けれど、だからこそ。 

 今の笹木には彼らを目指せるだけの場所が目の前にある。幸い、今後は訓練を積む機会に困る事はなさそうだ……。

 そうして、一時間と経たない間に、追加で駆けつけた第一軌道降下軍一個中隊の増援をもって「悪魔」達は見事に殲滅されたのだった。

 そうして、ソラへと再び戻ってゆく彼らの姿は学生達に強烈な印象を植え付けたのだった……。

 


矢張り、幾ら腕がいいといっても学生とプロ中のプロは違うと思うんですよね

そんな違いが出せてたらいいな、と思います

教官の中にも混じって戦える人はいたのですが、下手に自分達が動くと学生達も仲間として攻撃される危険があると判断して傍観に徹していました


明日あたりの後書きで、南宮と黒田の新バージョンを出せたらと考えています

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