23
さて、西坂は案外すんなりと決まった。
笹木もだ。
笹木は元々一応の支援攻撃能力は備えており、個人的にも後は火力の成長と通信機能を強化して指揮系統を強化出来れば、と考えていたから、素直に火力と通信にポイントを注げたのだ。
これに対して問題だったのが女性陣だった。
何しろ、両方とも特化しかけた機体で、どちらもがそれに今回問題がある事を自覚した。
改善しようと思ったのはいいが、だからといって万能を目指すのも問題がある、というか万能を目指していてはポイントが幾らあっても足りない。どこかで何らかの方向性をある程度持たせる必要がある。
あくまで弱点を補う為のもの。
そう割り切るまでにそれなりの時間が必要だった。
「これはどうかしら……」
「……駄目、これだと兎さんに合わない」
「「いや、それはまたにしろ」」
などという会話をしながら、弄っていた。
同級生もそれを真剣な目で見ている。何しろ、今の彼女らの姿は今後自分達が辿る道だ。
おそらく、彼女らは今悩んでいる南宮や黒田に比べれば、得られるポイントは少ないだろう。その少ないポイントで何を選び、何を切り捨てるか。
幸い、というか選択の画面は誰でも見れる。大きさもある程度は自由だ(あくまで個人レベルで、だが)。
そこで、少々大きめに設定し、自分達ならどうするか、或いはどんな機能が存在しているのか、それを成長させた場合どんな選択肢が生まれるのかを、さすがに質問に関しては悩んでいる当人に聞くのは何なので、いち早く終わった男性二人に聞きながら考えている。なかなかに全員にとって有意義な時間、となるはずだった。
「?……え!?」
そんな時鳴り始めたサイレンに、全員が一瞬理解出来なかった。
「うーん、選択は時間切れみたいだね。選択はまた後にしよう」
それは新たな敵襲だった。
さすがに慌てて決める程馬鹿な真似はしない。文句を言いつつも全員が急いで校庭へと出たが……。
「戦力こんだけ……?」
明らかにその数が大幅に減少している。
一方早くも見えてきた「悪魔」の群は入学式の時に匹敵する程の数だ。あれだけの数、最終的には向こうが引いてくれなければ全滅していた可能性が高かった、という事を考えると絶望感が襲ってくる。
この数の原因は簡単だ。
まず、教官が減っている。
戦死した者は言うに及ばず、負傷した者も戦闘終結後そのまま病院へ直行、入院。
無事だった者も上との交渉などの為に出張に行っていたりと最初から数が少ない。
更に、前回の戦闘で無線がない場合どれだけの混乱を招くかよく理解出来た為に通信機能を持てなかった者は最初から避難を命じられている。さすがにこれだけの短期間では無線機の手配も間に合わなかった。新入学生は言うに及ばず。そして、更なる問題点は三年生の現地研修を目的とした派遣だった。これは教官不足で自習が目立つ状況となった為に、卒業間近な三年生が研修名目で前線の部隊へ派遣されたというものだった。それが三日前だ。
もちろん、二年生で病院に入院中の者は除く。
結果として、前回の三割程度しかこちら側の数がいない、という状況だった。
「さすがに勝ち目が見えない……」
たった二機で空に西坂は浮かびながら、さすがに青い顔色で呻いていた。
先輩達は二機共撃墜され戦死。今傍らにいるのは教官の一人だ。が、彼は本道の空戦指導実技教官であり、西坂のような機動にはまるで知識がない。故に下手に自分に合わせようとすれば却って悪影響が出ると判断。自由にやれ、という許可が出ていたが……それは裏を返せば自分で全て判断しなくてはならないという事だ。
「どうするんだよ……」
『そんな君に朗報だ』
思わず、呟いた言葉に予想外に返答があった。
「?何かあった?」
『ああ、援軍が来る』
確かに笹木の言葉は朗報だった。
南宮や黒田からも驚きと喜びの混じった声が通信を通して聞こえてくる。今回、臨時に笹木が新入生四名から成る小隊の隊長に仮任命されていたのだが、その為に隊長格に最初に伝えられた情報を得た、という事のようだ。
「やったね!でもどこから?」
『上だ』
「上?」
上と言われても、西坂の周囲は教官機の他には近づいてくる「悪魔」の群があるだけだ。
『空じゃない――もっと上だ』
思わず見上げる更なる高み――すなわち宇宙。
そう、援軍とは偶々上空を訓練の為に通過しつつあった部隊。
宇宙を活動拠点とするそれらが緊急増援要請を受けて、舞い降りようとしていた。
『よく見ておくといい、相手は日本防衛軍最精鋭の一つ』
――第一軌道降下軍だ。
という訳で「本物」達の登場予告でした
活躍してるように見えますが、主人公達はあくまで「新しく入学した学生にしては」なのです
……次回、ちゃんと本物っぷりが描写出来るといいんだけど
ちなみに、第一軌道降下軍のモデルは第一空挺団です……知ってる人はそれで精鋭集団って事を理解してもらえると思います
ちなみに、漫画「バキ」などで有名な板垣恵介先生はかつてこの第一空挺団所属だったとか……




