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明日の投稿まで

~【笹木視点】~

 「……そろそろ限界だよねえ」


 ボソリと笹木は呟いた。

 しかし、それは非情なまでの現実を告げていた。

 

 空を舞う西坂はあれはきちんと鍛えられているようで、実際は反射神経によるものがかなりの部分を占めている。結果として、右腕を実質的に失ったのが致命的だった。「悪魔」が迫った時、咄嗟に右腕の兵装を使おうとして使えず、右腕の武器で追い払うつもりだった為に行動が遅れ、まだ撃墜されてないのが信じられない……いや、ただ単に地上と違って、空は未だチュートリアルモードだからなだけか。

 見方を変えれば、わざとトドメを刺さず甚振ってるとも言える訳だが。

 

 (まあ、そのお陰で生きてるんだし、文句を言う筋合いじゃないよね)


 では地上はといえば、こちらも厳しい。

 地上で南宮が暴れまわっていたが、次第に動きが鈍ってきた。

 というより、これまでよく頑張ったと褒めるべきだろうが、いずれにせよ所詮は「学生にしては」のレベルでしかない事を、自身が戦場に出る前から見てきた笹木はしっかりと理解していた。実際、教官達を相手どった最初に比べれば大分「悪魔」の攻撃にはアラが、言い換えれば手加減が見える。すなわちそれが意味する所は……。


 (これでもまだチュートリアル、って事だろうなあ)


 それが理解出来るからこそ、ギリギリまで粘っているとも言える。

 下手にさっさと離脱をかければ、その時は本気になった「悪魔」が追撃をかけてきかねない。教官達の機体を攻撃した時の戦闘力から考えて、目の前の「悪魔」達の本来の性能が今見せているより更に高い事は疑いがない。実際、教官達も仮にも戦場を駆け抜け生きてきた人間であり、本来の【オーガニック】の性能は今、目の前で暴れている南宮や黒田の機体よりずっと上のはずなのだ。

 それに、今までの自分の……悪癖を直さねばならないのも確かだ。

 いや、これまでは悪癖ではなかった。だが、これからは悪癖となる。

 傭兵にとっては一番の目的は生き延びて報酬を受け取る事だ。だから、逃走経路をきちんと確保し、やばい時にはさっさと逃げるのも傭兵としては必須だった。何しろ、傭兵は正規の兵士ではない。結果として、常に使い捨てにされる危険がある。……まあ、もちろん、雇い主だって普通はそんな事しない。そんな事をすれば、次から真っ当な傭兵は雇われてくれないからだ。そうした噂はあっという間に広まる。

 とはいえ、命がかっている時とかアシ止めの捨て駒にされる危険は常にある。

 が、これから所属するのは軍だ。軍は場合によっては兵士に「死ね」と命じなければならない時がある、はずだ。そして、それに従わねばならない。

 

 「……さて、どこまでやらせるのかね……」


 さすがに空も地上もそろそろヤバイんだがな。



~【南宮視点】~

 「……はあ……はあ……」


 息が切れる。

 思念で動く以上、自分の体を動かしていないんだから疲れないだろうなどと思う者はレースマシンに一度乗ってみるといい。

 戦闘中なのだから、小刻みな移動を繰り返し、周囲の「悪魔」からの攻撃をかわしながらこちらも反撃し……。

 

 「……それでもチュートリアル、なのよね。これは……」


 最大で一度に襲ってくるのは三体まで。

 色々と奇襲を仕掛けてきたり、技巧をこらしてきたりと三体いれば十分と言えなくもないが、その気になれば同士討ちお構いなしに砲撃をかけてくればきっと自分は今頃息をしてはいない。「悪魔」という存在が同士討ちを躊躇わないのはよく分かっている。

 なにせ、目の前で壮絶にやらかしてくれたのだから。

 一体の攻撃を受け流し、それが結果的に他の「悪魔」を切り裂く結果となった……。

 人間なら、思わず手が止まるか、割り切るにしても何らかの反応があっただろう。

 だが、「悪魔」は違った、斬った側も斬られた側も瞬時に躊躇わず、襲い掛かってきた……斬られた側は体の半分を引きずるようにして突っかかってきて、そのまま倒れた。それ程の傷を負っていたというのに。

 そんな連中の真っ只中で暴れまわる。

 それがどれ程の精神的重圧をかける事か……。

 支援砲撃だけではなく、時折自分の上空に姿を見せては一撃離脱をかける兎、それが自分が一人ではないという事を感じさせ、と同時に次第に毛並みがやられていく兎の姿が否応なく限界が近い事を感じさせる。

 

 「何時まで……続くの?」


 最初は楽しかった。

 次は作業になった。

 そうして戦場となり、今はサバイバルになっている。

 最初に倒れるのは自分か、それとも空か。

 一番最後に倒れるのが現状では笹木になる事は疑いないだろうが、別に彼に文句を言うつもりはない。支援砲撃がまともに出来るのが彼だけなのだから仕方ない。


 (……全周囲攻撃で一時的にでも、間を作れる何かが、欲しい)


 今までは周囲に誰かがいた。

 今までは自分が相手にするのは僅かな数だった。

 彼女もまた、己の意識がこの戦場で変わった一人だった。


~~~


 ……結果から言えば、彼女らは生き残った。

 このわずか三分後に「悪魔」が撤退を開始したからだ。それと正に入れ替わるように援軍が到着した……。

 西坂も、南宮も、黒田も。

 ギリギリで生き残った。

 彼らは確かに大量のポイントを稼いだが、それは生命を削るような思いで得たポイントであり、到底喜ぶ気持ちにはなれなかっただろう。

 最後は西坂は左腕も喪失、ひたすら逃げるだけでそれも追い詰められつつあった。

 南宮は攻撃を遂にまともに受け、転倒した後は殆ど袋叩きのような状況に陥り、黒田の強引に割り込んでの援護射撃と周囲への武器召喚撃ち落しでかろうじて窮地を逃れた所で、見極めが終わったとでもいうように整然たる撤退を見せ付けられた。

 黒田は黒田で、最後に強引に割り込んだお陰で、地面に貼り付けのような状態になった。

 

 「……まあ、それでも全員無事に生き残ったさ」


 ぐったりとシートに身を預け、笹木は呟いた。

彼らが倒れるのを待っていたように、けど死ぬ前に撤退してしまいました

次回の冒頭にはちょっと神々の思惑を入れたいと思います

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