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【西坂視点】


 「畜生!死ーぬううううう!」

 

 西坂は思わず罵った。

 気持ちは分からないでもない。

 最初は良かった。

 まるでチュートリアルのように「悪魔」は一体ずつ襲い掛かってきたし、攻撃も稚拙なものだった。次第に動きに複雑さが増し、やがて一体が二体となり、二体が三体となり……。そんな中でも何とか逃げつつ落としてはいたものの……それは地上からの援護射撃があってこそだ。

 地上が悲惨極まる状態へと突入した頃から支援射撃は全く飛んでこなくなった。それは分かる。地上に比べ、空中は動きに大差がない。この状況で支援攻撃が欲しいというのは贅沢な事である事はよく分かるし、ポイントを稼ぐのに絶好の機会である事もよく分かる、分かるのだが……。


 『うわあああああああッ!!』

 「ッ!?」


 突然叫び声が響いた。

 けれど、視線を向けもしないし、驚きもしない。そんな事をしていたら即効で死ぬ。

 

 『あーあー……こちら笹木、西坂君、返事はいいから聞き流しててくれ』

 

 そんな時、突然通信が入った。

 とはいえ、言われずとものんびり返事をしている余裕はない。かわし、撃ち、すれ違い、またかわして……一秒たりとも止まっている余裕はない。西坂が今の所撃墜されずに済んでいるのはきっと彼の変態的な飛行故だ。重力慣性制御による彼の飛行は「悪魔」も含めた彼以外の飛行とはまるで異なり、それが結果的に「悪魔」の攻撃をスカさせていた。

 

 『今、残っていた空の機体が落ちた。あとこちら側で残っている飛んでるのは君だけだ』

 「………」


 どうやら先程の悲鳴は同じ空を飛んでいた先輩だったようだ。

 

 『確認してたけど、どうやらそっちは最大で四機までしか同時に襲い掛からないみたいだ。残りは待機して、減ったら補充されるみたいだね』

 

 ……道理で全然減らないと思った。

 広範囲攻撃が可能な兵器でもあればもう少し楽になれると思うのだが……。

 次は絶対門数増やして、威力も増大、出来れば弾をばら撒けるようにしようと固く誓った西坂だった。

 

 『で、同時に空を飛んでるこちら側がいれば、悪魔は地上に攻撃してこないみたいなんだ。だからとにかく逃げ回ってくれないかな?』

 「無茶言うな!!」

 『無茶でも何でもやってもらわないと君も死ぬし、こっちも死ぬ』

 「………」


 思わず怒鳴った西坂に冷静な笹木の声が返ってきた。

 そして、残念ながらそのとおりだ。


 『ずっとじゃない。既に援軍は要請されてる。到着するまでの辛抱なんだ』

 「……分かったよ!やるしかないんだろ!やるしか!!」

 『そのとおり、頼んだよ』


 そう告げると笹木はあっさりと通信を遮断した。

 まあ、あちらはこちらに増して余裕がないのだろう、と頭の片隅で考えるがすぐに脇に押しやられる。……素直に逃げに徹しよう、そう考えて相手を撃つ隙を探る事を放棄する事にした西坂だった。



~【笹木視点】~


 (と言ったものの)


 通信を切って、その上で彼の冷徹な部分が冷静に判断を下す。

 そう長くはもたないだろう、と。

 一対五。

 無理だ。そう、判断を下す。

 如何に相手がまだ思考ルーチンの単純なままの「悪魔」で、地上とは違うと言っても厳しすぎる。

 

 (あいつが落ちるまでにこちらが立て直せるかどうか、或いは援軍が到着するかどうかが勝負だな)



~【再び西坂視点】~


 などと思われているとは知る由もなく、いや知った所でどうにもならないし、「実際そうなりそう」と認めるかもしれない。それだけ状況は辛い。

 ゲームでも ソロで相手が多数の場合、おまけにこっちに範囲攻撃があるならともかく、単体攻撃かそれに近いようなものしかなければ倒すのも大変。更に更に加えるなら、倒した所ですぐに補充されるという最悪の状況。

 おまけに味方の先輩達は既に落とされ、地上からの支援砲撃も途絶え孤立無援。

 これで単体でもどうにか出来たら、世界史に名を残すかつてのウルトラエースにでも並べるんじゃなかろうか?

 そもそも、西坂が未だ何とかもっているのは間違いなく彼の【オーガニック】の飛行能力のお陰だ。

 重力ではなく、慣性制御までくっついているお陰で、彼の体にはGの負担がかかっていない。これに「お得セット」の一つマッサージ機能が合わさり、肉体的な疲労を極端なまでに押さえ込んでいる。実際、落ちた先輩達は肉体面の疲労(そりゃあ激しい空中機動を行う度にGが体にかかってれば当り前だが)が溜まって落ちたようなものだ。

 それでもカバー出来ない程に精神的な疲労が溜まってきている。

 右から。

 かわす。

 斜め前から突っ込んでくる。

 かわす、側から新たな「悪魔」が突っ込んでくるのに気づく直前で回避の方向を変える。

 その繰り返しだ。

 数の暴力という言葉がある。

 一対一では無敵でも一対二では?三、四と増えていけばどうだろう?

 有名なランカスターの法則というものがある。同じ性能、同じ腕の者同士が戦った場合、計算上はどうなるかというものだ。

 例えば、100人VS90人の場合、僅か10人しか数では違わずとも、この法則に従えば100の2乗マイナス90の2乗、それを√すると、43.58…すなわち、90が全滅した時、100の側はまだ43人が元気で残る、という計算になる。

 無論、まともに戦えば現実には戦術や環境、武装次第で幾らでも結果は変わるものだが、それだけ数というのは脅威という意味だ。

 そして、結果として遂に破綻が訪れる。

 二体の同時攻撃を懸命に回避して……眼前に突っ込んでくる別の「悪魔」がいた。

 逃げ道が塞がれて、更に包囲するように残る「悪魔」も迫ってきて……一瞬が凄まじく引き伸ばされるようなそんな感覚の中、それでも平面である大地とは異なる三次元の空中のどこかに逃げ道がないか必死に探って、そして……。


 落ちた。


 いや、撃墜されたのではなく、文字通りの意味で下方に本来の重力も味方につけて猛烈な加速でいきなり落ちたのだ。

 最高速度で真っ直ぐ走っていた車がいきなり姿勢そのままに進行方向を真横に変えたようなものだった。

 結果として、五機は衝突し、そこへしこたま撃ち込まれた銃弾で次々と爆発する。

 が、西坂当人もそのままダイブを続ける。

 撃破した事で待機していた中から新たに五機の「悪魔」が追ってきたからだ。

 速度を調節し、追ってくる相手を引き付ける。

 背面から落ちていく西坂の【オーガニック】、彼の目の前には次々と迫り来る「悪魔」の姿が次第に大きくなってくる。僅かに「悪魔」の方が速度が速いという事だ。

 

 (……飛行方法は、っ、あいつらはこれまで通り……!)

 

 左右に僅かに動かし、相手の砲に光が灯れば、回避する。

 背後の光景は見ない。見たら怖いから。

 猛烈な速度で迫ってくる地面なんて普通は見たいはずがない。

 

 (高度五十、四五、四十……二十、十五、十、五!今!!)


 凄まじい勢いで吹っ飛ぶ高度計をひたすらに信頼して動かす。

 ……その光景をもし、旧時代のパイロットが見たら、いや、大抵の人間は今でも目を疑うだろう。仰向けに落ちてきた【オーガニック】が地面すれすれでいきなり地面と平行に動き出したからだ。それもそれまでの勢いを保ったまま……。まるで、地面の方向がその瞬間にそちらに変わったように、いや、実際西坂の【オーガニック】にとってはその通りなのだが。

 結果として、ギリギリまで迫っていた「悪魔」達は最早引き起こしも出来ずに次々と地面に高速で激突し、爆散する羽目に陥った。


 「……し、心臓に悪い」

 

 まだ若いのに寿命が縮みそうだ。

 ほっと一息ついた瞬間。

 機体が激しい振動に揺れた。慌てて、高度を上げる。

 

 「!右肩破損!?右腕作動不能!?って……しまった、地上に近すぎて……」


 地上の悪魔がこちらに攻撃してきたらしい。

 ある程度以上高度を上げた事でこちらへの関心を地上の「悪魔」達は失ったらしいが、代わりに新たな「悪魔」が再び補充される。

 ますます悪化した状況に引きつりながら、西坂は命をかけた鬼ごっこを再開した。  

慣性制御ってチートです

体への負担が減って、正にゲームセンターにあるシミュレーションゲームみたいな感じで動かせるお陰で未だ生き延びてます

Gかかりまくってたら、とっくに落ちてますね、思考能力も落ちますし


西坂:撃墜10追加で更に50ポイント追加

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