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 『救援を!早く救援を!!』


 無線からがなり立てる声が聞こえる。

 オーガニックの割と便利な簡単に取れる、そして必須と言われる能力に「無線機能」がある。

 機械で代用出来ないのかと思うかもしれないが、オーガニックのそれはある種の精神感応であり、自動翻訳機能を持っている。多少複雑な指示でも精神感応故にすぐに理解出来るし、他国の部隊と合同で動いても言葉の問題が発生しない。おまけに通常の地球の機械を用いた通信機とも上位互換してくれる。

 本当に至れり尽くせりの機能だと言っていい。


 「現在そちらに向かっている!あと二分持ちこたえろ!!」


 隊長の声が聞こえる。

 それを聞きながら、ちら、と地表に視線を向ける。

 そこには幾つもの白い塊……。

 オーガニックを得たとしても誰もが戦える訳じゃないし、そんな事をやってていい訳がない。戦争っていうのはただ消費するだけの行為だ。オーガニックのお陰で武器類の損耗はかつてと比べれば相当にマシだが、オーガニックだって万能じゃない。機能を成長させるにはポイントが必要であり、ポイントを稼ぐ為には戦う必要がある……。もちろん中にはそうやって稼いだポイントで高い空中や地中、水中移動能力と輸送能力を得て比較的安全な後方に回る要領のいい奴もいる。

 けど、大抵の奴は戦闘能力の強化を選ぶ。そっちに全力で回した方が生き残れる確率が高まるからだ。

 だから、軍だけに絞っても後方支援の主力はオーガニックではなく、通常の車両や輸送機、列車に艦船だ。

 これらを動かす人材だけじゃない。後方支援で事務を行う人間の下っ端ならともかく、ある程度以上に上にいけば、大抵はその方面のスペシャリストだ。いなくなったからってそうそう代わりがすぐに出るような人材ではない。

 軍だけに絞ってもこれだ。

 政治、外交、食料生産、医療、研究、経済……戦争の膨大な消費を支える生産があって初めて成り立つ。

 当然、そうした人間は戦わない。戦わないからポイントも稼げない。

 じゃあ、どうするか?それが眼下の白い塊の正体だ。


 『シェルモード』。

 オーガニックに最初から搭載されている機能だ。そして、ポイントを稼いで一度でも成長させたら自動的に消える機能でもある。

 要は殻に閉じこもって隠れている為の機能、そう言っていいだろう。

 とはいえ、これだって無敵の機能じゃない。

 かつてこの国には「平和」を叫び、「戦争反対」を叫んだ連中がいた。彼らは神々と戦闘を行う政府と軍を批難し、相手が攻めてくるならシェルに篭って終わるまでじっとしていればいいと主張した……。

 

 今ではそんな奴らはいない。

 原因は至極単純、それが上手くいかないと身をもって説明した連中がいたからだ。

 いや、結果的に、なんだけどさ?

 今では有名な話だけれど、そういった連中が多かったある地方都市で、そういった連中の一人が首長となった事があった。

 この首長、自分達の意見が市民に認められたと誇った訳だが……彼は無防備都市宣言を出して、軍の戦闘行為を拒絶した。本来地方自治体によって勝手に行われる宣言は国際法の上でも意味は存在しないとされている訳だが……この時中央都市がマスコミが散々に賞賛して政府を叩いた事から最終的に追認する形となり、軍は都市外に撤退した。

 さて、この無防備都市宣言。

 基本はその地域から全ての支援活動も含む軍事行動を放棄する事で、軍事的価値をなくし、結果として攻撃による損害を最小限に抑えよう、というものな訳だが……。

 無防備都市宣言は人類同士の戦争でも実際には幾度となく破られている。

 加えて、相手は神々を名乗る、人類とは異なる集団の配下たる悪魔達。

 彼らの襲撃には明らかに単なる軍事的価値による攻撃とかは考慮されていない。そんな相手に「無防備都市宣言」を出したから、彼らは攻めて来ない!と断言出来る訳がない。


 結果から言えば間もなく都市は襲撃を受け、軍が幾度となく迎撃に赴く、或いは救援の為に無防備都市宣言の撤回或いは侵入許可を求めて、その地方都市の首長、彼らとの連絡が途絶えてからは中央政府に求めたが前者はひたすら意地か或いは信念かは今となっては分からないが拒絶し続け、後者はひたすら閣議で時間がかかって、最終的に現場指揮官の首を覚悟の上の独断で救出活動を名目に都市への突入を決定した時には既に徹底的に破壊された後だった。

 もちろん、シェルに篭っていた人達ごと。

 よく考えれば当然の事なんだが、オーガニックは神々に与えられたもの。

 そして、悪魔はオーガニックとそこに乗っている人間を殺す事が出来る。

 シェルだってオーガニックが変形したもの、悪魔に壊せない道理はない。

 当然だが、その現実をまざまざと見せ付けられた彼らは震え上がった。

 誰だって死にたい訳じゃない。命を賭けてまで信念に殉じれる人がいれば、それは余程の大人物の宗教家か、或いは頭がおかしいだけだ。それまで連日平和だ、戦争反対だとがなりたて、無防備都市宣言をした彼らを賛美し、中央政府に国を挙げての無防備都市宣言を!と主張していたマスコミや市民団体も一斉にてのひらを返した。

 結果として現在ではそれを主張するのは頭のどこかおかしい連中と見られているのが普通だ。


 ま、それでも戦う側に文句を言う人もいない訳じゃないのが辛い所だね。

 さて、そろそろ戦場だ。気持ちを切り替えないと。


とりあえず3ぐらいまで今日中に投下予定

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