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「ふざけるな!!!!」
おそらく今、この空間は互いの空間が隣接しているのだろう。
見えはしない、けれども全員が同じ会議室や広間にいるようなものなんだ。だから、こうして誰かの叫び声が……いや、ひょっとしたら自分が怒鳴ったのかもしれない。ふとそう思った。いや、誰だって叫びたくなるだろう、この何十年もの間延々と自分達が戦い続けてきたのは、あの瞬間彼女が死んだのは、いや殺されたのはこいつらの、自分達の欲望の為だった……。
何が感情が欠けてるだ、十分以上に欲望にまみれているじゃないか!!
『ならばどうする?』
どうする?だってそんな事……。
『汝らが手にする武器は我らが与えたもの、それをもってどうする?』
……確かにその通りだ。
あの瞬間、あの時から人類全てに突如として【オーガニック】は与えられた。
……与える事が出来て、取り上げる事は出来ないと何故思っていた?
そもそも、彼らに攻撃して傷なんて与えられるのか?
一度止まってしまえば、際限なく思い浮かんでくる……。
神々、こう呼ぶのも今では腹立たしいが、彼らの声の調子もまた……自分達の気力を削る。
見下し、あざ笑うような声ならまだ気持ちを奮い立たせる事が出来るだろう。だが、違う、彼らの声はあくまで淡々とした……事実を告げる声。そこには感情など込められていない……奴らにとって自分達は本心からの感情を向ける意味さえないだけなのではないか。そうとさえ思ってしまう。
『帰りたまえ。何時か君らも新たな階梯を昇る事を願う』
『さすれば我らの願いも理解出来よう』
……畜生、理解なんかしたくねえよ!
歯を喰いしばって、心の内で叫んだ瞬間だった……。
『なんだ?』
『これは、反対しておった者達か?』
?何だ、妙だ、あり方が変わった?
変わっていないように見える、見た目には。けれど、先程まで雲か霧のような印象だったものがソフトクリームに変わったというか、とにかく触れなかったものが触れるようになった感触というか……。
そう思った時、意志が流れ込んできた……。
……そうか、魔王級を置いてた神々なのか。
いや、神々と名乗る目の前の連中と対立しているのなら、彼らこそ真の悪魔って呼ぶべきなのか?
彼らは目の前の神々と逆……停止するというのは彼らからすれば死ではない。ただ、自然と同化し、あるがままに溶け込むだけ……生きるだけ生き、それに飽いたら自然へと還る。それを願い、進化前の種族を巻き込んで自らの存在の延命を果たす事を願わなかった者達……。
だからこそ、魔王なんてものを置いた。
そこで追い払い、神々の下へなど来れなくさせる為に……だからこそ、魔王級は他の悪魔と違い、酷く無慈悲だった。
不確実な方法だって?それは仕方がない。
彼らはもう自我が消えかかっているのだ。まだ自我と呼べるものを持ち、はっきりした意志でもって俺達を誘導していた神々、薄れぼんやりとした消えかかった意識でそのまま消えてゆく事を望み、僅かな意志を神々の悪魔という道具に載せた者達……前者に比べ、後者の意図がはっきりしないのは当然だ。殆ど寝言で命じたようなもんなんだから。
ただし、力は向こうの方が上。
ぶっちゃけた話、彼らからすれば……「うるせーな、眠いんだよ!!気持ちよく寝てるのに耳元で騒ぐんじゃねえ!!」って事らしい……というか今、停止とか言われてる神々の同族殆ど全員が相手……いやまあ、わからないでもない。そりゃあ、気持ちよく寝てる所にドンドコ煩く騒がれたらどうだろう?……うん、自分も機嫌が悪くなる確信がある。機嫌が悪くなるだけで済めば御の字で、中には怒鳴り声を上げたり、場合によっては文句を言いに言ったりする人も出るだろうな……。
かくして、圧倒的多数の住人、幾ら寝てる、ならぬ停止してるとはいえ向こうの方は同族で圧倒的多数なのだ。
……そうだな、これも分かりやすく言おう。
大勢の人達が寝てる所で少数の起きてる連中があんまりにも騒ぐもんだから、とうとう寝てる人達が怒って皆でそいつらを部屋から叩き出した、と……。
お陰で、俺達の【オーガニック】に干渉も出来ない、手に届く所に放り出された……どうやら「後は勝手にしろ、自分達はまた寝る」って事らしいな……。
……うん、まあ、何と言っていいのか分からない。
分からないが……。
「とりあえず……思いっきり八つ当たりさせてもらおうか……!!」
という訳で……
魔王の反応が他と違うのと、中途半端な対応はこういう理由でした
誰だって気持ちよく寝てる時に傍で騒がれたら怒るよね……
或いはうとうとしかけてる時に部屋の中で騒がれたら……うるせえ、迷惑だやるなら外でやれ!!って追い出したくもなります




