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艦載【オーガニック】隊の出撃を司令官らも確認していた。
彼らの顔は一様に渋い。
現状判明しているだけで死傷した者の数は全体の三分の一近い。
それは戦闘に大幅に支障を来たすという意味でもある。
事実、出撃する機体の数も相当目減りしているのが分かる。
「……ベテランの責任者が無事なのが救いか」
そう司令官が呟いた時、被害を集計していた参謀達が少し揉めているのに気がついた。
「どうした?」
「……いえ、まだ確実ではないのですが」
揉めているといっても別に喧嘩している訳ではない。ただ単に議論というかふと参謀の一人が気づいた事が首を傾げるものだったからだ。
すぐに司令官に参謀の一人が答える。
「構わん。判断材料にはなるだろう」
「承知しました」
司令官の言葉に参謀は即答。
まあ、彼らも実戦を経験しているから司令官が「確実じゃない情報」と認識した上で聞くと決めたのならば止めるような事はしない。
確実じゃない情報を確実と判断してしまったりするのは拙いし、或いは確実じゃないのなら今はまだ聞かないという選択肢もあった訳だが。
そして、話を聞いた司令官は参謀達と同様悩んだ顔を見せた。
が、それも一瞬。
すぐに頭を切り替える。
「それが本当ならこれまでの行動は何だったのか、という事になるな」
「或いはそこに神々の思惑が絡んでいるという可能性も高いです」
そして参謀の推測は的中している。
尤も、未だその詳しい内容を知るはずもなかったが……。
参謀達が不審を覚えたその内容。それは今回傷つけられた者達がいずれも恋人を持つ者達であったという事……。
そして、両者が倒れている例は皆無であるという事。
これが判明したのも彼らが密かに恋人関係が成立したと分かった者を密かにチェックしていたからだ。無論、デバガメなどではなく前に記した通り、恋人がいる場合といない場合では、悪魔による死亡率が違っているという数字あっての事だ。
だが、今回、おそらくは神々直々による攻撃ではその逆が起きた……。
これではまるで……。
「怒らせるのが目的?」
ぼそり、と誰かが呟いた。
確かにまるでそうとしか思えない行動。
恋人や夫婦とて時が過ぎれば冷める関係もある。熟年夫婦と呼ばれるように絆を強め、寄り添う関係の夫婦もいれば、冷めて憎みあう関係に陥る夫婦だっている。そうでなくとも、最初の熱い関係をずっと維持し続けるのは難しい。どんなに熱く熱した鉄であっても、何時かは冷たく冷えるものだ。
しかし、今は違う。
命がかかった戦いの最中、密かに煽った成果もあって、この短期間に一気に恋人関係になる者は増えた。
一部の恋人関係を維持している者達を除いた大部分は人類にとっての最終決戦という題目を前に、自らが死ぬかもしれないという可能性を前にその生存本能が派手に燃え上がった面が多々ある。人はそれを「吊り橋効果」と呼ぶ。一説には不安による動悸の乱れを恋のそれを勘違いするとも言われるが、そこには子孫を残そうとする種としての本能も混じっているはずだ。
まあ、今はそれはどうでもいい。
確かな事は、殆どの者達の恋は未だ冷めてはいない状態にあったであろう、という事実だ。
高温に熱く熱された鉄にいきなり冷水をかけるとどうなるか?……まあ、盛大な反応が起きる事は予想がつくだろう。
その激烈な反応が今、恋人をいきなり害された彼らの中でも起こっている。
普通ならばやらない。誰だって話をしようという時に、相手を怒り狂わせるような真似はしない……では話すつもりではなかったとしたら?
いや……話す必要がないのだとしたら?
そんな彼らの視線の先では、この状況に及んでさえ動かず侵攻を止めようとしない悪魔達が整然と並んでいた……まるで儀仗兵のように……。
先に断っておきます……
ハッピーエンドとは言えない終わり方になると思います
バッドエンドとも言えませんが
申し訳ありません。まあ、ハッピーエンドな話を外伝か何かで書くかもしれませんけれど……




