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次回より学生編
世の中強けりゃいいってもんじゃない。
その事を少年は深くかみ締めていた……拳骨を喰らってじんじんする脳天と正座しっぱなしで痺れてきた足に誓って。
空間断層。
確かに強力な武装であった。
だが、大きな問題もあった。
射程という面はある。所詮は剣であり、軍の一番一般的な戦闘は射撃戦。とはいえ空中戦はそこまで整然と列をなして、みたいな戦いではない。格闘戦武器を使う機会は案外多い。かつてのミサイル戦闘から再び有視界のドッグファイトが一般的になっている点も大きい。
何せ、ミサイルみたいな装備をつけられる機能もあるが、そんなもの誰もが持っている訳ではない。真っ直ぐ飛ぶだけのロケットならともかく、相手を逃さず追尾するミサイルは高いのだ、というか性能が高すぎるというか、オーバースペックすぎるというか……。中身は明らかにやり過ぎ。【オーガニック】のミサイルとは地球上で使うようなものではないのだ。
話を戻すが、では何が問題なのか?
それは彼らの前に転がっている太いオリーブドラドの腕が示している。
つまり……練習が出来ないのだ、【オーガニック】を使った。
何しろ、空間ごと何でもかんでもスパスパ切り落としてしまう為、帰ってきた父に頼んで訓練をつけてもらおうとしたら……コレである。
模擬戦の開始!
父は踏み込んで顔に拳を突き出してきた!
息子は思わず両手で顔をかばった!
父は直前ギリギリで止めるつもりだったのでそのまま拳を突きこんだ!
空間断層に接触した!
接触した父の機体の腕が切れた!
という訳だ。
幸いなのは【オーガニック】の場合、時間があれば再生する事だが……。
それでも腕をスパ!とやっちゃったのはやはり拙かった。
「……あーまあ、これからは生身で訓練するか、何か適当な棒なり用意してからにしよう」
「……先に判明した時点で良かったとしようじゃないか、うん」
よし、の合図をようやくもらった弘智が足の痺れに悶えている横で、両親はそんな話をしていた。
核兵器が抜かずの刃となったのはその威力が強すぎるからだった。
武器もまた同じ事。
おまけに試してみて判明したが、威力を弱めるという事が出来ないようなのだ、これが。長さを変化させる事は出来た。けれども高速振動剣と違い威力を低下させられない。高速振動剣はその性質上、高速振動を停止させれば単なる剣でありナイフだ。【オーガニック】同士でやりあうならそこまで深刻な事にはならない。というより、通用するようにさせるには高速振動させる事で破壊力を大幅に増大させる必要があるのだ。
けれど、空間断層は違う。
そこで空間が断絶している為に、触れた瞬間に抵抗すらなくスッパリ!だ。
実は実験で試しに、高速振動剣を起動させて触れてみた。
先端が綺麗に落ちた。
ビームサーベルを作動させて突っ込んでみた。
突っ込んだ先が消えた。
後は試すまでもない。
もし、これが学校に行って、試合でもやらかしたらどうなるだろうか……?
相手が受けていなそうと考えた教官でも駄目だ、そのまんま【オーガニック】が縦か横かは分からないが綺麗に二つに切り分けられる事は間違いないだろう。
学生相手だともっと悪い。どっちも腕に大差なければお互いに熱くなって全力でぶつかりあうだろう。そんな中で空間断層を使おうものなら……【オーガニック】のバラバラ事件が起きかねない。
「学校にもちゃんと伝えておきましょう」
「……そうだな、そうしよう」
事情を知らないだけならともかく、それでも強要するような馬鹿がどうなろうが知った事ではないが、それで息子が落ち込んだり責められたりしては納得いかない。
説明しておけば、学校側でもちゃんと配慮してくれるだろう。
「……けど、今年の学校は」
「……色々と騒動起きそうだな」
とりあえず、生身で訓練する為に道具を準備しておくからそれまでランニングをしてくるよう命じた二人は準備をしながら、今回見た新入生の情報を思い出していた。
通常は入学前にポイントを稼ぎ、強化を行っている者はいない。これは権力者や大金持ちの子でも、だ。なぜなら、ポイントを稼ぐという事はどう言いつくろおうが、どう安全に配慮しようが戦場であり、そこには常に不測の事態が付きまとう。
ましてや、どんな場所にどれだけの戦力が現れるかなど全くの不明なのだ。
必然的に息子を放り込むのは何が起きているか分からない戦場になる。実際、かつてある独裁国家のトップが息子に箔をつける為に戦場に精鋭の近衛師団と共に送り込んだが、『名つき』の奇襲を受け部隊諸共全滅した、という話すら存在している。金や権力で何とかなるなら可能性もあるだろうが、生憎相手は金でも人の世界の権力でもどうにもならない『神々』の尖兵たる悪魔が相手なのだ。
そう、それが前提だというのに……今回の新入生は既にポイントを稼いでいる者達が複数存在していた。
とはいえ、少し前の西坂夫婦は自分の息子は軍人となるべく体を鍛えてはいたものの、【オーガニック】に関してはごく一般の人間と変わりない、と思っていたのだ。それが限定品の装備を入手し、強化された状況で入学する事になった……。
「……どうなる事やら」
「まあ、なるようにしかならないんじゃない?」
身も蓋もない意見だが、同感だ、と思った父であった。
『現スキル』
【パッシブ】
・外部記憶機能
【アクティブ】
・飛行機能:重力制御/慣性制御
・探知機能:Lv2
・空間断層
レンジ:Lv2/数:Lv2
・マシンガン
パワー:Lv2/数:Lv2
機体性能変更点:装甲強化
その他便利機能(エアコン他)
【残/総ポイント数:5/310】
※本日、成長なし
※残ポイント昨日のを間違えていたので修正
ちなみにお父さんは地上部隊の砲兵大佐なので白兵戦は専門じゃありません
もちろん、軍人さんなのでそこらの面々とは比べ物になりませんけど
【オーガニック】本体より巨大な主砲を持ち、展開すると本体自体が砲を撃つ為のパーツとでもいうか……そんな感じになります
近接への対応はマルチランチャーとガトリング砲ですが、周囲を基本は護衛部隊が守ってます。重くないのかって?どんなに武器がでかかろうが、其れも全て【オーガニック】の一部なんです
でかかろうが、腕を動かすのに支障はありません
一見すると「それあっさり逃げられるんじゃ?」と思うかもしれませんが……賢い頭脳を持った散弾やひたすらついてく追尾弾など色んな弾丸を切り換えて使用します
その父と、空を舞う母の出会いは…その内外伝で書きたいかな




