三時間目
「えー、これに基づき我が学園は・・・」
ギリギリ集合時間に間に合った僕と火音は『何してたのよ』って感じの視線を向けてくるミヨにゴメンのしぐさだけをして指定の列に入り、今は校長先生の話を聞いている。後でミヨに全力で謝ろう。
「そういえばさっき校長先生と火音は何を話してたんだろう・・・後で聞くか」
前にいる火音に聞こえないよう言ったつもりだったのに
「教えないよ。あれは僕の問題だ、誰にも言いたくない」
火音が低く小さい声でそう言った。
「ききき、きき、聞いてたんですか」
あまりのハプニングに舌がうまくまわらない。
「聞いとった、よりは聞こえたやな」
「耳が良いな」
なんて思えない、むしろ頭がハプニングで真っ白になっていると校長先生の話が終わった。
「おっ、ようやく終わったか。話長すぎやあいつ」
と火音はいつも通りに、何も無かったかのようにつぶやいた。
「静かにしろ、一年ども、蹴散らすぞ」
と、聞いたことのある声がしたので意識をそちらにやった瞬間、僕は凍りついてしまった。もちろん本当に凍ったわけではない、動けなくなってしまったのだ、あまりの恐怖感に。
我に戻り、周りをキョロキョロしみる。
驚く人の数・・・0
「私は生徒会長の剣崎 香織だ」
声がして考えてみる。
「ききき、きっと、みみ見間違いかもしれない、きっと、そそ、そうだ」
もう一度その少女を見てみる。
彼女は横の先生と比べてみるかぎりおそらく身長155cmくらいだと思う。
そんな彼女は今現在自分の身長より大きく、彼女の肩幅ほどある大剣を地面に突き刺し、それにもたれかかるようにして立っているのだ。
「マイスターはもちろん勇者をしている、リングは『我狼無双』を組織している」
何かリングやら勇者やらよく分からないことを言っているがそれは後で聞けばいい、今の問題はあのだ。
「以上挨拶は終わりだ」
そう言って生徒会長様は大検を引き抜き、某マンガのガキ大将がバットをかつぐかのように肩にそれを乗せ、右手で落ちないようにしっかり持ち去っていった。
「武帝学部の1年生諸君は各自、自分の教室に行き、それ以外の生徒は総合体育館で入学式を正式に行うため、まとまって行動するように」
そう言われて周りの生徒が武帝学部の校舎がある方に歩いて行く。
その中でキョロキョロが1人、あきらかに遅れているそのヘタレを1人の女子生徒、つまりミヨが腕をつかみ、呆れ顔で無理やり引っ張っていく。
「あのくらいの武器見たぐらいでビビッてどうすんの、この先あんなのをあんたも持つんだから」
ミヨは周りに聞こえないようにボソボソと言う。
その後は何も言わずに廊下のほ方へ腕を引っ張られながら歩いて行く。
「まぁーでもあんたはビビリだから遠距離とか中距離の・・・そうね銃火器とか弓矢を使いそうね」
廊下に入った途端ミヨがいつもの声量でいきなりのプライド侵害攻撃を仕掛けるが、当然僕は(お前も結構なビビリだろ)なんてのは心の声だけにしておく。
「でも意外とこういう奴が勇者のアビリティー取っちゃったりするんだよねー」
いつの間にか火音も隣で一緒に歩いてようだ。
「あ、あの、あの人の剣見ても、お、おど、驚いたりしないの」
まず自分が一番気になったことを聞いてみた。
「あ~、武帝学部って剣やら銃やらを使うところだからね~、まぁーちょっとずつ慣れていきな」
火音の優しい声が僕の体中を感動させたのとほぼ同時にミヨのダメだしが炸裂。
「火音君だっけ?いきなりこんな事言いたくないけど、火音君は甘すぎ、そんなのじゃこいつのビビリは治らないわよ」
ミヨの前に火音の言葉があったせいか自然と反逆の言葉が胸に浮かぶ。
(いや別に治さなくていいし)
しかし言葉にはできない。
(なんて思ったのは心の引き出しにしまっておこう)
なんて思っていると
「どうしたの珍しく何か考えた顔して、もしかしてそれは私への反逆が生み出した顔?・・・なわけないか」
と言ったミヨが言った。
自分の心を見透かされる気さえするほど的確な言葉に焦る僕を置き去りにして『ハッハッハ』と高らかに笑った。
「危なかったね」
火音が僕の耳元で囁きドキッとした。心臓が飛び出るほど。
飛び出そうな心臓を押さえ込み再びミヨたちと合流する。
「も、もう、一つ、いい、いいかな?」
「何が?」
ミヨはホントに分かっていないようだったので、
「質問を」
と簡潔に答え、ミヨが『まだなにかあるの?』と怒り気味に言おうとしたのを火音が
「なんだい」
と一言で遮る。
(ホントに良い人だ)
と思った。
「りりり、リングについて・・・」
ミヨの気迫に押され『り』を3つも多く言ってしまった。
「リングってのは勇者のアビリティーを持つ人間だけが作れるグループみたいなもんだね。武帝学部は毎年年度終わりに『リング成績選』と言う各リング1年間の成績を各教職員につけてもらって、その得点を争う大会があって、その大会で優勝したリング員は全員『絶対進級特許』てのが貰えるからほとんどの生徒はどこかのリングに入って優勝を狙ってるんだ」
とても分かり易い説明に圧巻している暇も無く、
『じゃあ勇者って何だよ』
と言う心の叫び。
「ごごご、ごめんな、さい、ゆゆ、勇者って?」
質問を一つ追加してしまったという罪悪感で目を見れずウヂウヂしていると、
「勇者ってのは・・・
親切ご丁寧に返事を、それも笑顔でしてくれている事に思わず感動を覚えている間にも説明は進む。
・・・簡単に言えば剣術使い見たいなもんだよ、まぁーでも勇者って生まれつき剣道とかが強い人間がなったりするから心配ないと思うよ。」
「勇者って1人1つずつ剣を使って出す特殊能力があるって聞いたけど、あれは?」
ミヨも詳しくは知らないようだった。
「使えるらしいね。僕は勇者じゃないから知らないけど。見たことも無いし」
おそらくどうして火音は自分のアビリティーを知っているのか気になっただろうが、スルーしているので僕もそうした。
「ここが俺らの教室やな」
1枚の扉の前で立ち止まる。そこには
『1-2 武帝学部』
とだけ書かれており、隣には1-1があった。
「さて頑張って女子の顔と名前覚えるかな」
火音の軽い本気交じりのボケに
「あんたって結構なバカね」
ミヨのキツイめのツッコミが入る。
『ガラッ』
いくら有名な私立学園といっても教室のドアを開けるときの音はこれのようだ。
「教室のドアの音これなのね」
ミヨがボソッとした呟きを全身で同感した。
「席指定だってさ」
火音が残念そうに言う。
「メンドクサー」
こっちもそうとう残念そうだ。
早速前から教室に入り、教卓に置いてある座席表を見て、自分の名前をさがす。
「あっ、あった」
火音が1番に見つけたようだ。
「どうやら出席番号順みたいやな、俺とマサが席前後だし」
「ほ、ほんとだ」
確かにその通りだった。
「そうね」
ミヨの機嫌が悪そうだったので顔を見てみると、ヤバイ結構不機嫌だ。
「どどど、どう、どうしたの?」
勇気を振り絞って聞いてみる。
「何でも無い」
そうとだけ言い残して自分の席に行ってしまった。
「マサがいけなかったか・・・それともせきか・・・」
何か火音がブツブツ言っていて、それに自分の名前がたびたび登場することはさておこうと思った。
「結構皆早かったんだな」
確かに、気がつかなかったが、すでに結構な人が自分の席についていた。
「ぼ、僕たちはしゃべりながら、き、来たから」
「確かにそうだな、女子の顔覚えるのにはラッキーだな」
火音は心底うれしそうにキョロキョロしていた。
「は~い席に皆着いてね~」
いきなり酔っ払いっぽいしゃべり方の女性が入ってきた。
「私は~このクラスの~担任を~持ちます酒刃 瑠璃子っていいま~す。皆よろしくね~」
するといきなり、
「身長179cm、バストはFカップ・・・さすがだ」
後ろの席から声がした。
絶対にこの瞬間でそこまで解析した火音の方がスゴイと思った。
「早速~みんなの顔と~名前を覚えるために~出席を取りま~す」
するとクラス出席番号1、学部出席番号1の逢鍬君から順に出席の点検が始まった。
更新遅くなってすいません><
もっと早くなるように頑張りますので
応援よろしくです^0^