・切なくとけるキャラメルガナッシュ
口に含めば、長くそこにとどまることなく蕩けてしまう、キャラメルガナッシュのように、甘い香だけを残してとろけた、短く、切なく、淡い恋。
そんな恋愛小説をどうぞ。
貴方の笑顔を見るだけで心が跳ねる。
目があった、それだけで動揺してしまう。
これが恋か、そう気付くことができたのはたった数時間前だったのに。
どう、して?
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「おいっ透聞いてくれよ」
「翔」
誰もいない、放課後の図書室に飛び込んできたのは、幼馴染で……私の、大切な想い人。
やっと自覚することのできた甘い感情。
「どうしたの?何かいいことでもあった?」
「聞いて驚け、さっき告白されたんだ!彼氏になってくれって」
(え?)
今聞いたばかりのことが頭の中でぐるぐると渦巻くけど信じられない。
「やっと彼女なし組から抜けられたよ、そうだ、お前は?」
(信じたく、ない)
嘘に決まってる、いつも通りの、きっとすぐ、だまされた?って聞いてくれる、そうにきまってる!
だけど分かってる、これが嘘じゃないことも、……翔がすごく喜んでいることも。
「まあ、別に無理強いはしないけど、好きなやつくらいいないの?」
いるよ、私の目の前にいる!
思わずそう告げてしまいそうになる。
「ま、お前のことだからいても片思いのままで終わってそうだな」
翔が話しかけてくるたび心が壊れていく。
(もう、耐えられない)
こらえていた涙があふれて、握りしめたこぶしの上に落ちた。
限界だった。
苦し過ぎて、心が痛すぎて、とうとう翔の声が聞きこえなくなる。
まるでお前は空気だとでもいうかのように、すべての色や音が私を通り抜ける。
翔はいつの間にこんなに大きな存在になっていたんだろう。
(まだ、好きなのに……)
胸をえぐるような痛みが私を飲み込む。
(こんなに、好きなのに……)
翔がいることすら忘れて、ひたすら、ひたすら泣く。
どれぐらいの時間泣いていたのかな不意にトン、と温かい何かが背中に触れた。
のろのろとそれの方を見あげる。
とたん、微妙な表情をした翔に頭をわしわしとかき回された。
「なんで泣いてるのかは聞かないから、今のうちに思いっきり泣けば?」
言い方こそぶっきらぼうだったけど、いつものように翔は優しい。
でも、今の私にはそれすら苦い。
服の袖で乱暴に涙をぬぐい、今の自分の精一杯で強がって見せる。
もう、翔には甘えない。
「へいき、だよ?だいじょうぶ、ホント、なんでも、ないから」
かみしめていた唇をにィっと引き上げて、笑って見せる。
ちょっと、一人になりたいから、と言って翔を図書室から押し出す。
ひとりになった途端、こらえていられなくなった。
手を口に押し当ててこぼれる嗚咽を押し殺す。
まだ鮮やかに色づいている翔への気持ちを、
生まれて初めての恋を、
全部とかしてしまえるように、そう願いながら泣いた。