次の行き先の選定
「ダンジョンって不思議な空間だな……なんで質量を伴ったモンスターがポンポン生み出されるんだ?」
「俺も正確にはわからないけど、幾つかわかることがある」
山本の問いかけに、俺なりにここのダンジョンが行なっている仕組みについて説明する。
まず他の地域では町の外ではモンスターが湧き出す。
町はモンスターの強さが弱いとこに優先して建てられて、モンスターが入ってこない結界を作ることで、町の中にはモンスターが湧かなくなる。
けれど、ここの国ジパングは、湧き出す場所をダンジョンの中に限定することで、国内にモンスターが湧かないように制限している節がみられると、俺は言う。
「抑制するか、湧く場所を限定化するの違いか」
「そう、それでもなぜ宝箱がドロップするのか、階層ごとに出てくるモンスターがなぜ違うのか、そもそも何を触媒にしてモンスターが生み出されるのか……とかは謎だけど、古代人のアリスの時代にもモンスターは居たらしいから、この世界の仕組みって言ったほうがいいかもしれないけどな」
「なるほど……」
ただこれはあくまで俺の仮説なので、どこまで正しいとかはわからないけど。
「さてと、ホワイトマンを捕まえたことでやれる事が増えたんだよなぁ……どうしようかな」
「なにに使う気だよ」
「1つはゴーレムとかの性別が無いモンスターやホムンクルスみたいに片方の性別しか居なくて繁殖できなかったモンスターを繁殖できること、他の使い方は……まぁ後々のお楽しみで」
「ふーん」
やれることは沢山ある。
まぁぼちぼち使っていくことにしよう。
70階層の地図埋めも山本がいたことでスムーズに行うことができで、1日で6割を埋めることができた。
これ普通に歩いていたら1週間は掛かってそうなので、罠を無視できるクリエイティブモードと幽体万歳である。
一仕事を終えて、ホノカ亭に戻ると、早速東條が皆に算数や簿記のことを教えていた。
なんだかんだ皆頭いいのでついていけているっぽい。
「じゃぁ今日の授業はここまで」
「「「お疲れ様でした」」」
ちょうど授業が終わったらしく、皆休憩に入っていたので、お疲れと皆に声を掛ける。
「山本は簿記とかわかるの?」
「ああ、わかる。高校大学がエスカレーターだったから、大学入試にあたる時間に運転免許とか役立ちそうな資格は親に言われて取ったな……あーそっか、生き返ったから親にも会えるのか」
「会っておく?」
「いや、死んだ人間が生き返ったって信じないだろうし、1年経ってるからある程度割り切る事が出来てそうなのに……再び顔を出すのはなぁ……」
「それでも会いに行ってきた方がいいと思うけどな。俺的には」
「……会いに行ってきて良いか?」
「東條にお金借りて行ってきな」
「……ありがとう斎藤」
その日の夜に山本は東條からお金を借りて、両親に会いに行くのだった。
翌日の夜には帰ってきて。
「母親にめっちゃ泣かれたわ。顔面潰されていたからもしかしたら別人って希望を抱いていたらしくてな。ただ生きていたじゃなくて生き返らせてくれた人がいるって言ったら凄く複雑そうな感情を抱いていたけどな」
「挨拶できたなら良かった」
「数ヶ月に1回顔出すくらいは許されるよな?」
「というか、こっちが受け入れることができそうならご家族受け入れても別にいいけど?」
「それは最後の手段にするわ。うちの家族上と下に兄弟居るから、この世界に呼ぶってことになったら他の兄弟が会いに行けなくなるし」
「……改めてよろしくな山本」
「ああ、こちらこそよろしく」
山本の好感度がぐぐっと上がった気がした。
1週間の休み期間を終えて、今日から再びダンジョンで稼ぐことを始める。
「70階層の下見はしたから、これからの狩場は70階層でいこうと思う。皆それでいいか?」
「「『了解!』」」
とは言っても実際に狩るのはゴーレム軍団とキングスライム軍団で、俺達は部屋の前で待機し、頃合いを見て素材を分別していくだけであるが……。
「実際に戦闘はしないのね」
「これが一番効率が良いし」
山本にツッコミを入れられたが、俺は気にせずにモンスターハウス狩りを続ける。
というかこの部屋は他のメンバーに任せて、俺と山本は近くにある別のモンスターハウスに移動し、モンスターハウス内の時間を加速させて、湧き直しのクールタイムを消滅させる。
部屋の隅に素材回収係のキングスライムを待機させて、山本の気が済むまで裁きの礫連打を行えば、2箇所並列でモンスター狩りができるので、効率も2倍。
俺はどちらも行き来して素材の解体を行っていけば、大量に素材、宝箱、魔石が集まってくる。
「しかも70階層はマジックアイテムだけじゃなくて、モンスターの素材や魔石の値段も跳ね上がる多くの億り人……1回の探索で億シンクを稼ぎ出すパーティーも70階層で狩りをするって言うし……これはもしかして……」
午前中4時間で手持ちのアイテムボックスが全てパンパンに埋まってしまったため、これできり上げて撤収。
やっぱり、湧き時間のクールタイムを無くすとエグいくらいモンスターの素材が集まる。
完全にバグ技だろう。
昼飯をホノカ亭で食べて、午後はどうするかって話をすると、ミンナがじゃぁちょっと付き合って欲しいと呼ばれたので、俺はミンナと一緒に冒険者ギルドに行くのだった。
「さてと、休みの間に冒険者ギルド経由でサイトウの条件に合いそうな場所を調べてきたよ」
「お、助かる」
ミンナには休みの間に、お金が貯まったら魔王軍に押し込まれているけど、逆に魔王軍を撃退したら領地を与える……という条件で冒険者を募っている領主だったり、国だったりの依頼を幾つかまとめてもらっていた。
「候補地は4カ所かな?」
ミンナが条件や立地、魔王軍との情勢などを加味した書類を俺に渡してきたのでめくって見ていく。
1つ目は島国で、魔王軍に占領されている島を解放すれば、その島の領主として認めるとのこと。
2つ目は山の窪地で、同じく魔王軍に占領されている窪地を解放すればそこを領地として与える。
3つ目は魔王領内に前線基地の設営。
4つ目は僻地に魔王軍との戦争で敗れた場合に隠れ住むための場所を切り開いて欲しいっていう依頼が書かれていた。
「うーん、一番曖昧な書かれ方をしているのは3つ目の前線基地の設営……か。というかこれ魔王領内に砦を築いて注意を引きつけるっていうヤバい仕事過ぎないか?」
「まぁそうだけど、人類の勝利を早くできるかもしれないってことを考えると、この依頼かなって一応選んでおいたんだけど」
「安全を考えると4番が魔王軍と接敵しないから一番安全か? で、うまみが少ないのが2番かな? 1番は占領できた島の大きさや資源によるけど……うーん」
「今のところこれらが領地を得られる系だと一番良い依頼だけど」
俺は頭の中で秘境に楽園を作るっていうのも良いけど、島国だったら周りは海だろうから新鮮な魚を手に入れることもできるだろうなとか色々な事を考えた末に、ふと島の依頼をついて条件を再び確認すると……。
「あれ? 何個もの島を解放してもいい感じか? これ?」
「ええ、1箇所とは書いてないわね。それだけ追い詰められているってことなんでしょうけど……」
「ふーん、とりあえず第一候補は島にするよ。ここからどれくらい離れた場所なんだ?」
「北東に2000キロ近く離れた場所に領地があるヤシマ王国ね。海からの魔王軍の侵攻に脅かされている場所よ」
「なるほどねぇ」
ミンナがヤシマ王国の地図を借りてきて場所を色々説明してくれたが、ヤシマは八つの大きな島からなる王国らしく、一番大きな島は北海道くらい、関東くらいの広さの島が3つ、四国程度の大きさの島が4つと日本よりも遥かにデカい国に思える。
気候も温暖で農業用地も広く、交易も盛んだった国らしいが、魔王軍の電撃的な侵攻により4つの大きな島が陥落し、結構ピンチっぽい。
人口も半分以下まで減っていて、国家存亡の危機故に、なりふり構わずにこの様な依頼を世界中にばら撒いているのだと。
「実際履行されるのか?」
「そこまではわからないけど、冒険者ギルドに泣きついている以上、履行しないと今後は依頼を受け付けてくれなくなるから……流石に条件緩和は求められるかもしれないけど……」
「うーん、でも条件は滅茶苦茶良いなぁ……」
実際にお金が貯まってから俺達はこの依頼を受けることになるのであった。
翌日にはスズナリに換金作業をお願いしたが、あまりの素材の量に、他にもギルドスタッフを援軍で呼んでのデスマーチの開始。
言っちゃ悪いが、今日も同じくらいの量回収してくるんだけどなぁ……って思いながら、俺達は再び70階層へと向かう。
あと、俺のレベルは100が上限では無かったらしく、101レベルに上昇していた。
ただレベルの上昇に必要な経験値は案の定、指数関数的に増え続けており、ここからのレベル上昇は大幅にゆっくりになる。
気になるのはまた5レベル刻みで技を覚えるかどうかだけど、なんとなく、もう新技は覚えられないか、覚えられるとしても5レベル刻みではない気がする。
そんなことを考えながら、今日も70階層かつパーティーメンバーを2つに分けて、モンスターハウス狩りを行う。
「ただこうなると……100階層がどうなっているのか気になるよな……ちょっと見に行ってみるか」
俺はクリエイティブモードであれば倒される心配もないだろうからと、100階層に降りてみるのであった。




