第7話 逃走
「リーアも夢を見てたんだな」
「夢?」
「リーアも治療中に夢見たんだろ?」
「えーと……うん、そんな感じだと思う」
「最初に言っておきたいことがある。実は俺、ラーメンという名前じゃなくて、松永って言うんだ」
「ラーメンじゃないんだ。なんでラーメンだったの?」
「いや、なんか、天使に名前を無くされて、ラーメンって名前にされたんだ」
「そういえば、ラーメンって日本の食べ物だよね!!」
話して見た感じ、夢で会ったリーアとあまり変わらない気がする。貴族という話を聞いてから、性格とか全然違うと思ったが杞憂だったみたいだ。
「東京防衛隊の人に連れらて来たんだけど……」
「変な事言われなかった!?」
心配そうな表情でリーアの顔が近づいてきた。相変わらず、距離感が変わっている。
リーアとさっきの東京防衛隊の人は顔も知りなのだろうか、案内するぐらいなのだから、知り合い以外ないか。しかし、リーアが貴族だということはニアから聞いていたが、もし支配者直属の東京防衛隊と知り合いとなると端末で調べても情報が出なかったかもしれないな。
「あ、いや、変な事を言ってたけど、意味が分からなかったから聞き流してて、あまりちゃんと聞いてないよ」
「そうなんだ、良かった。えーと、松永さん……その……さっきの人とはもう関わらない方が良い」
「出来れば、俺も会いたくは無い」
「それで、リーアは俺を呼んだらしいんだけど、なんか話でもあるのか」
「それは……」
視線を左右に向けながら、モジモジしている。
なにか言いにくい事でもあるのだろうか?
「私知り合いとかあまりいなくて、ある人に一緒にいたい人を聞かれて、私の頭の中にはラー、松永さんしか思い浮かばなかったの」
「さんはいらない、松永だけでいい」
『作戦を開始する。皆は配置につけ』
左耳につけているイヤホンから作戦開始の合図が聞こえてきた。
「ちょっと待ってくれ」
「うん」
俺は現在偽の座標を会社に伝えている状態だ。俺の姿が見えてしまったらバレてしまう。
空中に透明なウィンドウが表示され、操作すると、他のメンバーの位置情報が表示された。仲間達は俺達と近い距離にいる事が確認できた。ちなみにこの位置情報だと、俺は秋葉原辺りに買い物していることになっている。
「リーア、少しこの辺りから移動してもいいか?」
「うん」
広い場所で探索したり、標的を抹殺する時は一人一人背後にAIRカメラが浮いており、その写った映像で後方支援や司令官が指示を出す事ができる。写る映像の範囲は大体把握している為、それに合わせて移動しないと行けない。
『標的が移動を開始しました』
俺達が移動したら、その動きに合わせるように仲間達が動き始めた。
「まさか……」
嫌な予感がして俺はリーアの手を掴んで、走る準備をする。
『標的の反応が消失、いや、戻った?』
俺がリーアに触れると、ジャミングがかかり地図から反応が消失した。
東京防衛隊から貰ったカードは人に触れると、その人物も適用されるのか、どういう構造をしているのか俺には全く検討がつかない。
また、リーアの手首を握り、歩き出した。
相手はリーアの位置情報を見ることができなくなり、右往左往している。
『標的を見失った、位置情報をいじっている敵がいるかもしれない、気をつけろ』
隙間を見つけて、その中に入った。
「なんだか騒がしいですね」
「声は出さない方が良い」
「わ、わかった」
リーアはつい声が出てしまったのか、手に口を当てている。
位置情報を開いていた画面から今日の任務内容を確認する事にした。俺の予想が当たれば、めんどくさい事になる。
東京防衛隊からの依頼
任務地域 東京
任務内容 対象の抹殺
失敗条件 時間切れ(支配者から任務の取り下げが行われる)
対象 貴族 リーア・アズベリル
リーアの顔写真が大きく写っていた。
「最悪だ…….」
あの時ニアがリーアが貴族や滞在場所を知っていた理由はこの任務を見たから、あの時俺が任務の内容を見てないと言った時に、呆れていた理由は覚悟も決めないで、リーア抹殺の任務を受けたことを知ったから、俺がこの任務を事前に知っていたらこの場に来ていたのだろうか……。
「やっぱり、知らなかったんだね」
リーアが画面を覗いている事に気が付かなく、驚いて壁にぶつかってしまった。
「今近くで壁にぶつかったような音がしなかったか?」
「聞きました。私聞きました!!」
この声はレイジとヒヨコだ。まずい、しかし、この隙間から出ると隠れる場所はないぞ、
「見た感じ、いないね〜」
「隠れられるとしたら、そこの隙間ぐらいだ」
2人は俺が思っている以上に近くにいるみたいだ。俺がここで、リーアを差し出せば、俺は疑われるが、まだ戻れる段階にあるはずだ。
後ろから俺をの袖をリーアが掴んできた。見ると、今でも泣き出しそうな、不安な表情をしている。
「……」
「……」
俺は構えた。
相手を倒す為に、俺は……。
「うーん、隙間にもいないね」
「本当だ、いると思ったんだけどな」
俺達が見えていないのか。
2人が通り過ぎていく時、2人ともARゴーグルを装着している事に気づいた。電子系だとなんでもジャミングがかけられているみたいだ。
ゴーグルを外したら、普通に見えるはずだから、気づかれる前に俺達はこの包囲網から逃げなければならない。
「私はやっぱり松永さんに迷惑はかけられないよ」
「そう言ってもな、丸腰で行っても殺されるだけだと思うんだが」
「それは……その何とかする……」
俺はリーアから情報を貰う必要がある。まだ話す必要性がある。こんな所で死んでい良いとは思えない。
リーアを見てみると、身体がガタガタと震えている。これから先が怖くて、怖くて仕方ないんだ。
「なら、そんな震えるなよ。助けて欲しいなら、言ってくれ」
俺の瞳を見ながら、泣きそうな表情のまま言った。
「私を……助けて欲しい!!」
『ナンバー04はナンバー09と合流してください。合流次第連絡します』
ナンバーワン04は森咲、ナンバー09は俺だ。
今の俺の位置情報はまだ秋葉原にいた。
ここから秋葉原に行かなければ、位置情報が偽であることがバレてしまう。
俺の位置情報をよく見たら、俺の知識にあるアニメやゲームなどのお店を1つ1つ回っているみたいだ。これは本当に会社が東京防衛隊に報告した店を回っているんだよな?
ーーーー
「リーアという人物を調べても、なんの情報も出なかった。生まれも育ちも今まで何をしてきたのかも分からない、あるのは東京防衛隊が依頼と同時に持ってきた1つの写真のみ、こんな変な事があると思うか?」
「位置情報が完全に分からなくなりました。どうしますか?」
「現地で写真は撮れたか?」
「はい……ですが……」
「なんだ……! 見せろ」
写真にはリーアという女性と黒い衣装を纏った誰かが写っている。
「私と同じ制服を着ているか……現在変な動きをしている奴はいるか」
「作戦を開始しても一切行動が変わらない人がいます。こちらを」
「松永か……森咲にこの地図で見えている座標に向かうように伝えておけ、もし、そこに松永がいてもいなくも連絡するのに」
「はい」
昔の記憶がよぎった。
松永、小さい頃からこの会社に身を寄せていた。息子のように可愛がっていた。強くなれないと悩んでいた時、必殺技を使えるようになって役に立てるよになったと喜んでいた。
最初から松永はこの任務の内容を把握していないという噂は聞いていた。明らかに任務に行きたいと言うよりも東京に行って何かをしたいという様子が傍から見てもわかった。他のメンバーもわかっていたはずだ。それがまさか、裏切りという可能性があるとはな、人生何があるか分からない。
「命令を下す、ゴーグルを脱いで、指示通り、撃て」
今まで見つけられなかったのは松永に私達の行動が筒抜けだったからだ。だが今は行動が見えているという事を知っている。行動が見えるからこそ、こちら側も意地的に動かす事で、松永の位置が特定できるという事だ。
画面上を見ると、指示通りに銃を連射している。当たるとナノファイバー・アーマーでも弾丸の衝撃を拡散・吸収する前に貫通する銃弾が込まれていることは松永も知っているはずだ。
位置情報は見えないが、私には見える。計画通り進めば、あの位置から動けなくなるはずだ。
「チェックメイト」
そこに通信が入った。
『松永と会ったんだけど、どうすればいいの?』
『隊長誰もいないです』
リーアも見失って、松永も位置情報通りに買い物をしていた。その予想斜めの状況に頭が混乱してしまう。リーアとは一体何者なんだ。位置情報にも表示されず、ARゴーグルにも映らない、監視カメラも同じに見えない可能性が高い、東京は広い、ここからどうすればいいのだ。




