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しいな ここみ様主催企画参加作品

全世界でカレーを食べる日


俺はコミュニティーの戦闘員、突撃任務と防衛任務を1週間毎に交互に行う。


今週は正門の防衛任務、5人の仲間たちと正門に近づいて来るゾンビを警戒し増えてきたら排除している。


と言っても、今日突撃班が出撃した出入り口は正門だったので、近寄って来るゾンビの数は少ない。


出撃する出入り口に集まるゾンビの数を減らす為、前日から他の出入り口付近で態と騒音を出してゾンビを集めるからだ。


夕方近くになって給食班の班員たちが配給の夕食を持って来た。


リヤカーに飯櫃と鍋が乗っている。


鍋からはカレーの匂いが漂っていた。


ただ気になるのはカレーの匂いと共に、唐辛子の匂いも一緒に漂って来るって事。


俺、辛いの駄目なんだよなぁ。


配置場所から動けない俺たち1人1人の所に給食班の班員が、ご飯にカレーをかけた皿を持って来てくれる。


持って来てくれたんだけど、給食班の班員が仲間に皿を渡す際変な事を言った。


「スマン」


渡された皿に目を落とした仲間が給食班の班員に声を荒げる。


「オイ! カレーのルーなんでこれポッチしかかけられてないんだ?」


「それなんだがな、カレーを作るとき俺たちは最初甘くも無く辛くも無いルーを作って、それから子供用に甘口のカレーと大人用の辛口のカレーを作るんだが、辛口のカレーを作ろうと缶入りのブートジョロキアを少しずつ混ぜていた際手を滑らせて、大缶に入っていたブートジョロキアを全て鍋の中に入れちまったんだ」


「なんだと?」


文句を付けた仲間がスプーンで少しだけルーを掬い口にした。


途端、「ゲホゲホゲホゲホ、ヒー、か、辛ー!」


そいつは日頃から辛い物好きを公言していた奴だけに、トンデモない辛さなんだろう。


説明した給食班の班員とは別な給食班の班員が、俺にも皿を手渡して来た。


あ、駄目だ。


皿を受け取った途端、俺の鼻腔を凄まじい唐辛子の匂いが襲う。


確かにカレーの匂いもするんだけど、唐辛子の匂いに押されて微かに匂うだけ。


ご飯に掛けられているルーはスプーン2〜3杯分程しか無いのにだぞ。


だから俺はご飯を添え物の福神漬だけで食べた。


残ったカレーのルーはどうするかな?


辛い物好きのアイツでさえヒーヒー言ってるんじゃ、やるよって言っても手を挙げないだろうし。


で、フト顔を上げたら格子状の門の外にゾンビがいた。


そいつはジーと俺が持つ皿のカレーのルーを見ている。


もしかして此れ食うかな? と好奇心が湧き、落ちてた棒の先にカレーのルーを盛って門の隙間からゾンビに差し出した。


食ったよ。


人間の肉にしか興味が無い筈のゾンビがカレーのルーを口にして味わうように咀嚼した後、カッ! と目を見開いてから棒立ちになりそのまま倒れ伏した。


倒れ伏したゾンビを見て、俺は思わず声を上げる。


「えぇ! なんで?」


俺の上げた声に気がついた班長が声を掛けて来た。


「どうした?」


「ゾンビにカレーのルー食わせたら、倒れたまま動かなくなりました」


「なんだと?」


班長が皿を手にしたまま近づいて来る。


門の外の倒れたまま動かないゾンビを見て、自分の皿に残っていたカレーのルーを俺と同じように落ちている棒の先端に塗り、別なゾンビの鼻先に突き出した。


そのゾンビもパクっと棒の先端のカレーを口にして咀嚼した後、倒れているゾンビと同じようにカッ! と目を見開いてから棒立ちになりそのまま倒れる。


ゾンビの口にカレーを押し込んだ棒で班長は、2〜3度ゾンビの身体を突っつき動かないのを確かめた。


倒れたゾンビが動かないのを確かめた班長は大声を上げて、給食班の班員たちに指示を出す。


「オイ! そのカレーのルーを確保しろ」


給食班の2人はリヤカーをその場にほっぽりだしたまま、1人は調理場の方に走り出し、もう1人は他の配給中の班員らに知らせるべく別な方向に走って行く。


班長は給食班の班員らに指示を出した後、無線機で本部に連結した。


それから慌ただしくなる。


本部から本部員と共に研究班の研究者がすっとんで来て、俺や班長と同じ事を行う。


他の門、囮として騒音を流した為にゾンビが群れている門で、俺たちがやったように棒の先にカレーのルーを盛ってゾンビの群れに突き出したら、家畜の鳥などのように群がり集まり我先にというようにカレーのルーを口にして咀嚼し、目を見開いてから次々と倒れ伏す。


俺と班長が倒したゾンビは、また動きだす可能性もあるため縛り付けられてから、研究所に運び込まれ解剖された。


その結果、ゾンビ菌が人間をコントロールしている脳幹からゾンビ菌が駆逐されている事を知る。


そしてゾンビが食いつくのはブートジョロキアが混ざったカレーだけで、ブートジョロキアだけを食わせようとしてもゾンビは見向きもしない。


ゾンビに対し負け戦が続いていた我々人間はついに、ゾンビを安全に倒せる方法を見つけたのだ。


此のブートジョロキア入りカレーの作り方は世界中のコミュニティーに知らされる。


ゾンビ菌があのもう滅び去ったが西の大国の研究所から漏れ出て、世界中に拡散されてから30数年経って、ようやく人間はゾンビから地球を取り戻したのだ。


ブートジョロキア入りの極辛カレーが偶々作られた日を記念して、毎年あの日は全世界でカレーが食される日になった。


まぁ当然だけど、俺が食うカレーは甘口だけどね。






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私なら、食べても生きてる自信がある!
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