中東
当たり前の日常が無くなるのは寂しい事だ、、、。
眠りから目が覚めると無機質なベットの冷たさが残酷な現実を実感させる。
俺はこんなにも弱くなっているのか、、、
そう思い知らされる。
オカンの話の通りオトンの寝室の机に、イクウォッチだけが置いてあった。
まるで最後通告の様に、、、。
ソヨヒト
「これを手にしたら俺はこの日常に戻れない、、、」
元よりシルの居ない世界で俺には日常は必要ない、、、
そう持っていたが、イクウォッチを手に取るのを躊躇する。
ソヨヒト
「どうした?怖いか?これを手にすればもう後には戻れない、、、死のリスクだってある、、、。」
いや、、、考えるな!!俺は必ずシルを救う!!
イクウォッチ手に取り、腕に取り付けオカン説明通り時計版を3度を押す、、、世界が歪んでいく様な錯覚と共に気が付けば見たことのない森の中に、、、。
ソヨヒト
「ここがシルのいる世界、、、」
思わずそう呟く、、、一瞬このままシルを探しに行く衝動に駆られるが、ぐっと堪えて再び時計版を4度押す、さっきと同じ感覚と同時に、アラビアン調のインテリアのリビングに立っていた、、、ここがオトンの隠し別荘か、、、。
部屋の時計を見ると深夜2時過ぎ、、、日本との時差は約6時間ほど、、、オカンから教えてもらった番号に電話をするのにはまだ早い、、、とりあえず一息つける部屋を探すために2階に上がる。
ソヨヒト
「すごい広いなぁ〜どれくらいある?」
来て早々に探索する気にもなれないので階段近くの部屋に陣取り、時間が来るまでシルとオトンの手紙を比較し考察をして時間を潰した。
???
「もしもし、、、どちら様ですか?」
ソヨヒト
「初めまして、多田野幸の紹介でご連絡させて頂きました、息子の多田野梵人です。」
ハズキ
「あ〜初めましてハズキです、、、ソヨヒト君のお母様にはご厚意頂いております。
お母様、、、もう他人行儀な言い方はやめるわね!!
サチさんからお話は伺っているから早速なんだけど、住所は伺ってるから今からそっちに迎えに行くから!!大体2時間ってところかな?それじゃ!!」
そう言って一方的に電話を切られた、、、。
なんだ?不思議と声が知り合いの人に似ていた、、、。
ぼーっとしていてもしょうがないので、家を探検する、、、屋敷は2階建でざっくり体育館2個分ぐらいの広さがあり、2階はオトンの寝室らしき部屋以外、特に変わった様子もない、窓の外を眺めると庭には多少の緑と湖?池?この地方ではオアシスと呼ばれるものが眼下に広がっていて、さらにその先に壁と門が見えた。
ソヨヒト
「正面門までは1キロぐらいか、想像以上に広い。」
1階を見て回っているとガレージに繋がるドアが、、、開けると、、、これはすごい、、、オトンの研究室以上にいろんな車両が、、、。
ソヨヒト
「オトンは一体何をしていたんだ、、、これ、、、アパッチ?流石に動かないよなぁ〜」
研究室にもヘリが数機置いてあったて、びっくりしたけど流石にこれは、、、ひょっとしてこれらの武器を異世界に持って行っていたのか?
ソヨヒト
「シルの話だとオトンは鉄の翼と言う召喚術を使っていたとか、、、。」
俺はオトンから向こうの世界の話をあえて聞いてこなかった、、、信じてないわけじゃないが、正直、触れたくも無かった、、、
俺はオトンとは違う、、、
その思いが異世界という現実から遠ざけていた、、、
俺は古びたアパッチを見ながら、、、
ソヨヒト
「結局、、、俺はオトンと変わらない、、、」
否定していたはずなのに、気が付けば3人も恋人を作り、そしてオトンと同じ様に異世界に旅立とうとしている、、、。
あの日、オトンが旅立った日、オカンは泣いていた。
そんな事を考え、さおりとシズクの泣き姿を思い出していた。
1階の応接間のソファーに座り、外の風景を眺めているとなんの鳥だろ、、、悠々と空を飛んでいく、、、。
オトンは向こうの世界で絶対的な力を持っていた、それはきっとオトンが制空権を支配していたからだ。
仮にアパッチ1機でも、向こうの世界ではオーバーテクノロジーだ、ファンタジー物によく出てくる飛竜がいると仮定しても、アパッチの武力には勝てない、、、。
何故なら飛竜が鋼の鱗を持っていたとしても、アパッチのM230機関砲、AGM-114 ヘルファイアミサイルを防ぐ硬度にはならない。
もし、アパッチの武力を防ぐまで鱗を厚くすると、飛竜が飛べる重量にはならない、世界にはそんな軽量で硬度を持つ物質は存在しないからだ。
たとえ、飛竜が防御魔法を使用出来るとしても、機関砲とミサイルの弾速に合わせて魔法を発動させることも不可能だ。
よってオトンが向こうにアパッチを持って行って、制空権を支配したのなら、誰もオトンに勝てないだろう、、、。
けれど、一つ疑問が残る、、、仮に俺がオトンと同じ立場なら絶対にヘリは使わない、、、主な理由は2つ
・ヘリは足が遅い
・航続距離が短い
確かアパッチの速度は時速250キロ未満、、、航続距離500キロ程だったと思う、、、。
一対一なら問題無いが、複数の敵に対しては足の遅さは致命的だ、複数の敵と同時に対峙するなら一撃離脱がセオリーになる、、、。
賢いオトンの事だ、、、オトンは戦闘ヘリではなく、戦闘機を用意していた、、、そう考えた方が自然だ。
そんな夢物語を考えていたらヘリが近づく音が、、、
ヘリは庭に着陸して一人の女性が降りて来た。
ヘリのプロペラ音がうるさく、挨拶もままならない状態で、女性のジェスチャーに従いヘリに搭乗すると、マイク付きヘッドホーンを渡された。
ハズキ
「おはよう!!改めましてハズキです!!ようこそイラクに!!」
やはり時差と地形を考えるとここはイラクかイランどちらかと思っていたが、、、
ソヨヒト
「初めまして!!多田野梵人です。
よろしくお願い致します。」
ビックリした、、、年はオカンとさほど変わらないぐらいだけど、俺の知り合いの人に似ていたから、、、。
ハズキ
「これからとあるベースに向かうけど、大体1時間ってところね!!」
俺の隣に座るハズキさんが説明している間に、操縦席に座るアラブ系男性がヘリを離陸させる。
俺の視線に気がついたハズキさんが、、、
ハズキ
「彼が私の旦那のターイウよ!!」
操縦席に座るアラブ系の人、、、ターイウ、、、
つまりオトンが俺に合わせたいと書いてあった人だろう。
無言で操縦席に座り、ヘリを操縦する男ターイウ、、、
確か意味は 従順、素直、、、だったと記憶している。
俺の隣で日本語で喋るハズキさん、、、俺みたいな歳の離れたヤツでも、母国語の日本語で話せるのが嬉しいのだろう、、、こう言うところもあの人に似ていた、、、。
ハズキさんの会話は多岐に及んだ、こっちの暮らしは大変とか、久しく日本に帰ってない、日本のアレが食べたい、原宿に行きたい、当時のアイドルまで、、、
ちなみにおっさんアイドルが無人島を開拓していると言ったらビックリしていた、、、(笑)
そんな彼女の話を聞いていると、気が付けばヘリは着陸体制に移行しており、要塞みたいな所に着陸した。
ヘリが武装した兵士に囲まれる、、、操縦席のターイウがハズキに目で合図してからヘリから降りる、、、ターイウは両手を挙げて誰かとハグをしている、、、。
ハズキ
「指示が出るまでそのままでいてね!!」
そう言って俺の手を握ってくれた、、、おそらく俺が怯えてると思ったのかも知れない、、、。
ターイウのこい!!って言う大きな腕の振りのジェスチャーで、ハズキさん、俺とヘリから降りる。
ターイウと話している軍服の男が俺を見る、、、。
軍服の男
「初めまして!!ドラちゃんです。」
、、、英語だ!!俺も英語で、、、
ソヨヒト
「初めまして、、、父の紹介でここまで来ました。
ソヨヒトです。
よろしくお願い致します。」
オカンからハズキ以外の人には名字を名乗るなと告げられている。
ドラちゃん
「おお!!ノビの息子だね!!こちらこそよろしく!!」
ノビとドラ、、、随分とふざけた名前だが、互いに素性を明かさない、、、まぁ〜オトンと彼の関係はそう言う事なのだろう、、、。
広々とした豪華なリビングに案内されて、応接ソファーに俺を挟んでターイウとハズキが座る、、、。
ターイウ
「あらためまして初めまして!!君のお父さんの師で有り、友人のターイウだ!!」
ターイウから英語で自己紹介される、、、。
ソヨヒト
「挨拶が遅くなりすいません!!初めましてソヨヒトです!!」
俺は日本流のお辞儀をしながら挨拶をする、、、。
ターイウ
「うんうん!!あいつに似なくて良かったね!!とても礼儀正しい!!いいかい!!ここでは君のお父さんの事はノビと言うんだよ!!」
ソヨヒト
「わかりました!!あと、母に似て良かったと皆さん喜んでくれます!!」
ターイウとハズキは互いに目を合わせて笑い出す、、、俺も思わず笑う、、、良かった!!出会ってら重苦し雰囲気だったけど、今のでだいぶ和らいだだろ!!
そう思っているとドアが開き、ドラちゃんが兵士を連れて部屋に入り俺の向かいに座る。兵士は各自にお茶を出すとそのまま退室した。
ドラちゃん
「今日は特別なお客様にアラビックコーヒーを用意しました!!」
そう言ってドラちゃんがコーヒーを一口飲む、、、。
アラビックコーヒー、、、確かカルダモンと一緒に煮出したコーヒーだったような、、、
ドラちゃんが手で進める、、、俺は躊躇する事なく一口、、、うわーコーヒーって感じじゃなくてなんだろう、、、香辛料?なんとも言えない味わいだ、、、。
ふと、二人を見るとコーヒー手をつけていない、、、
あれ?
ターイウ
「ソヨヒト、、、君はお客様としては一流だ!!でもここは戦地だ!!君は毒を盛られて死んだね、、、」
俺はその言葉にゾッとした、、、えっ?どう言う事だ?
ドラちゃん
「安心した前!!まだ君には毒を盛っていない、
けど、君のお父さんに頼まれてねぇ、、、
ここで生きていける必要最低限のことを教えてやってくれってね!!」
、、、なるほど、、、これが平和ボケなんだ、出されたものを疑いもしないで口にする、、、そんなのは日本でしか通用しない、、、俺は何をしている、、、こんなことじゃ、、、思わず肩を落とす、、、。
ハズキ
「大丈夫よ!!それを学ぶために貴方はここに居るのだから!!」
そうだ!!確かにそうだ!!その為に俺はここまで来た!!
俺は深々と頭を下げて、、、
ソヨヒト
「よろしくお願い致します!!」
ここでの生活は少し変わっていた、、、。
寝泊まりはオトンの屋敷で、軍事訓練はドラちゃんの要塞で、、、気になったので指導をしてくれるターイウに聞くと、、、
ターイウ
「あ〜ノリはここで君に寝泊まりさせるつもりだった様だけど、、、ほら〜その辺で雑魚寝ね!!
そうしたら、君のお母さんが、、、」
そう言ってターイウが建物日陰を指差す、、、。
サチ
「ハズキ!!悪いけどあのバカ(オトン)の話は無視してちょうだい!!二人はキチンとソヨヒトを別荘に送り迎いしてね!!金額は倍払うわ!!」
ターイウ
「まぁ〜俺らとしても別に金払いの良い方の言うことを聞くからね!!」
だとか、、、ターイウが指差していた辺りを見ると、サソリが俺を見てファイティングポーズをしていた、、、。
オカン!!本当にありがとう!!
クロスロードを一読頂きありがとうございます。
やっとこの物語の完結までの道筋が出来ました。
残念な事に、恐らく無駄に長い道のりなので、
正直、最後まで描き切れるかなぁ〜?
とりあえず頑張ります!!




