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第十一章

それ以降、フレデリック様からの連絡はなく、ひたすらに卵に魔力を与えるだけの毎日である。時々はエアルと『飛行』して気分転換をしている。

エオーラに聞いてもカールからの連絡はないらしい。

旧都は辺境という理由があるのでなかなか噂話は届いてこないのだけれど、新都とは交通もあるのだから少し遅れて情報が流れてくることが多い。けれども勇者パーティの話については今回は全く情報が入ってこない。

ノーラに相談してみた。

「例の勇者パーティの話、こちらには全く聞こえてこないけれどどうしたものかしらね」

「まあ、もしドミニク王子が死んでしまったならば王太子を第一王子に移すおふれが出たことでしょう。けれども何の音沙汰もないということはドミニク王子はまだ生きているんでしょうね」

「王子の取り巻きのアレが帰ってきていたら勇者パーティの宣伝をするはずだから何らかの噂話が広がるはずだと思うの。でも何の噂話も広まってこないということはやはり帰ってきたのは王子、とマージーだけなのかもしれないわね」

「王家も固く口を閉じているということは国民に宣伝したくない不都合があることは容易に想定できますね」

お父様とかルイスお兄様に手紙で聞いてみてもいいけれど、王妃様にバレたら王都にいや王宮に戻ってこいという話になるかもしれない。

王妃様は不敬になるから言わないけれど、結構執念深いのである。

「ねえノーラ、やっぱりこっそりと王都に行ってみるっていうのはどうかしら」

「王都に入る時に王妃様にはバレると思いますが、それでもよろしければ」

「そうね、やめておくわ」

仕方がないので卵に魔力を振りかけながら日々を過ごしている。

多分無駄だよなと思いながらエアルに勇者パーティのことを話してみる。

「えっ、王子様に会いたくなったの?」

「い、いや」(あいつには婚約破棄されたなんてエアルにはいえないわね)

「じゃあ、もう一人の王子様?」

「もう一人の王子様って誰よ」

「うーふふ。真実の愛はもうすぐそこね」

「真実の愛なんてごめんよ」

「じゃあ小聖女のこと?」

「小聖者って誰のこと?」

「そりゃああなたが大聖女だったらあっちは小聖者よ」

「うん?私は大聖女なんかじゃないわよ。魔法も使えないんだから」

「そうねえ、小聖女ちゃんは魔界の王子に負けたショックで大神殿で療養中よ。子守唄ばかり歌うようになっているわ」

「そっか。勇者パーティは異界の王子に負けたのね」

「小聖女ちゃんも頑張ったんだけどねえ」

「そうね。結局彼女は浄化の技を覚えなかったものね」

「瀕死の重症の治癒を覚えたからこそドミニク王子は死なずに済んだのよ」

「何でそんなことまで知っているのよ」

「そんなの私が大妖精だからに決まってるじゃない」

「じゃあ全部教えなさい」

「そ、それは無理よ。教えちゃいけないことはあるのよ」

「それじゃ私たちは操り人形の人形と変わらないじゃない」

「そんなことはないわよ。運命は変わりにくいけれども未来はその人の判断で変わりうるものよ。だからこそ教えちゃいけないことがあるのよ」

「何だかうまく騙されている気分だわ」

「で、王都に行くの?行かないの?」

「行くわ」

「じゃあ小聖女は大神殿で療養しているからそちらに向かいましょう」

「クララもいるかな」

「多分いるんじゃない?知らんけど」

そうして私たちは『飛行』の呪文を唱えて窓から飛び出して行ったのである。

お昼頃には新都の上に来たので一旦地上に降りて新都の美味しいレストランで昼食をとってから、また『飛行』で飛び続けることになった。

お昼過ぎには王都の上空にたどり着くことができた。

びっくりしたことには王都は上空にまで結界を張り巡らしていたのである。

魔石の魔力を使ってちょっと結界を解除してまた結界を張り直してから王都の中に入り、大神殿を目指した。

大神殿の外れで地上に降りた私は大神殿の中に入り、クララを探しに行った。

幸いクララは大神殿で普段の作業をしていたのですぐに見つかった。

「お久しぶり、クララ、元気にしていた?」

「あら、セレスティア様ではありませんか。お久しぶりでございます」

「最近はどう?」

「そうですね。あちこち騒がしいようですが大神殿は相変わらずですね。神殿長にお会いなさりますか?」

「いえ、それより、ここにマージーが療養しているって話を聞いたのだけれど」

「おや、それは秘密にされているのですが。セレスティア様であればそんな秘密情報も手に入れていらっしゃるのね」

「あはは。(大妖精には秘密なんて筒抜けのようね)」

「マージーとの面会は特に禁止はされていませんからご案内しますね」

「お手数をおかけするわね」

そうしてクララに神殿の奥まった部屋に案内してもらった。

部屋の外にまでマージーの歌う声が聞こえている。

「彼女は歌を歌うだけで特に逃げようとはしていないのですが、命令がありますのでね」とクララは鍵を取り出して扉を開けた。

部屋の中にはマージーが座っていてよく知られた子守唄を歌っている。

「マージー、セレスティアよ。お元気?」

私が声をかけるが彼女は私とは視線も合わないようでひたすら歌を歌っている。

「いつもこんな風なのです。彼女とお話しできる人はいないのです」

「仕方ないわね。マージーしっかり療養してね」

その時、マージーは立ち上がって「お姫様ごきげんよう」と正確なカーテシーを見せた。

マージーはそのまま座り込むと「お姫様は王子様と出会うの。王子様は冒険の末魔王を撃ち倒す。王子様とお姫様はお城に帰って結婚式を挙げてそのまま幸せに過ごしました♪」と節をつけて歌い、その後はまたいつもの子守唄に戻ってしまった。

私が何度もマージーの名を呼んだけれど、彼女は全く私のことに気がついていないみたいだった。

クララは「マージーが子守唄以外のことを言ったのは私が見る限り初めてですね。やはりマージーもセレスティア様のことはわかったのでしょうか」と扉の鍵を閉めながら言った。

「どうかしら。あの子、私には気づかなかったように思うわ。でも王子様が魔王を倒すって予言なのかしら」

「ドミニク王子も王宮内で療養なさっているというお話しですけれど、勇者ドミニク王子が魔王を退治されるのでしょうかねえ」

「さ、さあ、どうかしらね」

今更ドミニクなんかに会いたくもないし話題にもしたくないわ。

「さあもどりましょうか」というクララの案内で元の部屋に戻ってきた。

「セレスティア様、先ほどのマージーの予言を神殿長にご報告なさいますか?

「あ、私は急ぎの用があるので新田町様にお会いするのはまたの機会でいいわ」

「それではマージーの魔王の予言につきましては私が神殿長にご報告させていただきますわね」

「それではごきげんよう。またお会いできることを楽しみにしているわ」

「こちらこそ、セレスティアさまがまたこちらに足を運ばれる日をお待ちしておりますわ」

私はクララと別れを告げて神殿から外に出た。

外の広場には着飾った女性がもう仁王立ちのように立っている。

女性は私に気がつくとズカズカと大股でこちらにやってきた。王妃様だ。

「ちょっとセレスティア。あなた王都の門を通りもしないで何空を飛んで王都に来ているのよ。それも王宮にも来ないで神殿に来たってどういうこと?あなたっていつの間に魔法を使えるようになったの?きちんと報告しなさい!」

「ああ、王妃様、ご無沙汰しております」

私は完璧なカーテシーでご挨拶した。

「あの、私が魔法を使えるようになったわけではないのです。えっ?きゃっ!」

いきなり私の体は空中に浮かび始めた。

エアルが「はいはい。もう無駄なご挨拶はいらないでしょう。さっさとお家に帰る時間ですよ。キャハハっ」と笑いこけている。

呆気に取られて立ちすくむ王妃様に私は「上から失礼致します。何だか浮遊の魔法がかかっちゃったようです。今から帰りますのでごきげんよう。きゃっ、上に浮いてゆくわ!」とご挨拶しながら急速に空中に浮かび上がってゆく。

王妃様は「あなたまさか妖精と契約したの…」と言っているようだがもう何を言っているのか聞き取れなくなってしまった。

浮いてゆくとさっきの結界にぶつかったので少し結界に穴を開けて外に出てから結界を修復した。

エアルは「さあ飛行よ、全力で飛んで帰るわよ」

と一気に全速力まで上げて飛び始める。

「ぎゃー、これは速すぎる!」

キャハキャハ笑いこけているエアルの横で私はもう真っ青な顔をして周りを見る余裕などなくエアルに方向を任せて必死に飛んでゆく。

それで1時間ほど飛んだのだろうか。もう握りしめた私の拳には爪の跡がバッチリついている。もう少し爪が長ければ出血していたかもしれない。

エアルはもうへばってしまっていた。スピードも緩やかになっていたので下を見てみると別荘と街が見渡せる。別荘と街の間で森と接する部分に騎士たちが集まっている。

何事かしら。

嫌な予感を覚えた私はエアルに騎士たちの集まっている場所の端っこに降りるようにいい、エアルを私の手のひらで包んであげた。

エアルは私の魔力を食べて「幸せー」と言いながらそれでも騎士たちのいない近くの野原に私を下ろしてくれた。

エアルを手にぶら下げて魔力を食べさせながら私が騎士たちに近づくとノーラが見えた。

ノーラに手を振ると彼女は慌ててこちらにやってきて「セレス様ご無事でしたか」と安心したように言ってきた。

「どうしたの?」と聞くと、今日の午後にいきなりゴブリンの一小隊が森から出てきてそこで遊んでいた子供達を襲ったらしい。たまたまそれを見ていたエオーラが子供たちを守ってゴブリンを全滅させたのだけれど、その過程で私の姿が見えないことに気が付かれてみんな総出で私を捜索していたのだそうである。

「ご、ごめんなさい!ちょっと薬草を探しに行っていたものだから」

何だかサラッと嘘をついてしまった。私は詐欺師に向いているのかもしれない。

私はみんなに謝って別荘に戻ることにした。

騎士たちは「いえいえお嬢様がご無事で安心しました」と言ってくれたのだけれど、別荘に戻るとノーラに軽く半時間くらいお説教を喰らってしまった。

明らかに森からは瘴気が漏れ出てきているし、森の奥の方からは魔獣の気配が濃くなっている。

リンデンの公爵領騎士団はこれから交代で寝ずの番を続けるらしい。

多分ケガ人も増えるだろう。

ポーションを作らなきゃ。

メイヤーによると再び第三騎士団に救援を依頼したらしい。

薬草を入手して別荘に戻り、ポーションを作っていると少しの異変に気がついた。これまでは魔力を振りかけると緑色の変化が起こるのだったけれど、今日は金色にポーションが変化するのである。

無論、変化は数秒であって、すぐに色は消えて普通のポーションの色になるのだけれど。

ノーラに相談してみるとノーラが黙ったままになってしまった。

「ど、どうしたの?」

「いえね。伝説の大聖者様のお作りになるポーションは金色の魔力が込められたっていうんですよ。じゃあそういう事なのかなあって。セレス様は妖精が見えるお人ですから資格としても大聖女って言っていいのではないかと」

「はあ?いやいやいや、魔法を使えない大聖女ってありえないから」

「セレス様、自己評価が低いですね」

「………」

「大丈夫ですか?お嬢様?」

「多分、私が魔法をきちんと使えたならば私が勇者パーティに入ってドミニク王子を助けていたと思うの。でも私は魔法を使えないから。それで婚約破棄されちゃったんだと思うわ。みんなの期待に応えられない子なのよ私って」

「そんな事ないですよ。セレス様は月と水の祭りで古代の城を浮かび上がらせたのです。ドミニク王子とは残念ながら縁がなかったのでしょう。でもこれから出会うかもしれませんわよ。希望を忘れずに、ですよ」

翌朝、ノーラは食事後に私とエオーラを連れて森に向かうと言った。

「そんなに森の奥に踏み込むことはしません。もし魔獣が出てきてもエオーラがいれば大丈夫です」

念のためもう一人騎士についてもらうことで森の方に向かう事になった。

森の奥に少し進んでゆくとあちこちに瘴気のかけらが飛び散っている。

それはそんなに危険なものではないが、この瘴気のかけらが集まってしまうと瘴気の沼になって魔獣を生み出してしまうのである。

「セレス様、はい、その上に手を置いて」

私がその瘴気のかけらの上に手を置くと、10秒もしないうちに「はい、手をどけていいですよ」という。

手をどけてみるとさっきまであった瘴気のかけらは跡形もなく消えていた。

「セレス様、これが大聖女の魔力です」

「でも私って浄化の技は使っていなかったわよ」

「ええ。魔法を使わなくても魔力だけでこういうことができるのが大聖女なんです」

多分,セレス様が歩くだけで森は浄化されてゆきますよ」

私はもう「はあ」って間の抜けた声をあげるしかなかった。そんなの規格外じゃない。

「セレス様、じゃあ今度はあちらに行きましょう」

ノーラは私を引っ張って森から出て街の方に向かった。

街には公爵騎士団の本部がある。本部の建物を通り過ぎると怪我をした人のための救護所がある。

ノーラは救護所にスタスタと入ってゆく。

数は少ないが魔獣と戦って怪我をした騎士がベッドに横たわっている。幸いな事に命に関わるような重傷の騎士はいない。

ノーラは辺りを見回して腕に切り傷を負い、包帯から血が滲んでいる騎士のところに近寄っていった。

「セレス様、この騎士の傷の上に手を掲げて」

私は彼の傷ついた傷の上に手をかざしていたが騎士が「おや?痛みが消えてきたぞ?」と言い出した。

ノーラは近くの治療師に「その包帯を外してみて」という。

治療師は「おいっその騎士は今包帯を巻いたばかりだぞ」というが子爵令嬢の権威でさっさと包帯を取り払わせた。

「驚いたな」血の滲んだ包帯の下はおそらくそれまでは大きな切り傷があったのだろう。けれども、今ではその傷はほとんど塞がっており、みている間にも傷跡が塞がっていくのがわかった。

騎士はもう感極まって涙を流しながら「セレスティアお嬢様のおかげで傷が治ったぞ!」と叫んだ。

ノーラは「おそらくこの部屋にいる怪我人もみんな怪我が治ってきているのを自覚しているんじゃないかしら」と冷静に言う。

そばにいたベテランの騎士も「そうでございます。私の怪我の痛みも先ほどからだんだん治まってきております」と言い出した。

他の怪我人たちも口々に痛みが減って怪我が治ってきたことを騒ぎ出している。

治療師は高価そうな椅子を持ち出してきて「ではお嬢様,皆の怪我が治るまでここにお座りください」と言い出した。

冗談でしょう?

仕方がないのでその椅子に座っていると、治療師は次々と怪我人の様子を見て包帯を外していった。

5分もするとほとんどの騎士たちは怪我が治っていた。

治療師はこれは聖女、いや、大聖女の力ではないでしょうかという。

それを聞いて怪我の治ったみんなは「大聖女万歳」と騒ぎ出す。

私は言わざるを得なかった。

「私が大聖女であることは秘密にしてちょうだい。さもないとこの治療師は怪我人が出るたびに私をここに鎖で繋いで監禁してしまうでしょう」

この冗談に騎士たちはみんな治療師も含めて大笑いになった。

けれどもそんな噂が流れちゃうと下手すれば悪人に誘拐される危険もあるのである。

ノーラは別荘への帰り道に「セレス様はすごいのですよ。今日はそれをご実感いただけましたか?」と言う。

私は「そうね。これからは治療者で治療することは求められるでしょうね」と返事した。

これからまた新しい仕事が増えるのはいいのかもしれない。忙しければ余計なことを考えなくて済むでしょう。

そんなことを考えてつらつらと歩いていると急にエアルが「そろそろ卵が孵るよ。急いで帰った方がいいんじゃないかな」と言い出した。

「えっ!」

「どうかなさいましたか?」とエオーラが聞いてくる。

「エオーラ、ここから別荘に帰る近道はないかしら」

「お任せください。こちらです」

エオーラは道端の草むらに入って行ってしまった。

「ようし」

私もめげずにエオーラの後に続く。

ノーラは「セレス様!お召し物が汚れます!」と大声を出したが、エオーラにもセレスにも届かないのでやむを得ず護衛の騎士と顔を見合わせて街道を別荘の方へと向かったのである。

別荘についた時には草だらけだったが、めげずに私の部屋に向かった。

卵を見るとすでに脈動している。念の為に上から魔力を降らせたがあまり関係なさそうである。

エアルが「ちょっと着替えた方が良くない?」というものだから急いで部屋用ドレスに着替えて卵の様子を見つめる。脈動は速くなったり遅くなったりしている。

「あ、殻にヒビが入ってきた」

次第に卵の真ん中くらいにヒビが入ってきて、卵が割れてきた。

しまいには卵がパカっと上下に別れて中から銀色のウロコに覆われた小さな魔獣が生まれてきた。

「ドラゴンじゃない!」

ドラゴンと目が合うとそのチビドラゴンはよちよちとこちらに向かってきた。そばのタオルを手に取って濡れたドラゴンの体を拭いてやる。ドラゴンは嬉しそうに私に近寄ってくる。抱っこしてやると「ミューミュー」と鳴いている。

めちゃくちゃ可愛い。

体は綺麗な銀色をしている。ちょっと見ている間に自分の入っていた卵のからはドラゴンが綺麗に食べてしまった。

「この子って何を食べるんだろう」

エアルは「ドラゴンだし肉なんじゃないかな」という。

そうだ!と私はドラゴンを抱えたまま厨房に走っていった。

「料理長、肉を出して!」

料理長はドラゴンを見てびっくりしている。

「あ、これドラゴンの赤ちゃんだから大丈夫。エサを探しているの。肉を出してどれを食べるか知りたいのよ」

事情を理解した料理長は牛肉豚肉鶏肉、そしてモンスターの肉を細切れにしてドラゴンの前に置いてみた。ドラゴンはどの肉を見てもプイッと横を向いている。

「どうやらこの中にはドラゴンのお好みはなさそうね」

エアルは「そうだなあ、たまには花を食べるドラゴンもいるっていうよ」という。

よしっ、じゃあ温室の方に行こう。あそこなら花が咲いているはず。

料理長にお礼を言って、ドラゴンを連れて温室の方に向かう。温室には庭師のトムが丹精込めて四季折々の花を咲かせているのである。

温室の中に入ると花盛りの花壇を見てドラゴンは目を輝かせた。満開の花をパクパク食べ出した。

「どうやらこのドラゴンは花が好きな草食のドラゴンのようね」

そこに庭師のトムがやってきた。自分が丹精込めて咲かせた花をドラゴンがパクパク食べている姿を見てショックを受けている。

「ごめんなさい、トム。でもね、この赤ちゃんドラゴンはお花が大好きみたいなの。温室に連れてきたら満開のお花をパクパク食べちゃったのよ。ごめんなさい」

トムはちょっと情けない顔をして言った。

「お嬢様。この温室の花はお嬢様が楽しむために咲かせたものです。だからお嬢様がドラゴンに食べさせてそれが良かったというならそれで何も問題ありません。つぼみは食べていないみたいですからまた花は咲きますよ」

「ありがとう、トム」

温室の花を食べ尽くしたドラゴンはお腹いっぱいになったのか、セレスティアの腕の中ですやすやと眠ってしまっていた。

「名前をつけなければね」

「セレス、この子は普通の銀龍じゃなくて白金龍だと思うよ。花を食べるのは妖精龍の眷属だ」

「白金龍なのね。じゃあプラタにしましょう。あなたの名前はプラタよ」

眠っている龍は体をぴくりと動かしただけだった。


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