第7話 おじさん、魔王城へ向かう
それからおじさんたちは暗くなる前に町まで戻り、回収した素材からサンライトオーガではなく上位種のジャイアントサンライトであることが分かった。ジャイアントサンライトはサンライトオーガとジャイアントと呼ばれる巨大な肉体を持つ人型のモンスターのハーフで、それぞれの特性を併せ持ち、物理攻撃への耐性だけでなく魔法攻撃も効きづらいモンスターらしい。100年に1度目撃されるかどうかなので普通の冒険者たちはその存在を知ることさえ無い。それが討伐されたことはすぐに世界中に広まり、勇者ヴィルドの存在も公に公表された。
それからヴィルド一行は各国をめぐり、強いモンスターの討伐依頼をこなしていった。ヴィルドたちはアーチャーかランサーを仲間にしたがっていたが、なかなか優秀な人材をめぐりあうことができなかった。
そして最後に各国の国王が集まる会議に参加させられたヴィルドたちにある依頼が言い渡された。
「魔王ゲルグランサガの討伐」
それが勇者ヴィルドに言い渡された最後の依頼だ。これまで各国をめぐり、かなりの月日が経過した。おじさんの年齢は58になり、さすがに肉体的に戦闘できなくなるのも近い。その前に魔王と戦うしかないという世界の判断だ。
「かしこまりました。この命に代えましても魔王を倒します。」
それが依頼に対するおじさんの返事だ。
おじさんはここ数年でさらに強くなり、魔力量が数倍になったことで魔力切れを起こす心配はもうない。それにエリス、ドラル、ペルドルの3人も確実に強くなっていた。エリスはヴィルドのパーティーに入った時と比べてかなり素早くなり、正面からでも敵の背後に回り込めるほどになった。ドラルは斧を使った戦闘を中心に鍛え、攻撃力、対応力ともに成長し最高の戦士になっていた。ペルドルは防御力に磨きがかかり、味方の攻撃を引き受けつつ、自身のHPを回復できるようになった。もはや不死身だろうと思えるほどに固い。
これだけ強くなれば魔王も倒せるのかもしれない。そういう期待を抱いて国王たちは送り込むのだろう。
魔王城へはおじさんの現在地から1か月ほどかかる。パーティーメンバー全員でおじさんのことを支えながら少し時間をかけて魔王城へと向かう。魔王城に近づくにつれて現れるモンスターが強くなっている。ジャイアントサンライトレベルのモンスターが現れることはないが、それでもサンライトオーガレベルのモンスターはざらにいる。
おじさんがいなくても対応できているのは彼らが強くなっている証拠だろう。おじさんはもうお爺さんになりかけている。あまり時間をかけることは出来ない。彼が死ねば魔王を倒すのは厳しくなるだろう。
おじさんを気にかけながら進むこと2か月。一行はようやく魔王城まで到着した。
「見たところ結界で侵入できないようになってるみたいですね。」
「どうする?ヴィルドの魔法でどうにかできそうか?」
「できないことはないと思いますが、結界を解除する魔法では厳しそうですね。やるなら効果力の魔法を連発して破壊する力技になるので魔力消費が激しいですね。」
「それでは破壊して、明日攻め込むのはどうでしょうか?」
「いえ、あの結界は地を流れる魔力を使用しています。なので1時間もあれば元に戻ってしまうでしょう。それに中から出ることに制限がかかっていない。結界が回復したタイミングで一気に物量で押されてしまいかねないです。」
「それじゃ数日かけて結界を壊して出てきた奴らを殲滅するっていうのを繰り返して戦力をそいだら?」
「確かにそれが一番現実的かな。どうせ中に侵入できても結局物量で押さるでしょうし。さすがエリス。冷静だね。」
おじさんとエリスは明らかに距離が近い。年齢差があるから恋人ではなく父と娘といった感じだ。エリスは明らかに恋愛感情を抱いてそうだけど。
「それでは私が今から魔法を連発して結界を破壊します。爆発系の魔法なので耳をふさいでおいた方がいいかもしれないです。私は耳栓を入れるのでご心配なく。」
それを聞いた3人は耳をふさぎ、おじさんは耳栓を入れた。3人が耳をふさいでいるのを確認したおじさんは魔王城へ杖を向け、魔法を発動させた。
「【連鎖爆発】」
魔王城の結界で大量の爆発が起こる。それが1分間続き、修復が追い付かなくなり少しづつひびが入る。ただこれでは爆発が終わる方が先だ。結界を破壊は出きない。
いや、おじさんが次の魔法の準備をしている。詠唱付きってことは相当だね。
「【隕石投下】」