第6話 水蒸気爆発
ギルドに到着した一行は確かにサンライトオーガの討伐依頼があることを確認し、依頼を受けることにした。
「ヴィルドさん先日討伐してくださったばかりなのにありがとうございます。もしかしたら上位種の可能性もあるので十分注意してくださいね。」
ギルドの受付嬢が注意喚起をする。確かにめったに現れないモンスターが連続して出現したとなると上位種の可能性も考えなければならない。
「はい。ありがとうございます。今回は私ひとりじゃないので大丈夫ですよ。念のため低ランクの方が北の森に入らないよう手配してもらっていいですか?」
「すでに手配済みですのでご安心ください。現在Aランク未満の方は北の森に入れないようになっていますので」
「そうですか。それでは行ってきます。」
おじさんはパーティーメンバーに今伝えられたことを共有し、全員で北の森に向かった。北の森は普段に比べてモンスターの数が異常に少なく、常に威圧感のようなものを感じた。森の奥に行けば行くほどそれは強くなり、森に入って1時間ほどで最深部まで到達した。そこで目撃されていたサンライトオーガ。確かにそこにいた。ただ、それの大きさは通常の3倍ほどあり、とてもじゃないが近接戦闘は厳しい。
「ペルドルさんは私を攻撃から守ってください。ほかの2人はできるだけかく乱して攻撃を散らして。」
ヴィルドの的確な指示に従い、全員が動き出す。そしてヴィルドはペルドルの後ろから上級攻撃魔法を打ちまくる。通常のサンライトオーガに比べて魔法の効きが明らかに悪そうだ。
それでも少しづつ削れているのはヴィルドの魔法の威力が高いからだろう。しかしこれではいつか限界が来てしまうだろう。
「皆さん今の私の魔法では削り切れません!高威力の複合魔法を使うので10秒後にオーガの近くにいないようにしてください!」
そういうとヴィルドは詠唱をはじめ、4種の魔法を使用した複合魔法を準備し始めた。正確には2種の魔法を使用した複合魔法1つと2つの通常魔法だ。
まずサンライトオーガの周囲に気体さえ通さないほどの強力な結界を作る。もちろん仲間たちは脱出できるようにする。
その中に水属性の魔法で水を発生させ、それを火属性魔法で蒸発させる。これで下準備は完了だ。結界の中にいたエリスとドラルも脱出した。
「それでは行きます。複合攻撃魔法【水蒸気爆発】」
ほぅ。下準備の時点でうすうす気づいてはいたけど、水蒸気爆発か。この世界の化学レベルはかなり高いのかも。それか魔法によって偶然生み出された産物か?
結界内で巻き起こった大爆発はサンライトオーガと思わしきモンスターを巻き込み、その体をぼろぼろにした。もちろん耐えられるわけもなく死んでいる。これがこの世界の複合魔法。科学的なものがかかわっているのか。
「皆さん大丈夫ですか?」
魔力をかなり消費して疲れてるだろうにこんな時でもヴィルドは他人の心配だ。私の見習わないと。
「大丈夫だ。かすり傷一つねぇよ。」
「私も。」
「僕は2人が攻撃をひきつけてくれたので。」
「それは良かったです。この複合魔法は試したことなかったのですがうまくいってよかったです。」
「それにしても初めて聞いたよあんな複合魔法。それにすごい威力だったな。」
「4つの魔法を複合させていますし、原理は分かりませんが、結界、水と火で起こした蒸気の2つを用意した状態で結界内に火魔法を発動させれば大爆発が起きるみたいですね。」
「さすが勇者ですね。これほどまでに強大な魔物も倒してしまうなんて。」