第5話 初の依頼は?
「少し前になるんですが、私の所属していたパーティーがゴブリンの群れと戦闘していた時に偶然通りかかったらしく、オーガの群れが戦闘に加わってきたんです。オーガとゴブリンって種族的に近いじゃないですか?それで混戦になってこちらが劣勢に立たされた時に遠くから魔法で魔物だけを一掃してこちらの治癒までしてくださったんですよ。」
おじさんはあまりピンと来ていなさそう。多分人助けをしすぎてわからなくなっているんだろう。
「そうか。それは命の恩人だな。」
ドラルが大きな声でそういう。いちいち声がでかくて周りは大変そうだ。
「はい。今度は私がお役に立ちます。」
「そういうヴィルドさんはピンと来てなさそうですけど。」
ピルドルが指摘する。いわないでいてあげればよかったのに。
「すみませんね。半年ほど前からそういうことが多くてですね。魔物が群れで行動することが多くなって対応できてないパーティーを助けることも多いんですよ。」
「確かに。いわれてみればここ半年くらい魔物が活性化してる上に群れでの行動が多いですね。」
「はい。なので明らかにやばそうなときは手を貸すことにしてるんですよ。時々悪態をつく人もいますけど死なれるよりはいいので。」
「まぁ、そういう奴は他のパーティーとの連携が取れなくてパーティーから追い出されるか連携が取れずに死ぬかだからな。そんな奴は無視すりゃいいだろ。」
「私もそう考えて関わらないようにしています。それで一度実践で連携を試してみたいのでこの後簡単な討伐クエストを受けませんか?」
「そうですね。それぞれに何ができるのかを知っておかないといけないですし、お互いの動きを知れば連携も取りやすいですし。」
「それじゃ数のいるやつの方がいいか?」
「いいえ、数の少ない強めの魔物にしましょう。弱い魔物の群れは私が魔法で一掃して終わりなので。強い魔物もそうなんですが、今回は魔力を節約して戦います。」
「そうですね。いざというときに備えて魔力を温存しておかないと危険ですし。」
エリスはずっと頷くだけだ。極端に口数が少ない。さっきのおじさんについての話口を見るにおじさんの話の時だけ饒舌になるみたい。
「さっき一通り依頼を見てきたんですが、強いモンスターなら北の森で目撃されたサンライトオーガとかどうですか?ちょうどAランクの依頼ですし、強さも申し分ないでしょう。」
「サンライトオーガの討伐依頼が出てたんですか!?不思議ですね。5日前に私が討伐してきたんですが。そんな頻繁に現れますかね。」
「少し不自然。」
急にエリスがしゃべった!それでも口数は少ないな。最低限のことしか言わないみたい。
「たしかにサンライトオーガの討伐依頼なんて3か月に1回見かけるかどうかってところだぞ。」
「それにここ数回は私が討伐していました。皆さんは戦ったことありますか?」
「私はない。」
「俺はあるぞ。まぁだいぶ前にはなるが。」
「僕もあります。かなり攻撃力が高いですよね。」
「そうですね。防御力も高く、物理攻撃が効きづらい。魔法攻撃が弱点なので私は苦戦したことがないですけど、サンライトオーガの討伐は少し急いだほうがいいかもですね。北の森は町から近い分低ランクの冒険者たちが立ち入ることも多いですし、人的被害が出る前にやらなければいけないですね。」
「それではサンライトオーガの討伐に行きましょうか。」
「そうですね。万が一の時は私が本気で魔法を使えば一撃なので心配しなくて大丈夫だと思います。」
「それじゃ食器を片付けてギルドに行くか!」
「うん。」
食器の片づけをしようとするおじさんを無理やり引き留めてほかの3人が食器の片づけをてきぱきとしていた。さすがにごはんまで作ってもらって片付けまでさせるのは忍びないのかな。
「皆さんありがとうございます。それではギルドに行きましょうか。」