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16 最終話

ミュリエルはなかなか目を覚まさなかった。

まる二日、眠り続けて、全て片付いた3日目の朝目を開けた。


その間アランは片時も側を離れず、ディーンをこき使ってミュリエルの世話をした。


「ディーン、花を買って来てくれ。この部屋いっぱいになるように」

「ディーン、通りの向こうのパン屋でバゲット買って来てくれ。ミュリエルはあのパンの匂いが好きなんだ」

「ディーン。果物を用意してくれ。ミュリエルには水より果実水がいいだろう。」

「ディーン。」


「あああ! もう! ミリーちゃんまだ起きないの?」

ディーンは涙目だった。


3日目にミュリエルが目を覚ますと、涙を流して喜ぶ男が二人。

部屋には花が溢れてミュリエルは天国に来たのかと思うほどだった。


体の痛みで動けないミュリエルに、アランがポツリポツリとこれまでの真実を語る。カーマイン家の屋敷で語り合っていた時から夢中だったと言われた時はポロポロと涙を流して喜んだ。


「誰にも、好きだと言ってもらったことがないので。」

その言葉にディーンまでもらい泣きをしていた。

外国へ行こうと言ったのは、アランの父親の情報があるからだと知り、必ず一緒に行こうと約束をする。

ミュリエルも本心ではずっと一緒にいたいと思っていたが、自分は役立たずだと思ってアランの邪魔になってはいけないと思い、身を引こうとしたのだ。

それを聞いたアランが

「ミュリエルがどこへも行きたくないなら俺も行かない。いつも一緒だ。それが一番大切なんだ。」

と大真面目に言い放つ。


「もうこの人誰? アランを返して。」

ミュリエルへの想いを隠さないアランにディーンも驚くばかりだった。


ミュリエルの傷が治って、ベッドから出られるようになった頃、カーマイン家の没落のニュースが流れて来た。財務局の調査により数々の悪事が露見し、違法薬物を摂取した夫人や娘が社交会で売り捌いていたことまで発覚し、一家は離散となったとか。


役人がきちんと仕事をした結果、正式な子爵の後継者はミュリエルであると公表された。

 「どうしますか? あなた子爵になりますね。」

つまりミュリエルの配偶者が後をとることになる。

二人の結婚式でミュリエルが囁くと、

「貴族って、柄じゃないよな。さっさと子供に譲るか。」

純白のウェディングドレスごと少し膨らんだお腹を大切そうに抱きしめてアランも囁く。


「いい考えね。」

世界で一番美しいとアランが思う微笑みだった。

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