勇者お断りします。
「勇者様、勇者様。助けてくださいよ。勇者アルバート様。」
とある村のはずれ、茅葺屋根の家の前で少女がドアを叩きながら必死に叫んでいる。
「大変なんですよ。東の街道に化け物が出て通れないんです。勇者様なら退治できるでしょう。助けてくださいよ。勇者様。」
「アーもう、うるさいな。他をあたってくれ。」
「待ってくださいよ、勇者様。このままだと市場が開けなくてみんな困っちゃうんですよ。」
「私はもう勇者は引退したの。誰か他の勇者にあたってくれよ。」
「とぼけないでくださいよ。勇者は生涯現役だってお祖母ちゃんから聞きましたよ。」
「私はもう人のために働くのはやめたんだ。勇者なんてやめてくれ、私は一般人に戻りたいんだ。」
「駄目ですよ。一旦勇者になったが最後、死ぬまで勇者を続けなければならないんですよ。」
「いい加減にしてくれ。私は暇じゃないんだ。」
「そこまで言うなら、こちらも手加減なしですよ。トリャー。」
「うお、なんだ、何をする。」
「こうなったら強引にでも魔獣がいるところに連れていくまでです。トリャー。」
「そうはいくか、ほら、もうほどけた。どうだ。」
「ぐぬぬ、やりますね。でも私はくじけません。なんたって、ケーキが待っているんですから。」
「どうしてそんなにかたくななんですか。引退だなんて言い出して。」
「もう嫌なんだ、戦っても、戦ってもむなしくなるだけなんだ。」
「でも、人助けができていいじゃないですか。困ってる人を助けられるならそれで十分じゃないですか。」
「嫌なんだ、困ってる人を助けても全然うれしくないんだ。もう帰ってくれ。」
少女を家の外に追い出すと、勇者はため息をついた。
「本当にもう嫌なんだ。」
「あともう少しだったのに、いったいどうしてあんなにかたくなに拒むんでしょうね。」
「やあ、ハンナ。どうだった。」
「あ、村長さん。それがどうしても助けてくれないんですよ。」
「まあ、無理もない。あの事があってからあの人はずっとああだから。」
「あの事って何ですか。」
「ああ、ハンナちゃんは知らないんだね。アルバートさんが勇者をやめるって言い出したわけを。」
「何があったんですか。」
「アルバートさんはね、王女様を助けられなかったんだよ。」
「どうゆうことですか。」
「王女様はね、ご病気にかかられてなくなってしまったんだ。あらゆる手を尽くしたんだけど、だめだったんだ。」
「そうだったんですか、でもどうしてそれで勇者を引退するなんて言い出したんでしょうね。」
「生きる意味を失ってしまったんだろうね。何をやっても、むなしくなるだけなんだろう。最愛の人を失ってしまったら。」
「勇者様にもそんな過去があったんですね。あれ、なんか困ってる人がいますよ。」
「あのー、すみません。私のご主人様はどこにいるのでしょう。」
「ご主人様ってどんな格好をした人ですか。」
「ええーと、髪形はピンクのロングで、甲冑を着ています。」
「目立ちそうな格好ですね。」
「ええ、困ってる人を見ると、ほっておけなくなるみたいで、すぐどこかに行ってしまわれるんです。」
「ついていくのが大変そうなご主人様ですね。」
「そうなんですよ。あっ、いたいた。ご主人様。」
「ああ、すまない、ロバートスン。」
「ご主人様、いったいどうしていきなりいなくなったんですか。探しましたよ。」
「それが途中で迷子にでくわしてな、送ってきたんだ。」
「そうでしたか、でも一声かけるくらいはしてくださいよ。」
「ああ、わかった。これからはそうするよ。」
「あのー、その様子だと旅の方ですよね。一度うちに来て話を聞いてくれませんか。」
「ああ、かまわないよ。」
「そんなわけで、困ってるんですよ。」
「なるほど、困っている人を助けるのが騎士の務め。喜んで引き受けよう。」
「本当ですか、わーい、ありがとうございます。では、さっそく魔物退治に出かけましょう。」
「いや、ちょっと待った。」
「あれ、村長さんどうしたんですか。」
「無駄な犠牲を防ぐために、テストさせてもらう。まず北の洞窟に行って帰ってきてもらう。洞窟の中に有るクリスタルを採ってきてもらおう。」
「いいだろう、そのテスト受けて立つ。」
「では出発。」




