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118 見えない怖いもの


「小滝じゃないけど、やっぱり不気味が悪いなぁ」


 俺はフルバンブーアーマーで薄暗い森の中をゆっくり進んでいた。


 朝のホームルームが終わってすぐに工作班全員と採集班から数人に、但馬、トラという大人数で、綿フラワーのさらに南側に向かった。

 みんな今できるだけの重装備だ。あまり離れないようにしている。


 南の森は薄暗く、木の幹もねじれたようなものが多い。

 はじまりの草原周りの木に似ているが、湿気はそれほどでもなく、草もシダ植物は少ないようだ。

 木の枝から垂れ下がる蔓は黒く、枯れたのか腐ったのか、だらりとして生気がない。


 生き物はいるようで、草を鳴らしてなにか小さなものが駆けていくが、姿をとらえることはできない。

 カエルが低い声で鳴くような音が頭上から聞こえてきて、俺たちが近づくと羽ばたきしてどこかへ逃げていくのは鳥なのだろうか?


 突然太い木の枝が動き始めて驚いたが、それが巨大なナナフシのような生き物だと気づいてさらに震え上がった。

 巨大カマキリのようなものがこの森にもいるかもしれない。

 ゆうべ巨大カマキリのことは話していたが、半信半疑のようだったみんなもこれで信じただろう。


 俺たちはゆっくり森の奥に進むが、新しい綿フラワーは見つからない。





「ん?」


 俺は足を止めた。踏み出した足の下の地面の様子が変だったのだ。

 やわらかい。むにゅっ、とした足ごたえ。

 俺は足もとに視線を落とした。特に変わった様子はない。

 俺が踏み倒した地面から生える草がちょっとまばらになっているくらいだ。


「どうした?」


 動きを止めた俺に気づいたのか、トラが声をかけてきた。ほかにも何人かが足を止めた。


「地面がやわらかい」


 俺が言った瞬間、地面の深いところでなにかが動いた。気がする。


「近づかないほうがいい」


 嫌な予感。

 後ろの足に体重を移そうとした時、素早く、すごい力で地面が持ち上がった。


「うわっ!」


 体が宙に浮き、俺はバランスを崩した。

 空中で地面に目をやった俺は、地面が大きく三日月形に裂けているのに気づいた。

 縁には白くて三角形のものがびっしり。サメの歯に似たそれは――牙?


「きゃあ!」

「な、なんだっ!?」


 俺は背中から地面に落ちた。ばくんと音が聞こえた気がする。

 俺は素早く四つん這いになると、後ろも見ずに猛スピードで地面を這って、なにかから距離を取った。

 途中で立ち上がって振り返る。そこにはなにもない。


「あれ?」


 地中から出てきたと思われるものの姿はなく、草の生えた地面があるばかりだ。

 しかし、トラたちは木の棒などの武器を草むらに向けて身構えている。


「どこいった?」

「まだそこにいる」


 トラが視線を草むらに向けたまま言った。

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