第9章 アイドル
前回までのあらすじ
かた先生の緊急手術で一命を取り留めたななちゃん。
ぎたろーの曲は人々にえがおを取り戻す。
次は、どんな人が
えがおになるのだろう・・・?
第3部 うめの編スタート!
日々、自分の成長したことを
少しでも感じることができれば
それで前進できたことになる。
同じことをやっていても、前に進めない時は
時にはアドベンチャー、つまり冒険の一歩を
踏み出してみると、
新しい世界が開けてくるのかも
しれないなぁ。
-----------☆------☆-------☆-------------
ベランダに出て洗濯物を干す。
天気は良い。だが、、
「涼しい風が吹くようになったなぁー・・いやむしろ寒っ!」
近くの小学校が、運動会の練習をしていた先週までは
むしろまだ暑いくらいだったのだが、
それがわずか1週間ほどで
冬の足音を間近に感じさせる
ひんやりとした空気を運んできている。
季節は下り坂だが、配信の方は、、
ありがたいことに、上り坂だ。
リスナーの新陳代謝、つまりは入れ替わり
は、およそ三ヶ月くらいの周期で
それなりに入れ替わる、と
どこかの枠で、分析が得意なライバーが
力説していたのを聞いた。
少しずつはこういった、知識のインプットで
リスナーを増やす努力を
これでもしている方なのだ。
そして、ちょうど配信を始めて3ヶ月くらいたった。
確かに、始めたばかりの頃と比べると
新しいリスナーさんも増えてきたし、
ある意味、順調?なのだろうか?
とも思える。
秋の空は、雲が遠く、きれいに澄んだ空が
どこまでも広がっているようだった。
心もどこか晴れやかになっていく。
俺の配信は、どこまで広がれるかなぁ。
こだまちゃんは、、、
かたさんは、、、
ななちゃんは、、、
この青空を
同じ日本の、
どこかで見上げているのだろうか。
少し寝不足気味なので、
盛大な、あくびを
秋の空に放つ。
ふああああああ。。。
なぜ寝不足なのかって・・・?
実は、昨日の配信では、こんなことがあった。
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ぎたろー「最近、新しいリスナーさんも増えてきて
うれしい限りですぅ。」
kodama3321「でも、もっともっと増やしたいよねぇ?」
ぎたろー「そうだねぇ、、どうやったらもっと増えるのかなぁ?」
kodama3321「やっぱ、ギフチャレ、でしょ?」
ぎたろー「ギフチャレ?ああー・・ギフチャレですか。。」
ギフチャレ、それはギフトチャレンジの略語である。
タイムラインや掲示板などで、目標値を公表する。
主に、投げ銭であるギフトの獲得を目指すことに
チャレンジするから、ギフチャレ、というわけだ。
前にも書いたけれどももう一度おさらいしておくと、
配信ライバーには、段位がある。
1~5段まであり、それぞれの段には昇段条件が課せられている。
配信時間
配信予告数
タイムラインへの投稿数
フォロワー人数
獲得コイン数
そして、、
ギフティング人数
他は兎も角、最後のこのギフティング人数は結構な関門である。
2段、3段くらいまでの昇段条件は
それほどそれほど難しくはない。
3段でも15,000コインにギフティング25人で配信時間10時間である。
配信時間の累計はどれだけロングで配信しても2時間まで
しかカウントされない。
だから10時間だと、最短で5日で達成できる。
4段も、先月は達成できた。
今、俺をフォローしてくれている人が500人ちょっと。
ネックのギフティング人数が
もうあと少しで4段昇段条件の
125人になったところで、こだまちゃんが
いろいろなライバーの掲示板で呼びかけてくれて
ギフチャレの名目ではなかったが、
10人ちょっとのリスナーが新規でギフティングしてくれた。
そのおかげで4段になることができた。
月が替わって、段位はまた1段にリセットされる。
地味にじわじわ来る。
段位は、配信の制限が解除されたりとか
配信そのものへの影響力はないけれども
新規リスナーの目に着きやすくなる配信スコアが
配信開始時点で高いスコアから始められるので
新規さんが入って来やすいのだ。
ある意味、ステータスのようなものだから、
そのためにギフチャレをやるというライバーの方が
圧倒的に多い。
一方で、托鉢のようにギフトを募るのは恥ずかしいと
ギフチャレを敢えてしない選択肢をとるライバーもいる。
確かに、見知らぬ誰かリスナーに、ギフト投げてくださいと
頼むのは何だか歯がゆい。俺もそのタチだった。
もしくは、ギフチャレをすること自体が配信として
負担だからもうやりたくないと、消極的に匙を投げるという
感じでギフチャレをしないライバーもいる。
ひとそれぞれ考え方は異なる。
どうしても、この「ギフトを投げてもらう」ことに
貪欲になれない自分がいた。
そりゃギフトはお金同然だから、
勿論多いに越したはないのだけれども、
汚いお金では絶対にないのだけれども、
何もせずに手に入れたわけではないのだけれども、、、
何もせずに手に入れたお金のように
コインやギフティングのため、
”だけ”
にギフチャレをするのはどうも性に合わなかった。
ぎたろー「そうだねぇ・・でもねぇ・・・」
うまく言葉に出来ない。
ぎたろー「ただ単に、段位の為だけにギフチャレはしたくないかなぁ。。」
落としどころはどこだろう。
もっと多くのリスナーに来て聞いてもらいたい。
その思いは本物だ。
その手段、方法が段位を上げて
目に付きやすくするために
ギフチャレをする・・・
う~ん、、、
通常、ギフチャレにはゴール目標を設定する。
新規ギフティング125人なら、
その人は4段を目指しているのだろう。
同じく新規ギフティング500人なら
最高位の段位5段だろう。
5段を目指すような人なら、
獲得コイン数の条件:30万コインは
大抵の場合、すんなりとクリアしている。
やはり、ネックはギフティング人数の場合がほとんどなのだ。
言葉を変えて、多くの人にシェアしてもらって
ギフティングを目指す「シェアチャレ」という言葉もあるが
こちらはあまり成功することはないみたいだ。
それこそギフチャレとは比較にならない程、成功のハードルが
高い。何しろほぼ見ず知らずの人の配信をシェアしてくれる
ようなリスナーはほとんどいないからだ。
自分だって、「全然知らない人だけどシェアチャレしてるので
シェアしてください!」と言われたところで知らない人の
配信を、自分のフォロワーにあまりシェアしたくないし
フォロワーがまたシェアしてくれるとも到底思えないからだ。
シェアチャレは到底できない、
ギフチャレはどこに落としどころをつけるか?
その時、ひらめいた。
ぎたろー「じゃあ・・・ギフチャレはします。
話し合って、いつするか決めましょう。」
kodama3321「おお!やるんやね!」
ぎたろー「ただし、人数は特に決めないで
数量設定なしで、時間をとにかく長めに配信します。
もちろん、腹案としての目標ギフティング人数は設定する
のだけれども、それが達成できてもできなくても
成功とか失敗とかのジャッジはしないこととします。」
こうすれば、このお題目は生きてくるはずだ。
ぎたろー「友達を増やしたい、素敵な出会いを増やしたい
それがギフチャレの目的かなぁ。」
yuriko0407「変わったギフチャレだなぁ。」
ぎたろー「新規ギフティングはお願いするけど、それだけで
人とひととの関係性が終わってしまうような
チャレンジにしたくないんですぅ。」
やえ07「それは素敵」
ぎたろー「やえちゃぁん、わかっていただけて嬉しいですぅ」
やえ07「じゃあ、私は、その素敵なギフチャレを
どうやってみんなに知ってもらえるように広げるか?を
考えてみるね♪」
ぎたろー「ありがとうございまぁーす!」
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・・・というようなことがあったので
じゃあ何をすればいいのか?というと
日付と時間を決めて
告知用の画像を作ったり
他のライバーの掲示板に宣伝文言を書き込みに行ったり
自分でできることは全部やったつもりだ。
そういうところは自分をストイックに追い込む
性格なので、
やるからには、ぬかりなく。
で、寝不足、、、というわけなの。
(ピロリン♪)
スマホの通知音だ。
なんだろう・・・
画面を見ると、インスタグラムのダイレクトメッセージのようだ。
リスナーさんに何人かフォローしてもらってて
やり取りもたまにある。
配信中のスクショをもらったりとか
そのくらいの使い方しかしないのだけれども。
ええと、誰からのメッセージかな・・
「やえ07です♪ぎたろーさんがギフチャレすると聞いたで
渋谷のスクランブル交差点スクリーンに、告知を出して
おきました♪明日の23時頃に流れると思いますので
見てくださいね♪」
・・・・?
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
?!?!?!
しししし渋谷のスクランブル交差点のスクリーン?!?!
智「やえちゃん♪こんにちは♪
どどどどどういうことかな?!?!」
やえ07「渋谷ハートメッセージって言いまして(ハート)
23時から30分の間に、いろんな愛のあふれるメッセージを
表示してもらえるサービスがあって、それにギフチャレの
告知を応募したら、見事!採用されたって返事がきました♪
明日の23時からどこかのタイミングで流れますよ♪」
ほほお、そういうサービスがあるのか・・
でも、渋谷まで行くには少々遠すぎる。。
智「やえちゃん、ありがとう♪
渋谷までちょっと遠いから、誰かに見に行ってもらわないと
見ることはできないかなぁ(汗」
やえ07「大丈夫です♪
ストリーミングでネット中継されますよー
リアルタイムで見逃してもアーカイブ動画も1日残ります♪
アドレスをシェアしておきますね♪
https://・・・」
なるほど、、それなら見られるな・・
智「なるほど!ありがとう♪
じゃあ、当日、確認してみますね♪」
------------〇---------------〇---------
ステージの幕が下りた。
うめの「ふぅー・・・」
暗くなっていたホールの照明が復帰し、
出口の方へ、アイドルファンの男性の大群が
出ていく。
その様子を監視カメラで確認しながら、
楽屋の自分の控室の方に足を向けた。
ガチャ・・
スタッフ「お疲れさまでしたー!」
うめの「はぁーい!お疲れさまでしたぁ♪」
スタッフ「今日も、うめのちゃん可愛かったよぉ~♪
次のステージも楽しみだねぇ♪そろそろ新曲出せそう?」
うめの「えへへへ(汗) まだ、、かなぁ・・・?」
スタッフ「そうかぁー、個撮(個別撮影会)は人気だけど
ステージももっと頑張って欲しいかなぁ。最近、
ちょっと入りの数は減ってきてるんだよねぇ」
うめの「チケット売れてないんですかぁ?」
スタッフ「そうなのよぉ・・やっぱりステージで歌う曲も
いつも同じだと飽きちゃうし、この”Tokyo萌えマロン!”
の特徴は何といっても、アイドル自身が作った曲で歌う!
が売りなんだからさ!うめのちゃんが曲をどんどん作って
くれないと、ファンが離れちゃうのよぉ~?」
うめの「はぁーい、、」
みほ「ほぉらー気を落とさない!私も結構苦労したよぉー?
新曲描くの。演奏はもっと大変だったけど(汗」
うめの「あの新曲!すっっごかった!」
みほ「でしょー?京都に旅行に行ったときに、その京都の
雰囲気をそのまま曲にしてみたんだ♪」
うめの「和風な感じがすっごい出てた!もうすぐ京都も
紅葉だもんね、季節感もピッタリ。」
みほ「うめのもさ、頑張りなよー?もう2か月曲書いてない
んだしさ♪」
うめの「とは言ってもねぇ~・・・」
事務所の方針で、プロに頼むと演奏にも作曲にも
お金がかかるき
どうせならメンバーがオリジナルの曲を書けるアイドル
という触れ込みでやっちゅーのが、うちのグループ。
ピアノとかキーボードを趣味でやっちょったき
この”Tokyo萌えマロン”のメンバーになれた。
とは言うても、地下アイドルなんやけれども。
着替えを終えて、控室を出る。
ホールの出口のドアをそーっと開ける。
いたことはないけれど、たまに熱狂的なファンが
どこからとものう見よったり
声をかけたりするにかあらんから
事務所からは「退所するときは、よく周りを確認して」
と言われている。
実際に、なりたての頃に、
ホールを出て歩いていたら声をかけられたこともあらん。
地下アイドルも、楽にゃーない。。。
時計を見ると、23時を少し回っている。
ちょっとヤバイ。
終電乗り遅れちゃう・・
駅までの道を小走りで急ぐ。
ああーん、もう!スクランブル交差点、、、
信号に止められてしまったき。。
腕時計を見ると・・
まだ終電までは・・・
5分ほどあらくでな、、、大丈夫。よしよし。
ふぅー。
渋谷のスクランブル交差点は相変わらず
にぎやかな雰囲気。
秋の夜空は、本当は、
星空がスーっと抜けるように
広がっちゅー筈なんに
東京って、げぇーに都会。
町が明るすぎて、
星空は全く見えん。
輝いているのは、星じゃのうて
スクランブル交差点から見える
ビルに設置されている巨大なスクリーンちや・・。
スクリーン「優」
スクリーン「し」
スクリーン「い」
スクリーン「歌」
スクリーン「声」
スクリーン「ぎ」
スクリーン「た」
スクリーン「ろ」
スクリーン「|」
スクリーン「ギ」
スクリーン「フ」
スクリーン「チ」
スクリーン「ャ」
スクリーン「レ」
スクリーン「配」
スクリーン「信」
スクリーン「明」
スクリーン「日」
スクリーン「や」
スクリーン「る」
スクリーン「よ」
スクリーン「!」
スクリーン「1」
スクリーン「8」
スクリーン「で」
スクリーン「聞」
スクリーン「き」
スクリーン「に」
スクリーン「来」
スクリーン「て」
スクリーン「ね」
スクリーン「(はーと)」
ぎたろーって人は配信ライバーなのか?
こんな風に書いてくれてるのは
多分、リスナーの人なんやろうな。
うちのファンの人は追っかけさんはおっても
こういうことしてくれる人は
多分おらんき・・・
うちも18アプリでの配信もやってるけど、
それもなかなか大変ぜよ。。。
アイドルがやりよると、、、
最初は、多分、罪悪感すらある。
もう、そんな感覚も、とうになくしちゃったけんど。
新曲披露の時は、
最初は、ライブで間違えても気まずくないように
配信アプリでやることになっている。
で、それをイベントとか投票形式に
事務所が設定しよると・・
ファン同士で”推しの合戦”が始まる。
うちの枠も、
そういう意味では
すごいギフトを贈ってくれるファンがおるき
何度も上位を取らせてもらいよった。
配信アプリ内では、コインという単位に換算されとるんじゃけんど
円にしよったら、50万円くらい・・?
多分、それくらいは一人から贈ってもらったり。
この人らは、何の仕事をしよるんじゃろ?
そうやって、贈ってもらっても
事務所が中抜きして、
歩合制のボーナスで、、
随分と、心許ない金額しか手元には入ってこん。
まぁそんでも、
居酒屋のアルバイトに明け暮れちょった頃に比べると
しんけ(随分と)、お小遣いは稼ぐるごつなった。
地下でも、アイドルは、やっぱしアイドルなんや。
地下アイドルというのは
テレビにバンバン出てるような
竹野坂46とか、洞爺坂48みたいなアイドルではなく
ホールでのライブ活動や握手会、
個撮会などをメインに活動している
アイドルのこと。
でも、いつかは俳優とか、地上アイドルとしての
活動を目指している子も多い。
うちの場合は、居酒屋でバイトしよった時に
たまたま話しかけられたお客さんが
地下アイドルのおっかけのおんちゃんで
お小遣いあんまり稼げんですという話をしたら
地下アイドルやってみたら?と
声をかけてくれたのが始まりやった。
高知の実家から
東京の私立女子大学に進学したものの
物価も高いし、
周りの女の子にあわして
エステ美容室に通ったり
服を買ったり
楽器を買ったり
スイーツを食べ歩いたりしていたら
あっちょいう間に
お金が無うなって困ってしもうた。
お家賃も、げに高いし。
何よりも一番お金がかかったのは
配信アプリの
課金だったりもしたんやけれども。。
ホストやないんよ?
そんで、居酒屋でバイトしだしたら
今度は寝不足で
だんだん、授業についていけなくなった。
単位も落としたりして
留年、なんてなったら
お母さんになんて言うたらええがやろう。。。
とか考えてたけど、
いざ、留年すると
別に何も言われなくて
留年したことも
言わざったらわからんのやないか思いながら
地下アイドルまで始めて
どんどんお小遣いが稼げるようになっていって
今では多分、そこらのサラリーマンの
月収の倍ばあは
がんばったら、稼げるくらいにはなった。
大学は休学した。
それでも、
なんだか、
日々は充実していた。
でも最近、、、
段々と
何か
もやもやして
できなくなっている自分にも気づいていた。
焦りなのか
新しくTokyo萌えマロンに入ってきた、みほは
現役の音大生。
家も、うちみたいな高知から出てきたんじゃのうて
東京の生まれ、育ちで
ええところのお嬢さん。
それでいて、地下アイドルもこなし
音大生の活動もこなし
アイドルやってることは親には内緒らしい。
どうやったらそんなうまく立ち回れるんじゃ。。。
音大で練習に忙しいって言いゆーそうやけど。
描く歌も
流石に音大生は実力が段違いで
うちも含め他のメンバーとは
頭一つ違う感じがする。
うちの音楽は、、所詮は趣味の範疇。
ファンには受けはいいんにゃろうが、
それも限界がある。
やき、人気も
このままじゃあ・・
取られてしもうてしまうんじゃがと
心配になって
曲もインスピレーションが浮かばいで
モヤモヤした気持ちになっていた。。。
でも、終電には、何とか間に合った♪
ふゅー。。
------------☆---------------☆---------
スタッフ「はーい、では次の方入りまーす♪」
うめの「よろしくおねがいします♪」
今日は、個撮の日。
個撮は結構、美味しいバイトなのだ。
午前中や午後の貸切デートプランとかを
申し込んでもらうと
もうそれだけで
一泊の旅行に行けちゃうくらいの
お金にはなる。
たまーに、そういう申し込みをしてくれる人も居るから
名古屋とかの遠征に付いてきてもらったら
こっそりと事務所には内緒で
お忍びで食事をしたりすることも。
ま、これはファンサービスってやつで
事務所に何か言われたら
個人恋愛ですって言えばいい。
地下アイドルは、
個人恋愛禁止ではないのでね。
まいお「おー♪うめのちゃん♪こんにちは♪」
うめの「あら!まいおさん(はーと)こんにちは♪
またいらしてくださったのね♪」
まいお「そりゃあ、うめのちゃんのためだから♪」
うめの「うふふ♪うれっしいわ♪」
パシャ・・
ピピッ・・
パシャ・・
ピピッ・・
パシャ・・
タイマー「ピピピっ・・・」
まいお「あ~もうおしまいかぁー(汗」
うめの「そんなに悲しまないでぇーまたいらしてね♪」
まいお「うん♪うめのちゃん♪新曲も楽しみにしてるね♪
すぐにダウンロードするから♪」
うめの「うん♪ありがとう♪」
パタリ。
ドアは静かに閉めた。
顔だけは、、、ちゃんとえがおを作っていた。
うん、そのはず。
少しひきつった表情になっていたかもしれない。
心からの”えがお”じゃない。
でも、それはアイドルだったら
誰でもそうなんじゃない・・・?
そうでしょ・・?
スタッフ「はーい、では次の方入りまーす♪」
うめの「よろしくおねがいします♪」
市後「どもー」
うめの「あらー♪イチゴ侍さぁーん♪」
市後「いちごって甘いのも酸っぱいのもあるけど、
バランスが大事なんだと俺は思うんだよなぁ。
・・・って俺の名前がイチゴだからって
苺みたいに呼ばないでって(汗」
うめの「うめのも、イチゴと侍は大好きです(ハート)」
市後「そういうところが、うめのちゃんらしいよねぇ」
うめの「前の曲の”いちご☆パラダイスナイト”は、イチゴさん
から発想を得て描いた曲だったんだよぉ?」
市後「だって、俺がそういう曲描いてって頼んだからねぇ。
酔っぱらった勢いだったけど。」
うめの「その話は、ここでしちゃまずいですよ☆」
このイケオジ、、というのが適切だと思うような
ほぼいつもスーツにグラサンのオジサマ。
紳士なのに私のオッカケでもある市後さん、
仕事は何をしているのかはわからないけど、
懐は厚いのは、多分間違いない。
個撮を貸切で頼まれたこともあるし、
うちの配信では、いつも
すごいギフトを贈ってくれる、いわゆるギフターさんなのだ。
ランキングに輝く名前”侍ひでおパパ”こと
市後さんは正に、侍・・・
財布的な意味ではなく、、
さっきのお忍びでお食事、なんてのも
このくらいの人ならば
全然安心できる。
というより、むしろ助けてもらったくらいで。。。
-------●----------●-----------
夏の名古屋でライブの後、
お忍びで味噌カツを食べて
お酒を飲んで・・・
ホテルに戻る道の途中で
市後さんとは逆の方向に分かれたあと、
私は、チンピラにナンパされてしまった。
それを、どう嗅ぎつけたのか
市後さんは戻ってきてくれて
市後「てめぇら、わしの彼女に何してくれとんじゃい!!」
・・と、いつものグラサン姿ですごんでくれた。
うめの「そぉーなのよぉー?この人がうちの彼氏です(ハート」
で、チンピラたちは立ち去ったんだけど
市後「危ないからと思って戻ってきたけど・・
飲みすぎたらダメだよ?」
と言って、、、彼女にはしてもらえなかった。
そういう距離感は、すごく紳士的に
取ってくれてるから
なんだかもっと信頼できてしまう。。。
安心感。
ホテルに一緒に連れ込んだりとか
そういう感じがしない所が
またステキな人。
実は、その時、名古屋で
書いてくれてと頼まれた曲が
”いちご☆パラダイスナイト”
こんな曲もできちゃうんだなぁ。
とその時は思った。
でも、それが
逆にうまくハマりすぎて
次の曲のインスピレーションが
なかなか出てこない要因にも
なっていた気がした。
------●----------●-----------
個撮の時間が続いている。
市後「最近、曲は描けてる?」
うめの「描けない・・なんだろう、自信なくしちゃって」
市後「うめのちゃんは、将来どうしたいの?」
うめの「う~ん、特に俳優になりたいとか女優になりたいとか
そういうのなかったんだよねぇ・・。」
市後「配信の方も、なんか元気なさそうだよね。夜の
雑談トーク配信もやめちゃったでしょ?」
うめの「だって、お金にならないんだもん」
市後「正直だなぁ((、俺が投げればいいのか?」
うめの「イチゴ侍はいつも一杯投げてくれてるからいーの」
市後「じゃあどうすればいいの?」
うめの「わからない・・」
本当に一瞬、心に穴が開いたみたいだった。
うちは、、、
どうしたいんだろう・・・
大学も休学して
地下アイドルも、新曲が描けない。
うめの「どうしたいんかなぁ・・」
市後「ライブ配信を見ることはあるの?」
うめの「うん、むしろ結構見に行ってる方だよ?」
だって、ライブアプリ18のVIPな課金で破産しかけたんだし。。
市後「なら、最近、人気のカウンセラーライバーさんの
配信枠とか言ってみたらどう?簡単な質問に答えると
心理状態とか性格とか分析してくれて、結構役に立つらしいよ」
うめの「そんな枠があるんだ?」
市後「俺もこないだ、フォローさんのシェアで教えてもらった
んだけどね、行ってみたら結構リスナーさんが次から
相談に来てた。何もない時は歌ってるらしいけど。」
うめの「なんて人の枠なの?」
市後「またインスタにDMしとくね、確か・・・かた416って
ライバーさんだったと思う。」
うめの「かた?うーん、聞いたことないかなぁ」
市後「まだ始めたばかりのライバーさんじゃないかな。
ライバーレベルがそんなに高くなかったし。」
うめの「なるほどねぇ。色んなライバーさんがいるんだぁ
そりゃうちの人気も陰りがでちゃうよ・・。」
市後「ギフトのことはお任せあれ」
うめの「いつもどーもありがとう♪
また、遠征の時は、美味しいもの食べようね♪」
市後「いつでも、都合つけとくよ~」
タイマー「ピピピピ・・・」
自分で配信をしているIDアカウントで
リスナーをすることはほぼまずない。
どこにファンがおるかわからんきね。。
やき、裏アカウント、いわゆる裏アカで
というか、こっちがもともと
課金し散らかした
本アカだったわけなんだけど・・
今夜は久しぶりに、
ゆっくり配信を見に行くかなぁ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
うめのちゃんの悩みを解決するのでしょうか??
次回にご期待ください♪
※土佐弁は、監修してもらってませんので
ご指摘あればどんどんお知らせください!
ここ不自然!とか
そんな言い回し言わないよ!とか
教えてくださいー!