第5章 Chelsea
(前回の最後)
もう、時計は0時を回っている。。。
そういえば、今日は18見なかったな・・
誰かやってるかな。
・・・あれ?
ぎたろー、こんな時間にも配信つけてる・・
おそるおそる、
赤くなっている輪っかを
タップしてみる。
こんな時間に、
あの顔で
弾き語り配信やってるの・・・?
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ぎたろー「だから、それが優しい言葉とは限らないし
なんだろうかー、うーん、愛ですよ。愛がねぇ。
気持ちが伝わったんじゃないかなぁ。」
・・・雑談かな?
画面には、マイクが大きく映ってはいるが
顔出し配信ではないみたい。
「マイクテスト」と書かれている。
しばらく潜ってよう。
話の内容は二転三転していく。
ぎたろー「あのー、、そうですよね」
yuriko0407「私もね、歌詞を書いてみたいんだ」
ぎたろー「そうなの?」
yuriko0407「だから、思いついた歌詞をノートに書いて
るんだけど、なかなかいい言葉がでてこなくてねぇ。」
ぎたろー「さっきの歌詞もすばらしかったよ?」
yuriko0407「ありがとねー」
ぎたろー「伝わるというか、あふれる感じ。」
ちょっとだけ、私のあふれた感情も聞いてほしいな・・
「kodama3321が応援(1)を贈りました」
ぎたろー「こだまたぁーん、いらっしゃい♪」
kodama3321「こんばんは」
雨雲の降りしきる雨の中を飛んできた飛行機が
やっと、小さな飛行場に、たどり着けたような
そんな気分になった。
kodama3321「ぎたろーは優しいね」
なんで突然こんなこと書いたんやろ私。
ぎたろー「んー?どしたのかなぁ?何かあったのかな?」
なんでわかるん?何かあったって・・
それともわからず言ってたりしーひんやろうな?
kodama3321「いやなことがあった」
書いちゃった。
kodama3321「1日寝ちゃった。聞きたくないこと、
言われちゃって。」
ぎたろー「んー、、、もしよかったら聞かせて?」
kodama3321「旦那がね、、、」
そこから先は、少し迷った。
また、瞼に熱い何かがこみあげてくる。
なんで・・・
なんであかんの・・・?
私の夢やった・・
子供と一緒に、家族で
楽しい家庭にする夢・・
もぉ・・・
ぎたろー「旦那さんが、何かあったのかなぁ?」
kodama3321「いやなこと言った」
ぎたろー「あぁー・・なるほど・・」
kodama3321「離婚したいわ」
ぎたろー「んー・・いいんじゃない?」
kodama3321「簡単に言うな!」
ぎたろー「すみません、」
kodama3321「でも、それも考えなきゃかも」
ぎたろー「合う、合わないだってあるんだし、
そんなに離婚自体が悪いことだとは思わないよ?」
・・えっ?
ぎたろー「だって、それでちゃんと自分と合う人と
その後のすごく長い人生を・・ずっと一緒に過ごす
わけだからさぁ?」
ぎたろー「合わない人とずっといるよりかは
いいと思うんだけどねぇ」
kodema3321「そうだよね。」
ぎたろー「大事な人と一緒に居たいって思うから
一緒にいるんじゃないかな?」
そういう人は、、、
そう、、
それは・・・だ
みなまで言わせるな。。
kodama3321「そういう人は、ぎたろーはいるの?」
・・・
見てられないかもしれない。
胸の奥が痛い。
何なら、また瞼が大雨洪水警報を発令中なんやけど。。
どうにかして、これ。
ぎたろー「んー・・、そうだね、こだまみたいな?」
・・・えっ
胸の痛いのは、一瞬もっと痛くなった。
大雨洪水警報が、一気に鳴りやんだ。
kodama3321「お世辞うまいね」
そうだよ、お世辞よね。
ぎたろー「お世辞に聞こえた?んー・・」
ぎたろー「初めて配信に来てくれた、大切な人だからね」
ぎたろー「そこからも、ずっと応援してくれてるし、
そういう、あったかい愛を感じるんですよね。」
そうだったの・・・
kodama332「そんな風に思ってくれてたの?」
ぎたろー「そうだなぁ。」
ぎたろー「そう、私が配信を始めて、、
誰かに聞いてほしいなって待ってたところに
やってきてくれた、そういう大切な人。」
ぎたろー「時間を止めて、こだまを連れ出して・・
そんなことが出来たらいいかなぁ。」
・・なんか恥ずかしいことを・・
よく、そこまで言えるわ・・
ぎたろー、本当に
私の事、よくわかってくれてる・・・
今すぐ、連れ出してよ。。
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朝起きると、まずすることは一杯のコーヒーを
煎ることから始まる。
ほろ苦い香りは、人生のほろ苦さを示しているようだ。
メールをざっとチェックして、
デジタル新聞の記事をざっと目を通して・・
着替えをざっとすると、ざっと仕事モードに
入る。
ゴミ箱のごみはざっと捨てておかないと。。
コーヒーのキャンディの包み紙がゴミ箱の
半分くらいを占めている。
そんな日常のスタートが、どうもモヤモヤする。
昨日、あの話を聞いたからだろうか。
心のしこりは、ざっと消せないのがもどかしい。
どうすればよかったのだろう。
俺に出来るのは、昨日は話を聞くことだけだった。
多分、これからもそうなのだろうか。
本当に・・・?
何とかしてあげたいとは思う。
kodama3321は、きっと辛い思いをしている。
それを何とかしてあげたい。
しかし、それはある意味、画面の向こう以上に
距離を持たなくてはいけない気がする。
リアルの関係ではない。
あくまでも、ライバーとリスナーなのだから。
それをどうこうする、出すぎたことなんじゃないだろうか。
うん。
でも、それはそれでもどかしい・・・
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お昼になった。
さて、今日も何を食べようかなと。
ラーメン、、、食べたい。
車を走らせ、どのラーメンを食べるか考えていると
すぐに行きつけのラーメン店に着く。
やや小汚い感じの店の雰囲気がもう美味しそうな雰囲気を
醸し出している。
好物のキムチと一緒に食べる醤油ラーメンの美味さは無類だ。
のはずなのに、、、
今日はキムチの辛さが感じられない。
どうしてだろう。
クルマの中では、あんなにラーメンのラインナップから
選び抜いた一品だったはずなのに。
心はどこか、部屋に置いてきてしまったかのように。
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部屋に置いてきてしまったはずの
自分の心を、、、
あれ?自分の部屋の中にも見つからない?
という例えをしてみたけれど、
それは、午後からも自分の仕事に熱が入らなかった
ということの例えだ。
受注している某大学のwebページは
秋までに納品しなくてはいけないが、
まだ半分も出来ていない。
もう少しペースは上げなくてはいけないと思うものの。
何でもデザイン学科ができるということで
デザインの専門家としては
それに恥じないモノを作っておかなければと思う。
そんなプレッシャーも
kodamaの話も
どうも、心にしこりを残してしまう。
そんな時に、したくなるのは、、
歌うこと。
ギターを奏でる。
ギターの音色が、
俺を
心の世界へ連れていく。
そこは自由な世界。
表現したいと思う心が
思いのままに表現できる世界。
ああ、そうだ、、
少しでも、この気持ちを
代弁してくれるのがギターなら
新しい気持ちを
表現するのも、
またギターでできることなのかもしれない。
曲、、、
久しぶりに書こうかな。。。
そう思うと、不思議と
ギターを握る手に力が入る。
椅子に座り、鉛筆を持つ。
メロディーとか、
歌詞は、
そのインスピレーションというか
自分の気持ちがまずは高ぶっていって
そこからひとつひとつパズルのように
当てはめていく。
頭の中の
無限に広がる世界から
自分で言葉を、柄杓ですくうように、
ひとつひとつ、すくって汲んでいく。
メロディーの組み合わせは、ある程度は
理論的に組み合わせたり、
好きな組み合わせを持ってきたりもしたけど
それは、この自然と瞼にあふれてくる
熱いものを載せるのに相応しい
メロディーを組み上げる。
まるで、心の奥底の
黒い部分から、まるでぶわっと湧き出てくるように。
そうやって、曲を作ろう、と
思いが湧いてきてから
曲そのもののインスピレーションが
自分の中に湧いてくる。
それを、俺のギターで
形を作っていく。
輪郭線を描いていくように。
素直な気持ちを、メロディーに乗せるのは
何年ぶりだろう。。。
前は、どんな感覚で歌詞を書いていたかなぁ。
年齢相応、今の自分に書ける歌詞は
昔の俺だったら書けなかっただろうし
あの時の俺の書いた歌詞は
今の俺には書ける情熱というか
それこそ若さが
足りないのかもしれない。
よく、年を取ると子供に戻っていくなんて
言われるけれども、
語彙がなくなるわけではないけれども
それほど、増えたわけでもない。
強いて言うなら変わったのは
感受性。
だから、その人の気持ちを思い浮かべて
心に浮かぶメロディーを
今、ここにしたためる。
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新曲は、念入りに練習はしてきた。
メロディーは、明るく、ポップに。
元気づけられるように。
出来上がった歌詞は
ちょっと自分でも恥ずかしくなるような
そんな歌詞だけれども
大の大人が真面目に面と向かって言えなくても
歌詞にしてしまえば、
それは現実の世界を、ファンタジーの世界のような
あたたかな世界に変えてくれる。
夏の熱い日々は
夢の日々に変わっていく。
そう、君が変えてくれた。
You are …
my angle.
今日も配信をつける。。。
久しぶりに、ちょっとドキドキする。
配信をつけると、常連のメンバーがインしてくれた。
メンバーは入れ替わりも多少あるが、
定着してくれた人が多いのはありがたい。
ちなみに、姉もその一人となっている。
「yuriko0407が応援(1)を贈りました」
ぎたろー「ゆーりこちゃーん、こんばんは♪
あーりがとぉー」
今日はこだまは、来てくれるのだろうか?
「かた416が応援(1)を贈りました」
おや、初見さんのようだ。
ぎたろー「初見さん!いらっしゃいませー♪
ぎたろーと申しますぅ。よかったら弾き語り
聞いていってくださいねぇ」
かた416「よろしくお願いします!」
初見さんが来たときは、恒例行事をするようになった。
山崎まさよしの、セロリを弾くことだった。
その前に、少しだけプロフィールを見せてもらう。
男性のようだが、リスナー専門らしく詳しいことはわからない。
まぁいっか。
気に入ってもらえるように、頑張ろう・・!
ぎたろー「育ってきた環境が違うから、好き嫌いは否めな い・・・」
淡々と見えるかもしれないが、正しく歌いきるのは
それなりに難しい。
間違ったりもするし、体力がきつい時もある。
それが、微妙な演奏の違いになったりするけど
今日は少し迷いがあったのかもしれない。。
一か所、弾き間違えた。
ぎたろー「ありがとうございました♪セロリ、でした」
ふぅー。。
かた416「(拍手)(拍手)(拍手)(拍手)(拍手)」
どうにか形にはなったかな。
かた416「少しお疲れですか?」
ぎくり。
見抜かれていたか・・・
ぎたろー「ちょっと熱が入りすぎちゃったのかなぁ」
かた416「無理はされないでくださいね。」
優しい人だなぁ。
「kodama3321が応援(1)を贈りました」
お!きた!!
ぎたろー「あら!こだまたん!いらっしゃーい!」
真打登場。
ぎたろー「こだまちゃんね、実は・・」
少し心が震える。
ぎたろー「聞いてほしい曲があるんだぁ」
譜面を準備する。
落ち着け落ち着け。
パラパラ。
kodama3321「こんばんは。ん?聞いてほしい曲?」
ぎたろー「そうそう、実はね、久しぶりに新曲をね、
書いてみたんですぅ」
ぎたろー「それを、聞いてもらいたくて。いいかなぁ?」
聞いてもらいたい。
その気持ちには嘘は全くない。
でも、少し恥ずかしいというか
うまくいかなかったらどうしようとか
今更、余計な不安が募る。
ええい、もうここまで来たら、
やるしかないっ!
・・・
ぎたろー「それでは・・
お聞きください・・
Chelsea」
・・・
ぎたろー「Sunshine♪ moonlight♪
You are my angle~
~♪~(Youtube で”ぎたちゃんねる Chelsea”で検索してみてね )~♪~
ぎたろー「You are my angle♪ You are my sunshine♪」
どんな人をイメージしたらいいいんだろう。
でも、それは自分にとっての姿でいい。
ならば、それは天使のような姿でも
いいんじゃないか。
届かないかもしれないけど
届け、この思い・・・
・・・
4分ちょっとの時間で伝えたいのは
そんな、俺の想い。
ぎたろー「オリジナルソングで、チェルシー、でした」
ふぅー。
kodama3321「(拍手)(拍手)(拍手)(拍手)(拍手)」
yuriko0407「拍手)(拍手)(拍手)(拍手)(拍手)」
かた416「(拍手)(拍手)(拍手)(拍手)(拍手)」
ぎたろー「実はこの曲はね、こだまちゃんをイメージして
作ってみたの。どうですか?」
kodama3321「えっえっ(汗)」
ぎたろー「こないだ、大変だって言ってたから・・」
ぎたろー「何かできることはないかなぁって思ったら
自分にできるのは、歌うことくらいかなぁって思って」
ぎたろー「それで、自分の思いを歌にしてみました。」
ぎたろー「あの時に言ってたことは、本当なんだよって
少しは伝えられるようにって思って」
kodama3321「十分に伝わってます・・」
kodama3321「ありがとう」
「kodama3321が、巨大ハート(499)を贈りました」
画面に、ボーヤ君が大きなハートを押してきた。
ぎたろー「ありがとうはこっちのセリフだよぉ」
kodama3321「思わず、笑っちゃったよ」
kodama3321「なんで私の為なんかに曲作ったんだろって」
kodama3321「確かに曲作ったら教えてって言ったけど」
kodama3321「まさかこんなに早くなんてね」
そりゃあ、あなたをえがおにする為ですよ。
俺のエンジェルの、、
あなたのために。
これが、俺なりの、独自のレシピなのかもね。
ぎたろー「喜んでもらえたのなら幸いです~」
ぎたろー「結構、頑張ったんだからねー疲れちゃった(」
かた416「お疲れですもんね」
yuriko0407「泣けるねぇ~」
まだ少し、、左手が震えている。
こんな気持ちはいつぶりだろう。
~あとがき~
間が空いてしまってすみませんでした(汗
第一部、こだまちゃん編、これで完結です♪
チェルシー初演奏の配信はこだまちゃんsideの
描写がまだですが、あらすじはお分かりいただけたかと思います。
次回から、第二部、かたさん編になります♪