表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
えがおのレシピ  作者: 藤坂みやこ
1/10

第1章 帰りの始まり

※この題名は、ぎたろーさんより使用許可を得てタイトル付けしています。

※この小説はフィクションです。ライバーのぎたろーさんの実際とは異なります。



  1章.帰りの始まり


愛ってなんだろう・・・


愛・・・


温かい愛・・

  


-----



  時計を見ると、時刻は午前5時


  神戸を昨晩19時に出航したフェリーは

翌朝、大分に6時20分到着予定だが、

昨日からの天候が悪いのと、エンジントラブルに伴う

  復旧作業の為、2時間は遅れる見込みらしい。

  

  乗船時のアナウンスは女性の声だった。

  船員さんなのだろうか。

  案内係なのかなぁ?

  そんな想像はさておき。

  遅れようとも安全に着いてくれたら

  それでいいかなぁ。


  昨晩、船内のレストランで

  寝るためにと

  深酒をしたにも関わらず


  どこかの客室に響く

  誰かのiPhoneの木琴のアラーム音のせいで

  意外と早く目が覚めてしまった。



  ケチらず、個室にしておけばよかった。。


  お酒がまだ少し残っている。

  強い方なので、そこまで頭は痛くない。


  だが、

  客室で横になっていると、



  痔に響く。


  こぎれいな船内の待合室はどうも落ち着かない。


  さとしは、どこにさまようでもなく、

  客室外の展望デッキへと向かった。




  ひんやりとした空気、時々、ゴオオっと風が頬を撫でる。


  空はまだ薄暗い。

  太陽が見えないウロコとなった曇り空が、見渡す限り広がる。

  

  俺の心の雲は晴れるのかなぁ・・・


  痛い痛い・・・


  お尻が痛い・・


  いや、痛くはない。


  何も考えられない。


  でも考えておかなくちゃ?

  

  何を?


  将来?

  

  これから何をするか?

  でも、それを考えるならば、

  今まで何を経験してきたかを考えなきゃだめか?


  全部一からやり直す?

  花はなぜ咲く?

  

  泣いても叫んでも

  時間の流れは止められない・・


  ぶどうとか、みかんを

  口いっぱい食べたら

  どんな気分になるんだろう?


  こういう風に考えていると、

  また曲を書きたくなる。

  最近、そう言えばギター弾いてなかったかな。


  いろんなことを一人で考えて

  独り言で呟いて

  自分の考えを整理する。

  それが自分との対話の時間。

  何となく、心の整理をするために

  いつの間にか始めた習慣だった。

  こうしていると、時間が経つのが

  恐ろしく早く感じる。


  空のウロコ雲は、いつの間にかだいぶ晴れて

  ほとんど青空が広がっていた。


  「智、やっぱりここにいたか!」

  

  タンクトップに茶髪のポニーテール

  この女性は、心ときめくような素敵な彼女ではなく

  実の姉である。


  智「考え事してた」


  由里「考え事好きだねえ」

  

  智「悪い?」



  由里「でもそうやって、昔はたくさんいろんな曲作ってたよねぇ。バンドやってた時は。」

  

  姉は、昔、バンドをやっていた時のリサイタルにはたまに聞きに来てくれた。

  小さな箱でしかやることはなかったが、

  自分でも、たくさん色んな曲が描けたと思う。


  智「だいぶ昔の話でしょ。」


  由里「私は結構いいと思ってたけどなぁ。

    歌うの好きでしょ?」


  智「好きというか、そういう表現方法かな」


  由里「いろんな例えをするのが上手いよね。

    男性の描く曲ってそういうなの多いけど」

  

  智「それ、褒めてることになってないよ?」



  由里「へへーん」


  バンド仲間。

  高校から大学の頃は、いろんなことを表現したくて

  とにかくギターを弾いた。

  ギターだけに飽き足らず、これからは

  ドラムの時代だと、ドラムに没頭して打ち込んだことも

  あった。


  それが、俺の音楽を表現する手段だと思っていた。


  社会人になり、それぞれの道を歩むようになった。


  朝早くから会社に出社し、夜遅くまで

  デスクからは離れられない生活。


  ギターは実家に置いていた。

  帰省の時にも、特に出してきて触る元気もなかった。


  そういう表現をしたいという

  そもそもの欲求が

  俺から完全に欠落してしまっていたのかもしれない。


  サラリーマン生活のせいで。


  自分の中で、


  言うならば、

  

  糸が切れていた


  ぷっつりと


  

  いつの間にか、表現したいという

  思いも曇ってしまっていたような

  気がする。


  由里「仕事のあてはあるの?」 

 

  智「独立してやるよ。顧客は今でもつながってるから」


  誰かの為に作るデザイン。

  そんな肩書にあこがれて

  webデザイナーになったものの

  

  現実は、無茶苦茶な仕様と限られた予算とのせめぎ合いを


  自分のサービス残業で埋めるしかないという


  理想と現実が大きく離れた

  そんな生活だった。



  でも、その生活とも


  全部おさらばして、


  今、こうしてフェリーに乗って


  地元の九州に帰ろうとしている。

  

  荷物の数が多いのと、

  部屋の引き払いの手伝いに姉が来てくれた。


  

  結婚しないのは、相手が見つからないからというが

  理想が高すぎるからなのではないかと

  密かに予想している。


  由里「いいよねぇ、あんたは何をやらせても

     才能あるんだから。私なんか習字ですら

     まともに段を取れなかったんだぞ?」


  智「才能なんてないよ。周りが助けてくれただけ。」


  由里「それも才能のうちでしょ?」


  智「そうかな?」


  由里「人柄なんて、自分にはわかんないけど、

    周りの人は、無意識に図ってたりする。

    だから、ちゃんとしてる人の所には

    ちゃんと人が集まるでしょ。」


  智「集まってくれるからこそ、感謝してるけどね」


  周りの世話を焼くのは好きだった。


  自分を犠牲にするのも、時には厭わない。


  自分ではそういう性格だと思う。


  でも、それは自分が自分だから


  それ以外の性格になったことはないし、

  

  わからないことではあるけど


  

   つながり


   

  それがいつまで続くかわからないけど



  それに感謝をすることは

  いつも忘れないようにしてきた

  つもりだった。


  サラリーマンだった自分を


  そうして支えてくれたのは、

  

  地元の家族だったり、知り合いだったりした。


  元バンド仲間メンバーも、地元ではサラリーマンだが

  

  都会のサラリーマンほどは忙しくなさそうだった。



  いつかは、みんなでメジャーデビューして


  CDがバンバン売れまくる人気アーティストになろう!


  なんて夢を語っていた仲間たちも


  車のディーラーだったり、


  市役所の市民課の主任だったり


  それでも、朝早くから夜遅くまで


  デスクにかじりつき、ということはないらしかった。




  いつかは  みんなに、


  自分の歌を聞いてもらいたい。

  

  その思いは、心の中の引き出しの


  奥の方にしまってあったかもしれない。


  取り出すことができる日は


  来るのだろうか?



  親には、まず結婚相手を見つけろだとか

  

  いろいろ言われるけれど

 

  その暇は今までなかったから、

  見つけられるはずもなかった。


  由里「あ、そうだ、もうすぐJINさんの配信始まっちゃう


     海の上って電波悪いからなぁ(汗


     ちゃんと見られればいいんだけど」


  智「何みようとしてるの?」


  由里「配信アプリだよ!今はやりの

    18、エイティーンっていうアプリなんだけど

    それで、いつも見てるJINさんの朝配信が

    始まる時間がもうすぐなの!」


  智「JINさんって誰?」


  由里「普通の一般人の人なんだけど、沖縄に住んでて

    ベースを弾いたり、歌ったり、雑談したり

    してくれるの。結構はまっちゃうよ?」


  智「ふーん」


  由里「智もさぁ、アカウント作って応援にきてよ!

   JINさん無料ギフト集めてるんだけどちょっと

   協力してよ!」


  智「そこまでするの?」


  由里「絶対面白いからさぁ!私も最初ぼーっと見てただけ

   だったんだけど、だんだんハマっていっちゃって。

   毎日、朝7時と夜の22時から配信やってるんだよ。」


  智「姉ちゃんも配信してるの?」


  由里「私はただのリスナー。はまっちゃって今月課金額やばいんだわ」


  配信投げ銭アプリがある、という話は耳にしたことはあった。


  Twitterのアカウントでも、フォローしている元女優の

  アカウントで、時々この18のアプリで配信をしている


  みたいな呟きをみたことはあった。


  配信アプリって一般人も配信できるのか。


  その時、はじめて何となくそう思った。


  誰でも、配信ができる。


  その先に居るのは普通の一般人。


  そんなの見ても本当に面白いのか?


  

  何か確かめてみる必要がある気がした。


  智「どうやって見るの?」


  由里「とりあえずダウンロードして、ログインするアカウント作って、プロフとか適当でいいから、とにかく

  JINで検索して、見にきて!”じぇーあい、えぬ”だよ」


  智「うん、わかった」



  プロフはとりあえず適当でいいらしい。

  

  名前は何にしようか?


  ギター弾いてたから・・・ぎたろー、、でいいか?



  今すぐに考えた割には、しっくりくる名前だと

  我ながら思う。


  JINという人の配信は割とすぐに見つからなかった。


  同じような名前のIDが多すぎて、


  どれが、姉の言うJINさんなのかわからないのだ。


  JINハートマーク1015


  とかだったり


  JIN_JIN(鳥の絵文字)(音符の絵文字)(きらきら絵文字)


  だったり・・・


  ていうか、


  こんなにたくさんの人が


  配信アプリやってるのか・・



  姉もこの中の一人なんだろうけれど。



  智「多すぎてどれかわからないんだけど・・・」


  由里「きゃあ(ハート)JINかっこいい~」


  智「あの・・・」


  由里「もぉー、ほらこれ!」



  そこに表示されたID名をよく見た


   JIN(冠)BASSギター(星マーク)



  智「それ言ってもらわないとわからないよ・・・」


  由里「あ!ゆきおさん当たりだしてるぅーすごーい!」


  ようやく、JINという人の配信に入れた。


  50代前半くらいだろうか。


  結構イケメンの男性が、ベースを奏でている

  

  おそらく自室なんだろう。


  だけど、なんだかその様子は不思議な部屋だった。


  なんか知らないキャラクターのぬいぐるみが


  後ろにたくさん飾ってある。


  ライダージャケットもつってある。


  その部屋で、帽子のつばを後ろ向けにした


  50代前半くらいのイケメン男性が


  ベースで曲を演奏している。


  投げ銭、ギフトというのだろうか。


  ぬいぐるみのキャラクターが色々画面の前に現れて

 

 何か踊ったり、ずっこけたりしている。


 というか、これ邪魔じゃないか。。。

 こんなの目の前にガンガン出されたら、

 

 後ろで演奏してるから顔見えにくくなるでしょ。


 智「このエフェクト、結構邪魔じゃない?」 


 由里「これは、ギフトなのよ。ランダムギフト。

  所謂、投げ銭だけれども、当たりが出るか

  はずれがでるか、ドキドキしちゃうんだ」


 智「外れたらどうなるの?」


 由里「同じコイン数を投げても、当たれば投げたコインよりも

  多いコインがライバーに渡せるの。外れたら、

  投げたコインよりも少ないコインしか渡せない」


 智「その差はどこが持っていくの?」


 由里「18アプリの運営。結構、当たらないもんなんだよ」


 智「それひどくない?」


 由里「でも、たまに当たるし、楽しいからつい投げちゃうんだ

 このコインをたくさん稼いでるライバーさんが人気ライバー

 ってこと。ちゃんとお金も入ってくるらしいよ」


 智「稼げるのか」


 由里「すごい人だと、月何十万も稼ぐライバーもね。 

 でもそれはほんの一握り。だいたい、リスナーして投げ銭

 してたら、そんなのすぐにトントンくらいなんじゃない」


 智「やる意味あるの?それ」


 由里「だから人気でなかったりすると、すぐに辞めちゃうライ   バーも多いけどね。配信するのも結構大変らしいし、人気出 すためにはちゃんと毎日決まった時間にやらなきゃいけな いって、いつもJINさんが言ってるのよ。JINさんも今月は 250万目指してるって書いてあるでしょ。」


 智「250万円かせぐの?」


 由里「違うよ、コインの数の事」


 智「なんだ」


 由里「今、190万コインかぁ、頑張れぇ~!JINさん(ハート)」


  画面を眺めていると、次々と色々なエフェクトが


  流れてくる。


  まるでコンサート会場のレーザービームのような


  演出のようなエフェクトもあるようだった。



  一曲弾き終わった、そのJINというライバーは

  笑顔で誰々ありがとうを連呼していた。



  なるほど、これが配信アプリか・・


  これを使えば、俺の曲も

 

  人に聞いてもらうことが、できるのかな・・・?



  そうこうしていると


船はまもなく、大分港への入港を告げるアナウンスが入った。

今度はオジサンの声だった。


さてと、そろそろ陸へ上がる準備をするかと


俺と姉は部屋に戻ってそれぞれの支度に入った。

 

  

第1章、完



  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ