ある自分勝手なバイカーの独白
初投稿です。
ある条件を課して書いてみました。
目を開けると天井があった。見たことのない白い天井だ。
ぼんやりした視界の端に人の姿が見えた。
ゆっくりと首を動かしそちらを見ると、そこには見たことのない男が驚いた顔をしていた。
傍らに聴診器を首から下げた白衣の医師と交換用の点滴を持った看護師もいる。その姿を見て、自分が今、病院にいるということを理解した。
理解はしたが、どうして自分がこの状況に置かれているのか分からない。
落ち着きなく辺りを見回して状況の確認をする。
自分の上に掛かっているのは清潔な白い布団。脇に置かれた台には小さな花瓶があり花が飾られている。
右腕には点滴の針が刺さっており、天井から吊り下げられたビニール製のパックから透明な液体がポトリポトリと一滴ずつ流れてきている。
もうすぐ終わりだったということもあり、看護師がゆっくり丁寧に針を外してくれた。
医師が屈んで視線を同じ高さに合わせ、矢継ぎ早に質問する。
「頭痛はありませんか?」
「吐き気はありませんか?」
「身体のどこか酷く痛むところはありませんか?」
身体の至る所に包帯が巻かれ、熱と痛みを伴っているが、我慢出来ないほどではない。
左手でそっと顔に触れてみるが、包帯もガーゼも無く、違和感はない。
察した看護師が小さな手鏡を貸してくれたのでそれを使い、顔に大きな傷跡や火傷が無いことが分かりホッとする。
「事故の前のことは覚えていますか?」
医師から尋ねられた時、思わず眉を顰めてしまった。
事故…何のことだろう?
医師と看護師、そして見知らぬ男の三者が顔を見合わせる。視線で会話をした後、医師が一つ頷いて話し始めた。
「あなたはバイクの単独事故を起こしてここに運ばれました。カーブを抜けたところで転倒し、路上に放り出されたんです。覚えていませんか?」
直後、脳裏に『あの瞬間』がフラッシュバックした。背筋に冷たいものが走り、思わず腕を抱えてしまう。
………
そうだ。いつものように、仕事が休みの土曜の早朝、県内でも屈指の山岳地帯を走る爽快な山道を相棒とともに走っていた。
ツーリング専門の地図や雑誌にもほとんど取り上げられることも無い快走路。
しかも、未明から早朝に掛けては、霧、路面を流れる湧き水、死角の多いコーナーが連続し、「上級者」でないと思うようにスピードを出せない難易度の高いコース。
制限速度など知ったことかと全開でかっ飛ばしていた。
まるで全てが受け入れてくれるかのように、途中にある数少ない信号もタイミングよく青で突破することが出来て、目的地の道の駅までのタイムは相当いい物が期待出来そうだった。
だがそこに邪魔が入った。
経年劣化した革ジャンと、量販店で買ったような厚手のオーバーパンツを履いた、古臭いバイクに乗ったバイカーが、行く手を阻んだ。
制限速度を律儀に守るでもない、かといって無理には追い越せない絶妙にいやらしい速度で、前に居座る。
先のコーナーや待避所をシミュレートし、暗に「どけ」とプレッシャーを掛けるが、一向に退く気配が無い。
次第にフラストレーションが溜まり、運転が雑になり始める。
呼吸を整え、「こいつは路上の礼節すら知らない素人だ」と自分に言い聞かせ、追い抜く機会を探り続ける。
登坂車線が出ても退こうとしないオンボロバイクに痺れを切らし、強引に登坂車線から抜きに掛かった。
頭に血が上った状態で無理に抜こうとしたのが致命傷になった。
『革ジャン』を強引に追い越した後、一応礼儀として左手で「どいてくれてありがとう」というハンドサインを送り、正面から一瞬目を離した。
いつもと違うポイントからコーナーに突入してしまった。
コーナーはいつも以上に深く、慌ててスロットルを戻し減速して、車体をさらにバンクさせたが、曲がり切れなかった。
しかもそのコーナーの出口には、バイカーに対する嫌がらせや速度を落とさせるための実力行使としか思えない、細い溝が路面に穿たれていた。
細い溝は、初めてここを通るバイカーにとって「初見殺し」とも言える嫌らしさで前輪の制御を不安定にさせる。
制限速度で走らない者には、交通ルールの鉄槌を喰らわせると言わんばかりの配置だ。
一瞬の出来事だった。
体重で押さえつけていた前輪が突然ガクガクと揺れ、ハンドルが震え出した。
震えは収まらず、尚も押さえつけて制御しようとする腕を振り払った。
気付いた時には天地が逆になっていた。
死期が目の前に迫ると、時間の流れが遅くなり、周囲の景色がセピア色に変わる…
そんなことはなかった。
コンマ数秒後、背中をしたたかに打ち付けた。
ごろごろと路面を転がり、そこで暗転した。
そして先程、意識が戻った。
………
「ば、バイクはッ!?」
自身の身体の心配より、迷惑をかけたであろう家族や会社の人たちのことではなく、真っ先に愛車の心配をした。
医師のほうを向いた瞬間、首筋の筋肉が攣った。
息が詰まり激痛に悶絶する。
「あなたのオートバイはショップのレッカーが引き揚げに来ました」
答えたのは医師ではなく、隣の男だった。白いカッターシャツに紺に近いスラックス、どこにでもいそうな格好だ。
白髪で、整えられた白い髭の、ダンディなお爺さんだ。いや、お爺さんと呼ぶのは失礼か。
体格もがっしりしていて、腰も曲がっていない。「おじ様」といったほうがしっくりくるかもしれない。
そういえば、何故医師でもない、見たことも無い男がいるのだろうかと疑問に思う。
もしかしたら事故の状況を聞きに来た刑事なのかもしれないと背中にじっとりと嫌な汗が流れた。
転倒したバイクは自分が投げ出された後、歩行者や対向車にぶつかって怪我をさせたのだろうか。そうなると、自分は最近よく聞くようになった危険なんとか罪とかいう罪状で逮捕されるのか、と恐ろしい想像が脳裏をよぎる。
「ああ、オートバイはそのまま反対車線の山の法面にぶつかって止まりました。人や車は巻き込んでいないので大丈夫…いや、大丈夫、でもないか…?」
どうして最後が疑問形なのだ。黙って先を促すと、言いにくそうに男が答えた。
「エンジン部分からオイルが大量に漏れていました。マフラーとタンクは傷だらけで、ミラーとウインカーは粉々。クラッチレバーは折れて、起こして取り回しをしましたが、まともにまっすぐ進みませんでした。残念ですが、素人目で見ても、全損です」
身体から一気に力が抜けた。
壊してしまった。
死なせてしまった。
5年間乗り続けた相棒は、自分の力量の過信による盛大な自爆という何とも情けない理由であっけなく逝ってしまった。
先月車検を通したばかりだったのに…
「その、何というか、正直命があっただけでも儲けものの酷い事故でした。他のクルマや歩行者を巻き込んでいたらそれどころではなかったでしょう」
口下手なのかデリカシーが無いのか、それとも両方なのか、男が眉を顰めて言う。
「では私はこれで…」と言い残し、医師に小さく礼をすると男は結局名乗りもせずに部屋から出て行った。
誰だったのだろうか。
職場の人間でもなければ事情聴取に来た刑事でもなさそうだ。医師でもなければ思いつかない。
「あ、そうか。あなたはあの人とは初対面でしたね。あの人が救急車を手配して応急処置をして事故の処理をしてくれたんですよ。今日はお見舞いに来てくれたの」
やや年かさの看護師が笑顔で教えてくれる。口は動かしつつ血圧を測り、体温計の準備をし、使い切った点滴を回収している。
「ご家族の方はさっき入れ違いで出掛けられたから、ナースセンターに戻ったら連絡しますね」
慣れた手つきで再度右腕に点滴の針を刺すと、医師と共に看護師も出て行った。
………
しばらくして両親が駆けつけ、さらに1時間後には兄弟姉妹も集まった。家族が全員揃ったのは正月以来かもしれない。
卓上カレンダーに貼られた付箋を見る限り、どうやら自分は丸一週間も昏々と眠り続けていたらしい。
警察から自分が交通事故を起こして救急車で運ばれたと連絡を受けた時点で家族が職場に連絡してくれて、それを聞いた上司が私傷病休暇扱いで処理してくれたらしい。
事故の翌日に上司は見舞いに来てくれて、状況からこれは長引くだろうと察し、残っていた仕事の引継ぎや要員配置の変更などに奔走してくれたそうだ。
働けなくなった人間を言葉巧みに追い詰めて問答無用で自主退職に持ち込む血も涙もない会社もあると聞いたことがあるから、本当に上司に恵まれた。
目を覚ましたら職と居場所を失っているなど悪夢でしかない。
最初は意識が戻り、思ったよりも元気そうな姿に喜んでくれた家族だが、この機会に言わなければとばかりに病室で重傷患者相手に大音量でのお説教が始まった。
「これだからバイクは危ないんだ!」
「家で待っている人のことを考えたことはあるの!?」
「姉さん危ないからもうバイクは止めて!」
「半身不随とか脳死状態になって一生介護してもらうつもりなのか!」
事故を起こした手前強く出ることも出来ず、神妙な顔つきをしているふりをして黙って説教を聞き流し、適度に相槌を打つ。
だが、言質を取られないように「バイクを止める。降りる」とは絶対に明言はしない。
周りの空気が変わったのは父の発言だった。
「バイクが壊れたのはいい機会だな。新しい車に乗り換えろ。次は頑丈な4WDだな」
嬉々として言う父のあまりに意味不明で無神経な発言に、思わず枕を引っ掴んで投げつけたくなったが、驚異的な精神力で堪えた。
発せられる空気が怒気を込めたそれに変わったことに気付いたのか、下の兄が父に「父さんそれはないだろう…」と窘めるも、父は「何か変なことを言ったか?」と不思議そうな顔をしている。
そうだ。父は昔からどこか頭のネジが飛んでいた。
勤めている会社では結構上のほうの役職まで上り詰めたらしい。だが、他人に対する配慮や遠慮というものが明らかに欠けており、それでも結果を出し続けたから出世したが、下についた人たちからは人望が無く、蛇蝎の如く嫌われていたと聞いた。
家族も同様で、兄妹の多さから多数決で父を追い込むことが出来たが、家族を部下と勘違いしている節があり、特に気の強い下の妹とはいつも喧嘩していた。
さっさと独立すればいいだけの話だが、自宅から徒歩で通勤できる場所に職場があり、田舎すぎて碌な賃貸物件がない職場周辺では、住宅手当も出ないのに部屋を借りるのもバカバカしく、問題を先延ばしにしていた。
顔を合わせる度に、
「母さんがお前の歳の頃にはもう結婚してお前を産んでいた」
とネチネチ小言を言うので、必要最小限の接触に留め、食事も手早く作り、捕まえた誰かを対面に座らせて嫌味を言うための場と化したダイニングではなく、自分の部屋に持ち帰って食べるという、「ホテル家族」と言われても仕方ないような生活をしていた。
最近はこういう実家暮らしに対するもっと酷い呼び名もあるらしいが…
基本的に反りの合わない父は無視するという強硬手段を取っていたが、母が防波堤になってくれていたのは知っていた。
直接言われたことはないが、いつまでも嫁に行かない長女について近所のおばさんたちの井戸端会議で相当肩身の狭い思いをさせているのだろう。
二人の兄は早々に結婚し、初孫も既にいるので、家系が途絶えるとかそういった心配はないが、長女がいつまでも行き遅れというのはさぞかし世間体が悪いだろう。
それにしても、娘がバイクで事故を起こして意識不明の重体になったことがいい機会だと?
バイクを新しく買うならまだしもどうして車を買う話になる?
次は頑丈な4WDだと?
それは自分が乗りたいだけだろうが!!
少し一人にしてほしいと家族に告げ、言外に病室から出て行ってくれと伝える。
察した上の兄が小さく頷き、皆を促して退室する。
固く握りしめた拳の上にポタリと水滴が落ちた。
バイクに乗ることはそんなにいけないことなのか。
確かに晴れた週末ごとに一人でツーリングに出掛け、雨が降れば弟が着古して捨てた油汚れの染みついた作業着を着て、薄暗い車庫の中でネット通販やジャンク屋で買い付けた部品や道具を手に整備をし、適齢期をオーバーしかかっているのにカレシも連れてこないし、かといって婚活もせず、焦った様子すら見せないのは、家族、特に両親からしてみればさぞかし心配だろう。(分かりたくもないが)
もやもやしたものが胸の内に溜まり、叫び出しそうになるのを必死で堪えた。
………
意識が戻って最初の食事は重湯だった。
胃は元気なので正直物足りない。
空になった器を取りに来た看護師にその旨を伝えると、食欲があるのはいいことだが、丸1週間も点滴で繋がれていたのだから、固形物を食べたら胃が驚いてしまう、少しずつ慣らしていきましょうと諭された。
プライバシーの保たれた個室だが、古い病院故か、個室トイレどころかテレビもなく、とても意識のある病人を入れておく病室とは思えない殺風景な部屋だった。
窓や扉に鉄格子が付いていないだけまだマシなのかもしれないが。
動けるのだが、リハビリの時以外は基本ベッドにいるように医師から言われてしまえば、することは食うか寝るかしかない。
街の病院にいるのに電波の届かない山奥にでもいる気分だ。
何もせず、ただベッドにいるだけというのは、いろいろと考えてしまう。
楽観的な自分と先を悲観する自分がせめぎ合い、焦燥感に駆られる。
特に日が完全に落ち、消灯時間後の時間は恐ろしい。
窓に映る顔を見て、つい目を背けてしまう。
怪我や傷ではなく、自分自身を静寂の中で見つめ直すというのが怖かった。
毎日様々な検査をして、ようやく退屈な入院生活から解放されるのが決まった週末。面会時間にドアがノックされた。
母親が来たのだろうか。それとも職場の同僚や上司かもしれない。
ノックに答えると看護師に伴われて男が一礼して入ってきた。男一人を女性の部屋に入らせるのを危惧した看護師の配慮だろう。
『革ジャン』だ。
扉をゆっくり閉める後ろ姿が、事故の直前、追い抜いた時と同じ格好だったのですぐ分かった。菓子箱を手にしている。
「思ったより元気そうですね」
どうぞ、と言って微笑みながら菓子箱をそっと差し出す。お見舞いの品らしい。
「入院中の楽しみなんて食事くらいしかないでしょう?」
確かにその通りだ。薄味でパンチのない料理にいい加減飽きていたところだったので、甘味はとてもありがたい。
しかも結構有名どころのお菓子で、この辺りだと県庁のある街の店で並ばなければ買えないような逸品だ。
いつか休日に自分でも買いに行きたいと思っていたが、ツーリングを優先してしまい、結局買えずじまいでいたものだ。
椅子を勧めると、ベッド脇に置かれていた丸椅子を引き寄せてよいしょと呟いて腰掛けた。
若々しい格好をしているが、中身はやっぱり年相応なのかもしれない。
顎髭を撫でて、『革ジャン』が何か言いたそうにしている。
言うべきか言わざるべきか、悩んでいるようだ。
怪訝そうに見つめ返すと、咳払いをして、ぽつりと言った。
「オートバイに乗るの、やめますか?」
瞬間、ドクンと心臓が跳ねた。
入院中ずっと悩んでいた。
家族の言う通り、バイクを降りるべきではないかと。
ショップに持ち込まれたバイクは修理されることなく事故車扱いで処分してもらった。
車両保険の付いていないエコノミータイプの任意保険だったので、今回の事故、自損事故では保険は一切使えなかった。全くの丸損だ。
決して安くない保険料を毎年欠かさず支払っていたのに損害をカバーできていない。いったい何のための保険なのか分からなくなった。
不幸中の幸いというか、母が勝手に自分を被保険者にして加入していた生命保険に入院の特約が満額で付いていたらしく、入院費の足しにはなるようだ。
ただ、被保険者の自分で申請はするが、それは入院費に消えるので懐には一銭も入ってこない。
自分がサインした記憶も健康診断もしていないし保険屋に会った記憶も無いのが少し気になったが、貰えるものは貰っておいたほうがいいと考えるのを止めた。
返答に窮していると、『革ジャン』が頭を掻きながら言った。
「その、なんというか、オートバイというのは難儀な乗り物ですね。雨が降ればずぶ濡れだし、雪が降れば走れない、車のように普段着でちょっとそこまでということも出来ないし、荷物も大して積めない。何かにぶつかればこちらが大抵当たり負け。その辺に停めておけば盗まれるし駐禁は取られるし、そのくせ停めていい場所はほとんどない。任意保険も車と比べたら妙に割高で、高速料金は何故か軽自動車と同じ扱い。何で皆そこまでして乗るんですかね?」
それは常々自分も思っていたことだ。
だが、今は「はぁ…」としか答えられない。「何自分語りしてんだこの爺さん?」と思った。
「まぁ、その、オートバイに乗る人は、ライダーは皆オートバイが好きだから乗っているわけですし」
その部分は腑に落ちた。
確かにそうだ。
雨風に晒されるのがつらいから、買い物に便利だから、着替えるのが面倒だから、という理由で母の軽自動車に乗ることもあるが、バイクがあればドライブに出かける機会はまずない。
車は車、バイクはバイクできっちり線引きが出来ている。
ライダーは皆自分のバイクが好きだから乗っている、分かる気がする。
というか、今はライダーじゃなくてバイカーというのが主流になりつつあるのではないかと思った。
正直、明確な違いなんて知らないし、知ろうとも思わないが。
「皆、あなたがまたオートバイに乗るのを待っていますよ…」
皆って誰のこと?
ショップの店員のこと?
それとも目の前のあんたが?
疑問に思っていると男はこう締めくくった。
「クルマは齢を食っても足として使えますが、全身を使って操るオートバイは、ある程度体力があって健康でないと危ないですし。貴女はまだまだ若い。降りるには早いのでは?」
そう言うと一礼して「よいしょ」と一言発して立ち上がり、踵を返した。
その後ろ姿はやっぱりあの時見た『革ジャン』と全く同じだった。
よく考えてみたらどうして『革ジャン』は今日『革ジャン』で来たのだろう? もしかしてここまでバイクで来たのだろうか。
看護師も退室し、一人残された部屋で考える。
しばらくすると窓の下からアイドリングが聞こえてきた。ゆっくり起き上がって窓辺に立つと、『革ジャン』がバイクに跨って何やらゴソゴソしていた。
身体が影になって見えないが、多分カーナビか何かを操作しているのだろう。
視線に気づいたのか、はたまた偶然なのか、跨ったまま『革ジャン』は振り返り、こちらを見た。
目が合った。
彼はヘルメットのバイザーを持ち上げ、高々と腕を上げ、親指を立てた。
ヤエーと呼ばれる対向車(仲間)に対してする挨拶だが、余程の変わり者でない限りやらない。
だが、やられて気分が悪くなるものではない。
そうだ、降りるにはまだ早い。
まだ自分は走り足りていない。
行ったことのない場所は星の数ほどあるのだ。
取り敢えず退院したら、一度ショップに顔を出そう。
次に何に乗るのかを決めなくては。
今度は何に乗ろうかと考えたら、なんだか急にワクワクしてきた。
いかがでしたでしょうか?
固有名詞(登場人物名、バイクの名称、町や病院の名前etc…)をとことん削ぎ落して物語を書けるかの実験でした。
決して登場人物たちに愛着がないという訳ではありませんが…