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悪意

 ジェーンは再び馬車に乗せられ帰途についた。目の前のハインリッヒが得体のしれない怪物のように見えた。そもそも留学したことで名誉帝国騎士を授与されていても、フラマン王国では平民扱いでしかないハインリッヒが王国宰相に就任したのは、帝国の圧力だと叔父から聞いていた。だから早く消さないといけないはずだったのに、今は目の前で悠然としていた。


 「城の中では帝国の手のモノがいっぱいいるから話ができないからね。ジェーン嬢、君にだけ言っとくがある条件を選べば、君の将来を保証してやってもいいぞ?」


 「将来って? 私を助けるのですか?」


 「ああ、そうだ。生まれるはずの子供もな。実は君の両親の遺言で、君を受取人に指定している資産がある。それと、私の知り合いがいる北の都市国家が引き受けてもいいというそうだ。そこに行けば、君の好きな職に就けるように便宜を図るそうだ。悪くないだろう」


 ハインリッヒのいう事が信じられなかった。叔父たちと同罪なのに何故追放刑で済むのかと。処刑されるか終生監禁の厳罰が妥当ではないかと。


 「どうして、許してもらえるような事をしてくださるのですか、宰相閣下?」


 「許す? いや、それは違う。君には悪いが死ぬよりも生きる方が辛いから、そうするのさ。死ぬよりもつらい生を与えるつもりさ。だってそうだろ、この国は滅亡するんだから。そうなったのも君たちが原因だから」


 「それって・・・つまりは?」


 「まあせいぜい苦しんでもらう。貴族として生きてきた君は過酷な道を歩んでもらいたい。それが償いなのさ。途中で投げ出すことも許さない、そのお腹の子もさ。もし、放棄すれば・・・死んでもらうさ」


 ハインリッヒは不気味に笑った。その笑いに悪意が籠っていた。


 「わかりました。それにしても王子、いえヴィルヘルム様はどうなるのですか?」


 「それは、絶望の谷底で生きてもらう。そのために君も協力してもらう。協力しなければヴィルヘルムと同じ目に遭わせるだけさ。君には奴を見捨ててもらう。それが条件だ、真実の愛なんてものは絵空事って思い知らせるのさ」


 ジェーンは目の前の男は復讐しようしていると分かり恐怖していた。ただ殺すのではなく苦しんで生きてもらうと企んでいると分かって。

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