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廃墟

 裁判が行われる前、ジェーンはハインリッヒとともに馬車で遠出をしていた。名目は視察であったがジェーンにあるものを見せるためであった。


 ジェーンの心は折れていた。愛しているはずのヴィルヘルムと引き離されただけでなく、知っている親しい者たちが死んだとと聞かされたのが原因だ。ハインリッヒの当初の方針と違い、ジェーンだけは拘束後に起きた事実関係を知らされたためだ。


 その時、彼女の両腕には鎖が付けられたものの、貴族令嬢らしい清楚な服装をして、王宮付きの侍女もついていた。ただし罪人に変わりはなく自由はなかった。今やフラマン王国の最高権力者になったハインリッヒを目の前にして会話することは許されなかった。


 「ジェーン嬢、発言を許そう。何か言いたいことは言っても構わないから」


 ハインリッヒがそう言ったが、ジェーンは無反応に近かった。ハインリッヒは彼女を是非キャサリンの学友にと思っていた時期もあったが、諸般の事情で学友なしという方針になったので叶わなかった。だから全く知らないというわけでもなかった。


 「じゃあ、聞こう。君はこれから何をしたい? もちろん死刑にならなかったらであるが?」


 「し、死刑?」


 その言葉を聞いてジェーンは動いた。


 「そう、死刑。君と元王太子のヴィルヘルムの仕出かした事によって、このフラマン王国の滅亡は確定している。そんな君たちを平民にして放免するわけにはいかない。だが、私もそこまで徹底する気はない。なぜなら君のお腹に新たな命が宿っているのだろう」


 それはジェーンが貴族らしからぬ破廉恥な事をしていた証であった。その相手はもちろん王城の地下牢にぶち込まれている男である。


 「じゃあ、どうするというのですか? 教えてください」


 ジェーンが言ったその時だ。馬車はとある場所で止まった。そこは丘の上で向こうに無残な廃墟があった。その廃墟を見てもすぐ気がつかなかったが、近くにある教会の特徴的な尖塔でどこなのか分かった。


 「こ、ここってヴァイス城? 叔父様の?」


 そこは、ヴァイス公爵家の領地にある支配の拠点であった。かつては優雅な城館であったはずが、煉瓦や石材が無造作に散らばり、焼け焦げた木材の残骸があった。


 「そう! 帝国軍に完全に破壊された。そしてヴァイス家もフォレスタル家も滅亡したわけだ。全ては闇に葬られようとしている」



 

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