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弁護


 押し込められて一か月ぐらい経過したところでようやく地下牢から出される日がやってきた。この頃になるとヴィルヘルムは薄汚れてしまい顔も青白くやつれていた。そして威勢もなくなっていた。ようやく釈放されたのかと思ったが違っていた。


 「元王太子のヴィルヘルムさんですね。わたしはあなたの弁護人のチェスターです」


 ヴィルヘルムは様ではなくさん付けで呼ばれたことが気になったが、そんなのどうでもいいぐらいの精神状態だった。今何が起きているのかを知りたかった。


 「弁護人か? 俺はなにか悪い事をしたというのだよ。これって裁判にかけられるということだろ?」


 そういうとチェスターは書類を出した。そこには罪状が書かれていた。


 ”被告人 ヴィルヘルム・フォン・フランケン

  罪状 国家反逆罪ほか多数

  トリニティ王国女王キャサリン陛下に対する弑逆未遂および国王陛下の暗殺未遂など”


 これを読んだヴィルヘルムは驚いた。


 「ちょっとまて、キャサリンってあの女のことじゃないかよ! 俺はたしかあいつを極刑にしろとはいったが、なんで女王なんだよ! それに親父は病気だろ! 俺が殺そうとするわけないだろ」


 そう反論したがチェスターは冷静を失わず諭すようにいった。


 「何もご存じないようですね。あなたが婚約破棄したキャサリン様は国に戻って女王陛下になられたのですよ。それにですね、あなたが頼りにしていたホルストですが、とんでもない人物でした。なんだって自分の姪のジェーンにあなたを誘惑させていたのですからね。そして国王陛下に毒をもっていたのですよ。最近ずっと身体の調子が悪かったのは、あなたが差し入れた砂糖に毒が混入していたからですよ。その砂糖ってホルストから貰ったものですよね」


 ヴィルヘルムはホルストから貰った高価な砂糖が入った錫の器を思い出した。でもホルストは何も言っていなかった。


 「そうだが・・・俺はそんなこと知らねえぞ! ホルストが勝手にやったんだろ! ホルストがしゃべったんか、そんなことを! ホルストに会わせろ! 俺は無実だ! そんなことをするわけないだろう!」


 まくしたてるようにいったが、チェスターは冷静かつ冷酷な口調である事実をいった。


 「ホルストですが死にました。一連の事を首謀したとして。いまから五日前に四肢引き裂きの刑を受けました。もっとも、拷問でも受けたのか既に死んでいたようですけどね。それとジェーンも自白しましたよ。あなたに近づいて王妃の座を奪おうとしたと。すべてはホルストの指示だったと」


 それを聞いてヴィルヘルムは書類が置かれていたテーブルをぶん殴っていた。


 「ふざけるな! 俺とジェーンは真実の愛で結ばれているんだぞ! ジェーンに会わせろ! まさか死んだとは言わないだろ!」


 「死んではいないですよ、ジェーンは。あなたもそうですが、貴族から除籍されました。これから裁きを受けますよ、あなたと一緒に。そのとき法廷で会えますよ」


 「ちょっとまて! ジェーンが貴族から除籍とは? それに俺もってどういう意味なんだよ?」


 「なにも知らされていないのですね。あなたはもう王太子でも王族でもないのですよ。なんだってホルストの陰謀に加担していたんですから。そうそう、ご心配なく。裁判で死罪を言い渡されても国王陛下から格別のご慈悲を賜ることになっておりますから」


 チェスターに自分が置かれた立場を説明されたヴィルヘルムは愕然とした。自分は罪人扱いされていると。


 「俺は・・・これからどうなるのだよ?」


 「だから裁きを受けるのですよ。まあ共犯のホルストの刑が確定していますから無罪になることはありませんよ。それにジェーンも一緒ですよ」


 ヴィルヘルムは目の前が漆黒に近い暗闇になっていくような絶望感に包まれていった

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