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療養

 処刑を免れたキャサリンはフラマン王国の王宮テルメイヤに戻らなかった。ヴィルヘルムが行った婚約破棄と処刑命令は違法であったが、前者は成立したとされた。もっともホルスト派による政権奪取が失敗し、王太子の地位も廃嫡により失った男の婚約者に戻る意味などなかったが。


 キャサリンは刑場そばにある教会で休むことになった。すると次から次へと数多くの人がやってきた。その中にはなぜかトリニティ王国から派遣された一団がいた。そして彼女の前に恭しく綺麗な箱が運ばれていた。その箱は王国の王太子が持つものであった。以前は亡くなった幼い弟が所有者だった。


 「これはいったい?」


 その箱は現在の王太子、サンヴェルガ王国の第二王子が持っているはずのものだ。現在は同君連合を形成しているが、次代で兄弟二人が別々に即位する予定だと聞いていた。両国の王族は親戚同士なので、男系相続の枠であるので、それで決まりのはずだった。


 「むずかしい話になりますので、担当の者が来てから説明いたします、殿下」


 療養している床でキャサリンは違和感を感じた。殿下? そんなふうに呼ばれる理由がないから。ずっとヴィルヘルムの婚約者であったが、フラマン王国ではそんな尊称で呼ばれていなかった。結婚していないのでずっと居候のような立場であったからだ。


 そういえば、15歳以上で結婚できるはずなのにヴィルヘルムは結婚するのをためらっていると聞いたことがあった。ある家庭教師の一人から真実の愛を探しているんだという話を聞いていたので、本当はキャサリンと婚約していることも結婚するのも嫌だと感じていた。


 「わかりました」


 キャサリンは力なく言った。そのとき何が起きているのか確かめないといけないのに、身体の方がついて行かなかった。少し前まで処刑されそうだったショックが根強く残っていたから。今こうして生きている方が不思議だといえた。これから何が起きるのかを考えるよりも心身ともに休むことにした。


 



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