救助
「キャサリン様! 遅くなりまして申し訳ございませんでした! なんとか間に合ってよかったですが・・・おいたわしい!」
この時、ハインリッヒが遣わした近衛部隊がようやく間に合った。刑場にいたホルスト派は逃げる間もなく捕まるか殺されるかした。捕らえられた者の中にさっきの囚人護送車にいた御者と老官吏もいた。
「こちらのお二人さんを助けてください。命令で来ただけですから」
キャサリンのひとことでホルスト派と一緒になる危機から二人は救われた。一方、ホルスト派は近衛部隊に激しく抵抗したため容赦なく殲滅されていった。いくら腕に自信があっても、正規の兵には全く歯が立たなかった。刑場にはホルスト一味の骸が転がっていた。
キャサリンが首枷などの拘束具をはずしてもらった時、ひどく着崩れしているうえに股からあってはならない状況になっていた。処女の血を流していた。それはフラマン王国に大きな禍を招くことにほかならなかった。
近衛兵の士官の一人がキャサリンに上着を着せてたが、股から処女の血を流していた。彼女からすればこんなことになって悲しかったが、どうやら命は助かったんだとわかった。
「いったいどうなっているのですか?」
キャサリンは尋ねた。すると対応していた士官はこう説明してくれた。
「詳しい話は分からないのですが、王太子がヴァイス伯ホルストと結託して違法に権力を奪取しようとしているとのことで、キャサリン様を救助せよという指示が宰相閣下から出されています。それでこちらにはせ参じました」
この時、キャサリンは恐ろしかった。さっきまで処刑されそうになって犯されようとしたのは男どもでそこから助けてくれたのも男。なにかやるせないものを感じていた。
「すいません、どこかで休ませていただけないでしょうか? あと、贅沢かもしれませんが女の侍従を連れてきてくれませんか。出来れば着替えも」
キャサリンは死を免れて安心して今の自分の姿に愕然としていた。全身泥まみれで髪はボロボロ、そして地面を引きずられ無数の擦り傷が出来ていた。でも、目の前にいる人たちいなかったら、今頃は無数の肉片に変わり果てていただろうから、マシではあったが。
「ところで、王太子殿下はどうなされました?」
士官に尋ねるとこう答えてくれた。
「あいつですか? 牢獄にぶち込まれました!」
キャサリンの処刑未遂によってフラマン王国は存亡の危機を迎えていた。