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決断

 若い二人が捕縛される少し前のことである。ハインリッヒは椅子に崩れ落ちるように腰掛けた。ハインリッヒが建国記念祭に欠席してまで隣国のブラウンシュタイン帝国で外交交渉していたのはキャサリンの処遇だった。


 キャサリンは実家のトリニティ王国では直系嫡子であっても女性ということで男子にしか権利がないとして王位継承権がなかった。


 しかし女子にも帝位継承があるブラウンシュタイン帝国ではキャサリンは帝位継承者であった。フラマン王国では貴族ですらない彼女も帝国では皇族の親戚であった。


 そこでトリニティ王国の王位継承法を改訂し、女王に即位させる計画が秘密裡に存在していた。トリニティ王国を事実上保護国化するために。


 そのことはキャサリンの叔父で現在国王を兼務しているサンヴェルガ王国国王も承認していた。トリニティ王国領内で有望な鉱山が発見されたのも理由だったが、王子のビィクターがキャサリンとの婚姻を望んだためでもあった。周辺国にとって帝国の意向には逆らえることは出来なかった。


 なのに、そのキャサリンを殺そうとしたなんて・・・殺していたらどんな事態が起きるかは想像するだけでも恐ろしかった。それら三つの国を敵に回したらハインリッヒが宰相を務めているこの国を地図から消すのは至極簡単な事だ。3カ国はこの国を包囲するように存在しているから。


 「お気を強くしてください、閣下。まだキャサリン様はご健在ですから」


 気休めに部下はそういってくれたが、ハインリッヒはもう手遅れだと覚悟していた。死刑が執行されていたら完全に暗黒だし、刑が執行されてなくてもおそらく辱めを受けるだろう。もしそうなっていたらこの国の命運は尽きた。少なくともそんな貞操を奪うことを指示した者の罪は許してもらうには・・・


 「それだといいが。とりあえず閣議を招集する。本当は国王陛下にも出席してもらいたいところだが、ここに伝家の宝刀の委任状がある。私が国王の職務を兼務するしかない。我が国は滅亡の淵にある! こんな事態を招いた王太子ヴィルヘルムを逮捕する!」

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