真実
一回書いたのにデータが消えてやる気をなくして短くしてしまいました。
お前が俺の世界で、夢で。
俺のすべてで。
お前たちが俺の希望で、守るべきもの。
壊したくないから、守っていたらいつの間にか、自分が壊れていくのにも気づかなかった。
だから、お前が傷つくのにも、気付かないんだろう。
「尚・・和が・・・」
夢は尚に縋り付く。
その顔は不安と悲しみにあふれていた。
走ってきた尚は、息を切らしながらも夢にたずねた。
「何があったの?和さんが病院に運ばれたって?」
「・・・街中で、見つかったみたい。暴行事件だって・・」
「・・・そんな・・・和さんは?」
「・・・意識不明なの・・・。今は集中治療室・・」
和が発見されたのは、3時間前。
街中の通行人が、見つけ、通報してくれたらしい。
「すごい、人気の無い場所で、長時間放置されてたって・・」
「・・・和さん・・・」
「どうしよう・・和が死んじゃったら・・私・・」
不安に震える夢の肩に尚は手をおいた。
覗き込む形で夢を見つめると夢は目に涙を浮かべている。
「大丈夫だよ。大丈夫。でも我慢できないなら泣いていいから。
とりあえず、病院はいろう?」
「・・・うん・・」
夢の肩に手を置きながら病院に入ると、病院内は少し慌しい雰囲気だった。
そんな光景が夢をより不安にしていることに気付いた尚は、
夢の肩に置いた手に力を込める。
「大丈夫。大丈夫。」
そう、唱えるように夢に言い聞かせた。
こんな不安な顔をした夢は始めてみたかも知れない。
いつもの夢は、涼しい顔をした、無口な子だった。
こんな、震えているのが、自分の知っている夢なのか。
それほど不安なのか。
集中治療室では、人工呼吸器をつけ、体中に包帯を巻き、
ベッドに横たわっていた。
「・・ひどい・・」
思わず声を漏らしてしまった。
集中治療室から何人もの人が出入りを繰り返し、
そのたびに夢は険しい顔の医者を見つめた。
「あの・・和さんどうなんですか?」
絶えかねた尚が1人の看護婦に聞くと看護婦は険しい顔で1言
「まだ・・わかりかねます。」
といって去っていった。
後ろで座っている夢は、それを聞いて泣きそうになってしまっている。
「大丈夫だよ。和さんだもん。」
意味の分からない言い訳で、夢の不安が無くなるとは思わないが、
そうでもいわないと夢がどうにかなってしまいそうで。
夢の隣に座ると夢は余弱弱しく尚の袖を掴んだ。
「泣いていいよ?今度は俺が元気付ける番だよな?」
そう優しくいってもう片方の手を夢の頭に乗せると夢は
静かに泣きだした。
尚はどうすることもできない。
ただ以前夢が自分にしてくれたようにじっと自分に身を委ねてくれる相手を
黙って受け入れた。
夢は泣きながら
「お兄ちゃん・・おにいちゃん・・・」
とつぶやく。
素直になれない彼女だから、いつもはこんなこと口にしないのだろう、
しかし、今の彼女からはどんなに和を大切に思っているのかが伝わってきた。
「こんばんわ〜!夢いますか?」
突然響く明るい大きな声。
声の主は自分の声が場違いだということに気付く。
「あっ・・すいません。病院だったや・・」
「希美・・・」
「夢!きたよ!大丈夫なん??」
彼女は夢に駆け寄り抱きついた。
「え?誰?」
1人取り残された尚が頭をフル回転させ、状況を把握していた。
「あっはじめまして。夢の友達の、中野希美です!」
「中野って・・・中野アニマルランドの?」
「はい。あっ社員さんですよね?」
「あ〜!はい!!はじめまして。」
勤め先の令嬢さんではないか!
尚は深々と一礼した。
っとそこに
「城嶋・・夢様ですよね?」
不意に名前を呼ばれ夢は声の方に顔を向ける。
スーツを着た男だったが、夢には面識がないらしい、
軽く首を傾げると
「誰ですか?」
と聞いた。
「後藤というものです。和春さんの部下です。」
一礼すると後藤と名乗る男は夢の向かいの壁に寄りかかり立った。
「先ほど医師と話をしてきました。」
「どうでした?」
「命に別条はないそうです、
出血がひどく何度も輸血して、今は意識安定していて。
そのうち人工呼吸器もとれるとうです。」
そういうと夢は安心した顔をした。
それは尚も同じだったはず。
なのに尚はなぜかいやな予感がしていた。
何かが引っかかる。何かがつっかえる。
「後藤さん。ちょっといいですか?」
そう1言いうと後藤は何かを察したかのようにうなづいた。
「では屋上にでも行きますか。」
尚が頷いて立ち上がると夢もそれに続こうとした。
それを尚が阻む
「夢はここにいて。」
「なんで?」
尚は言葉に困る。
何を話すのか、はっきりしているわけではないが、
尚の予想が当たっていれば夢には聞かれてはいけないことのような気がした。
「お兄さんが起きたときに夢が笑顔で迎えてあげないと。」
そういいだしたのは友達の希美だった。
夢はそれを聞いて頷くと軽く浮かせた腰を下ろした。
「すぐ帰るよ。中野さん。夢のことよろしく。」
「了解。」
そういいと、尚と後藤はその場を後にした。
屋上は風が吹いていて、体が震えた。
「・・・和さんは・・」
「・・・・」
話を切り出そうとするが尚はそこで言葉をつむんだ。
もしも自分の予想している事が本当だったら、自分はどうするのか。
知ってどうするのか。
それでも自分はそれを知らなくてはいけない気がした。
「和さんは何の仕事をしているんですか?」
「・・・・それは・・・」
後藤も言葉を捜しているようだった。
しばらく沈黙が続いて、
話だしたのは尚だった。
「あんな人気の無い場所で、暴行なんて、おかしいですよね?
IT関連って和さんは言ってたけど、やばい仕事なんじゃないですか?」
「・・・・」
「まぁ俺がそれを知ってどうすることもないんですけど・・・」
そういって空を見つめると後藤が話しだした。
「今回和さんを襲ったのは敵対の、やつらですよ。前からの因縁がありましたけど、
そんなに派手な行動には出なかった。
でも最近うちの島に手を出すようになってね。
ここら一帯は我らが仕切っていたんですよ。でもやつらはそこにも姿を現すようになり。
荒らしては去っていく。
それととめさせようと、和さんが、要求通り1人で、そこに向かったんです。
抵抗するすべもなく、何十人という、男たちに袋叩きにされて・・」
「・・・島・・・・?ここら一帯って・・・」
「私の責任です。こうなることは予想できなかったのに、あの人を1人で行かせた。
結果がこれだ、あの方に顔向けができない。」
「和さんは・・・」
「若頭は、我ら一家を大切に思っていた。そしてあなたたちのことも。」
「若・・頭・・・・・」
「和春様は我らの若頭、天祢組の次期組長です。」
衝撃的な真実に尚は言葉を失った。
分かっていたはず、
和春が、裏社会の仕事をしていることは、
でもそれが、こんなにも大規模な、重要な立場にいる人物だったとは。
「和さんが・・ヤクザ・・・・?」
尚はしばらくそのまま立ち尽くすしかできなかった。
ここまでよんでいただきありがとうございます!
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