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stringere  作者: 汐音真希
3/23

誓い

展開速すぎる・・

この3人単純なのでは?と思う第2話です。


尚は険しい顔でテーブルにおいてあるそれを見つめた。

そこには恐ろしく黒く染まった悪臭漂う物体が、

白いライスにかかり食べ物とは思いがたい毒々しいオーラを放っている。


「・・・カレー・・・ですよね?」


思わず指差して隣のいる、宿主、和春に問いかけてしまった。


「う〜ん。ごめんね〜、こがしちゃったの〜。」


苦笑いを浮べながら和春は頭を掻いた。

しかし、自分は居候の身我侭はいえない。尚はそれ以上問うことなくしぶしぶスプーンを握った。


ダークカレーが出来上がったのは30分前。

尚が、契約書に住所、氏名、年齢など一通りの必要事項をかいている途中。

キッチンでカレーを作っていた和春と、妹の夢が、なにやら真剣に話しこみ。

話しに夢中で、カレーの存在をわすれてしまったからである。

尚が悪臭に気づき、2人に忠告したときにはカレーは黒く染まり、

鍋にこびりついていた。


「とりあえず〜。尚くん!食べなくていいから!」


「えっ・・あ〜。はい。」


口に入れる寸前で、和春が止めてくれたところでカレーは下げられた。


「今日はコンビ二弁当でいい?」


「はい。」


コンビニ弁当を3つくばり、割り箸を綺麗に割ると、

和春は食べながら話しだした。


「ここで暮らすからには、いくつかの決まりを守ってもらうよ?」


「はい。」


「まず、その前にこの子が俺の妹、城嶋夢。高校生。手を出さないこと」


最後の1言は冗談だろうか。

半分笑い混じりにいった和春に、夢は怪訝な顔で、和春の頬を抓った。

しかし、そんなことよりも、尚は夢という少女の苗字が気になった。

確か兄の和春の苗字は、中間。

まだ未婚といっていたし、妹も高校生ならまだ結婚はしていないだろうし。

なぜ苗字が違うのだろうか。

しかしこれは本人に聞いてもいいのだろうか。

そう思いながらも尚は和春の説明に耳を傾ける。


「夏場のクーラーは、27度以上ね。お風呂は供用だから順番にはいってね。」


「はい・・」


「ここまでで分からないことある?」


「・・いえ・・」


「んと〜。あとは〜。」






一通り話しを終え、気づけば弁当もすべて食べ終えていた。

ごみを分別し、カレーのこびりついた鍋を洗う。

その間夢は1言も発しなかった。


「えっと・・歯磨き粉・・・?」


洗面所で歯ブラシを咥え歯磨き粉を探していると突然目の前に

イチゴの香と書かれた歯磨き粉を突きたれられてる。

夢だった。

白いパジャマに、ピンクの歯ブラシ。


「お・・う・・ありがとう?」


「・・・・」


「・・・・・・?」


「・・・・今日のことだけど・・・」


「ん?」


長い沈黙の末夢はやっと口を開いた。


「今日のあれ・・・ありがとう・・・。」


「あ〜・・うん、いいのよ、俺正義だから!」


尚は重く感じる空気が嫌なのか無理にふざけて笑いを取ってみようと試みる。

しかし、夢は一回尚を見てから鏡の目を向けた。


「あと・・ごめん」


「ん?」


「その後逃げちゃって・・・」


「あ〜。気にしてないよ?でもなんで逃げたの?」


「よくいるのよ・・ナンパ助けてくれたと思ったらその人にナンパされること」


「え・・あ〜・・・」


確かに今思えば自分のあの時の言い方はナンパ中の若者。そのものだった。

しかし、別にそんなこときにしてなかったのに・・

むしろ忘れてしまっていた。

ふと鏡越しに目が合うと、彼女が目をそらす。

17.18の男女といえばお年頃。

2人きりの空気はかなり重かった。


「あと・・」


「うん?」


「ナンパされたってこと・・和には言わないで・・」


「和春さん?なんで?」


「心配・・かけたくない・・から・・」


聞き取れないほど小さな声で呟かれ尚は一瞬聞き返そうかと思ったが、


「分かった。黙ってる」


と1言いって、話を中断した。

さらに追求していったら、なんだか彼女は泣いてしまいそうだった。


特に話題もなく、5分ぐらい

2人で並んで歯を磨いていると洗面所にはイチゴの香が漂った。


「イチゴ好きなの?」


その問いかけにコクンと頷く夢。

確かにこう見ていると可愛い。ナンパされるのも分かるし。

和春が手を出すなと忠告するのも分かる気がする。


そう思いながら鏡越しに夢をしていると、

鏡に、茶髪のチャラ男がこっそり除いているのが見えた。


驚きと笑いに耐えきれなく、尚は泡を吹きそうになってしまった。


「・・・兄上は見た・・・」


「なに言ってるんですか・・」


「・・・・・・・」


意味のわからない事を言いながら和春は一向に、影からのぞく体制を崩さない。

その光景を夢は無言で見詰めていた。


「なにやってるんですか?」


「だってさ〜。」


「はい・・・?」


「いいなぁ〜って・・2人お似合いだよね〜って・・・

俺ずいぶん前から眺めてたよ?なのに2人とも全然気づいてくれないんだもん〜!2人でさ、おそろいの歯磨き粉でさ〜、仲良く歯ぁ磨いてさ〜。お兄ちゃん寂しいよ〜」


「いつからそんなキャラになったのよ、あんたは。」


と、和春の言葉をさらっと冷たく返し、歯磨きを終えた夢は去っていった。


「あっ!夢〜?俺にはイチゴの歯磨き粉くれないの?」


歯ブラシを片手に階段を上る夢を見送る和春。

夢は無言で、自分の部屋に入っていった。


「お兄ちゃんには冷たいのね・・・反抗期かしら・・」


「・・・和春さん、出かけるんですか?」


「うん?うん、そう。ちょっと友達のところ、野暮用でね。」


和春は先ほどのYシャツと違う革ジャンバーを着ている。

いかにも出かけます。という服装をしていた。


「そういえば、聞かなかったね。尚くんは。」


「何をですか?」


激辛!眠気すっきり!と書いてある歯磨き粉を付け歯を磨きながら和春は話しだした。


「俺たちの苗字が違うこと。」


「あ・・あ〜・・・・」


「たいていの人は、聞いてくるか、顔で分かるんだよね?気にしてるって。」


「俺も少し気になりました。」


「そう。」


「でも、他の家庭の事情に、首は突っ込みたくないんです。」


「そうか・・でも話しておくね。俺らに血のつながりはないんだよ。」


「え?」


「もともと、俺は親父の、夢は母親の連れ子だった。

まぁ、一緒に暮らしたのは2年ぐらいだな。そのあとまた2人とも離婚して。

夢も新しいお父さんができた。俺には新しいマザーができた。」


「・・・」


「お互いに親が優柔不断だからな〜。再婚離婚大いに結構!って感じでな。

子供のことも考えないで・・最低だよ。」


「・・・和春さん・・・」


「一人暮らししてたらさ、夢から連絡きて、5年ぶりだったかな?

家出してきた、一緒に暮らしたいって。それで、2年前、この家で暮らしだしたんだ。」


「・・・家出・・?」


「またこれがさ〜。離婚して再婚、っていう、本当にありえない母親・・」


「うわ・・・・」


「俺もそれきいてちょっと切れた。だから、夢の母親から電話来たんだけど、

夢はこっちで預かるっていって電話きった。

そのとき決めたんだ。夢は俺が守る。ってな。

って・・べただよね?あはは。」


「そんなことないですよ!和春さん!超かっこいいです!」


「そう?よかった。」


和春は自分の話しを終えると、優しく笑った。

かつて自分の抱えた決意を再び確かめるかのように。


「それと、もう1つ、今日決めた。」


「なんですか?」


「尚君のことも俺が守るよ。」


「え?」


「なんとなく、感じたんだ。尚くんなら家族になれる気がした。

これからもずっと、俺ら2人にとって尚くんは大切な存在になる。」


「和春さん・・・」


和春の突然の言葉に尚は感動を隠せなかった。

親にも言われたことのない台詞。

初めて家族という、ものの暖かさを知った気がする。

ここにいたい、

この人たちと一緒にいたい。

そう心から願った。

涙を流しても、そばにはやさしい人がいた。



和春を見送り、一度水でも飲もうかと、階段を上がると

そこにはコップを片手に夢が立っていた。


「あっ・・」


「和どこにいったの?」


「友達の家だってさ。」


「ふぅ〜ん。水?」


「あ。うん、ありがとう。」


夢から水を受け取り、隣に立ってみた。


「いいお兄さんだね。」


「・・・・別に・・・」


そういって窓の外を見る夢に尚は微笑んだ。


彼女は自分と似ている。

素直になれないところがあるのかも知れない。

きっと彼女も兄を大切に思っている。

それを表に出さないだけで。


「なによ・・」


「ん?なんでもない。ごちそうさま、おやすみ〜。」


手を振って階段を降りる。


部屋の扉が閉まった音を聞いた後、夢は1人。

キッチンに立ち窓を見つめていた。


窓の向こうの、何かを見つめるかの様に・・・・

静かに遠くを。


ここまで読んでいただきありがとうございました〜。

次回もお楽しみに〜!

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