夢と望美
ああ~。
気がついたらおもっくそ放置してました・・
気持ち悪い。
あんなのが
「夢・・・?」
後ろから望美の声が聞こえる。
きっと自分を追いかけてきたんだろう。
屋上の風に髪の毛を遊ばせながら振り向く。
望美の髪も風に揺れていた。
「いきなり教室から出て行くから・・もう授業始まってるよ・・?」
「うん・・・そうだよね・・・」
夢は動く気配がない。
望美も夢の隣に立った。
「私はここの風がすき。」
「・・・・・?」
いきなり言い出す望美を夢は不思議そうにみつめる。
「春と猫と、たらこすぱがすき。」
「望美?」
「・・・・・夢は、教えてくれない。こんなこと夢はとっくに知ってるよね?
私のことを夢は沢山しってる。でも。私は夢の事・・・知らない。」
あの時から・・・
初めて話したあの時から。
夢は自分のことは話さなかった。
望美の話を夢は黙って聞くだけだった。
「私が困ってるとき。夢は何もいわないで傍にいて助けてくれる。支えてくれる。」
「・・・・それは・・・友達だもん。」
「友達で、私のこと理解してるから。」
「うん・・・」
「でも私はそれができない。夢を知らないから、夢が泣いてるとき。困ってるとき。
どうすればいいかわからない。お兄さんが倒れたときだって
私は、怖かったよ。夢のこと余計に傷つけちゃうんじゃないかって。
それぐらい、夢の泣き顔が珍しいっていうか・・・・。夢にはまだ私の知らない部分があるな~って
思った。」
「望美・・・?」
「最近なんとなくわかる。夢は恋してる。」
「!!」
「私も恋してる」
「うん・・・・」
「それでもって夢は悩んでる。」
「・・・・・」
「怒ってる・・・?あきれてる・・・?そういうのじゃない・・・なんか・・・」
自分を否定してる・・・・
自分を否定してる・・・・正しいのかも知れない。
夢は思った。
「それだけ。なんとなく思ったの。でも私はどうすればいいかわからない。
・・・どうすればいい?」
「・・・・・」
「夢の心の闇を、私は払う事ができる?」
払いたい。親友の心の闇。
私にはできることがある?
夢・・・。
「傍にいて。私の話を聞いて。」
「うん。」
「ありがとう・・・」
そういってゆっくり夢は話し出す。
私は自分の父親の顔を覚えてない。
でも本当の父親はすごく優しくて暖かかった気がする。
親が離婚して、新しいお父さんができて。
でも自分は違うって。
新しいお父さんとは家族にはなれない。
やっぱり赤の他人なんだって思った。
知らないおじさんがお母さんと一緒にいて。
一緒に暮して。
でもお父さんじゃない。
気持ち悪い。
気持ち悪くて怖い。
でもお母さんは私のことを考えないで、お父さんを変えていく。
そのたびに気持ち悪い。
なんでこんないやな思いしないといけないんだろうって。
自分は生まれてきちゃいけなかったのかって。
そう思った。
つい最近分かれたおじさん。
何人目だったかな。
おじさんに首・・・触られたことがあった。
気持ち悪い顔で、気持ち悪い声で。
「お母さんには内緒だよっ。」
って、気持ち悪かった。
気持ち悪くてすぐ逃げた。
公園の水道で、服が濡れるのもかまわないで首を洗ったけど。
いまだにおじさんの手の感触がこびりついたみたいに残ってて。
気持ち悪い。
それで・・・・和の家にいった。
沢山のお父さんの中で、和のお父さんだけは、私を子供のようにしてくれて。
お兄ちゃんも優しくて楽しかったから。
お父さんは死んじゃってた、和だけが東京で、今の家に住んでた。
私もそこで住むことにしたんだ。
笑顔で迎えてくれた和は、暖かくって。昔のお父さんにそっくりだった。
自分の居場所ができてうれしかった。
「それで・・・今の家に・・・・か・・・」
「うん。」
そこまで聞いて望美はため息をつく。
「わかってるよ。初めに家族に疎外感を勝手に感じたのは自分。
私が勝手に家族じゃないっていったの。」
「・・・」
「だけど・・だめだった・・・・」
「私が夢だったら同じだったと思う。
新しいお父さんなんてすぐなじめないよ。それに年頃になったら気持ち悪く思うだろうし・・」
「・・・・・」
「ごめん。わかったような口きいて」
「いいの。ありがとう、すこしすっきりした。」
「・・・うん。」
「ありがとう。」
「私・・決めたよ。」
「ん?」
「夢は夢のままでいいもの。今のままでいい。私は無理に知ろうとしない。」
「望美・・・?」
「夢がじっくり、自分のことを教えてくれればいい。私はそれを全部受け止めるから。」
だから・・・と夢をまっすぐ見つめる。
「行き場のなくなった鬱憤とは不安は私にぶつけて。夢の感情と一緒に私が受け止めるよ。」
「うんっ・・・!」
夢はうなづくと望美に抱きついて泣いた。
汚れたように思えた過去も、君に話せば薄れていく。
ありがとう。
あはは・・・もう・・・おほほ・・・